続続:物流革命~内政チートは成立するのかという話
内政チートは成立するのかという話の続きの続きとなります。
こんにちは、ふりがなです。
今回は物流が経済に与える影響という事で、物流の話、第3回になります。
第1回は、経済は、物流の規模を越えらないというお話と共に、陸運はダメで海運は最強のチートという話。
第2回は、陸運でも鉄道は最強の物流チート、そして丸太も最強だぜ!という摩擦の話になりました。
第3回である今回は、少しつまらない話なのですが、物流コストのお話や、分業、金融のお話です。
交易をしていると、物流コストが下がれば下がるほど、その地域の生産物は、専門的に特化していくという話をご存知でしょうか。
ご存知?比較優位論からの展開なのですが、物流コストが下がれば下がるほどに、地域分業は加速し、地域での生産物は特化していきます。
逆に物流コストが上がれば地域分業は崩壊して、自給自足によって、幾つかの生産品に特化していた地域は同じような経済へと変わっていくのです。
物流コストって、めっちゃ大事じゃん!
下手したら比較優位よりも!(同じ話
という話なのですが、この説明でそう思えた方は、居るのでしょうか。
一応、そういう話です。
そして、物流コストの内訳は企業レベルで言えば、輸送費、保管費、包装費、荷役費、物流管理費となっております。
ファンタジー風にわかりやすく言えば、それぞれのチートは
輸送費チート→転移しちゃうぜ!
保管費チート→知っているか?アイテムBOXは無限に入るし腐らない、保険だっていらねーんだぜ
包装費チート→ファンタジーなら袋の扱いなんて書かなきゃ良いんだぜ?ポーションには瓶が勝手についてくるし!袋は書いてないけどビニール袋だ!
荷役費チート→知っているか?アイテムBOXは整理も積みこみもしてくれる!
物流管理費→アイテムBOXさえあれば、在庫なんて考えなくて良いんだぜ!
となっております。
現実での革命的な出来事で言えば
輸送費→鉄道、モータリゼーション、輸送路整備
保管費→冷蔵技術や各種添加物、防腐剤、梱包による劣化防止技術
包装費→前にも出したダンボール革命
荷役費→コンテナによる効率化
物流管理費→通信手段の革新
倉庫の分野って、何かしらありましたっけ?
読者の中に、知っている方がいらっしゃった(
まぁ、こんな感じです。
現代の国際分業体制は、それなりに輸送コストが下がった結果、成立した物なのです。
逆に、経済が拡張したから、物流に革新が起こったという反対の出来事は中々起きません。
この理由は近代までの陸運が、まぁ……雑魚過ぎるからですね。
その多くは、投資に見合いませんでした。
ですので、自由貿易をしても、肝心の輸送コストが高かったら、国際分業なんてものは出来ません。
エネルギー関連で言えば、過去は輸送にかかる穀物が、主なエネルギーでしたが、現代ではそれは石油となります。
ですから、中世までの穀物危機では分業体制が一時崩壊し、各都市での自給自足とその最低限の維持を余儀なくされましたし、現代で言えば石油の枯渇で、国際分業体制はある程度まで崩壊すると予測出来るのです。
原油の高騰のリスクですね、これも国際分業を後退させる要因となります。
輸送コストが高くなれば、分業は維持できなくなるということになりますから、他にも防腐剤なんていうのも意外と重要な要素の一つになっていたりします。
※発癌性で悪く言われる事はあるですけれどね
コンテナ規制で、国際分業崩壊なんて、見方としては面白いかもしれません。
前に書いた物流の規模というのは、単に物流に関わる人の多さだけではなく、これら全ての革新の事も指します。
商品が出来ても、物が届かない。
これは戦後日本で指摘された物流の貧弱さの事を指した話ですが、商品が各家庭に届くには、この手の物流問題があるのです。
自ずと物流がチートされれば、経済は勝手に良くなるかという話になりますが、分業による貿易依存は、軍事問題や、疫病、治安と直結しますから、一面的に評価出来ない部分もあります。
まぁ、その手の問題さえクリアすれば、地域レベルの分業によって供給面がある程度解消されて、経済そのものは良くなるでしょう。
※過剰供給?知らないなぁ?取れすぎたキャベツは潰して畑に戻すのだぁ
さて、産業革命期のエゲレスさんは実際どうだったのかという話ですが、物流チートするには、この時代だと水運しかねえと、運河に投資しまくっていたようです。
エゲレスさんの場合は、挙げ句、馬車鉄道を作り出し、蒸気機関を作り出したりするのですが、これは製鉄技術と資源面で良い条件が揃っていたからに過ぎません。
※製鉄とその利用のために陸運も頑張った結果なんですけどね
普通なら、まず経済の拡張に合わせて、必死になって、物流を強化しようとし、物流の負担から製造業を他に移転し、金融をこれ以上強化出来ない物流と製造の代替案として強化して、そこで内政は打ち止めになります。
仮に物流が際限なく強化されるなら、金融を経由して、生産拠点を他の場所に分散しておくなんて事は起こらずに、自国で製造を賄う次元を越えた超国家というものが存在したのかもしれませんね。
経済というものが、何なのかもはや解らなくなりそうですが、やはり、内政チートは一言で片付けるには難しいようです。
行き着く所は金融だなんて、聞いた事はなかなかありませんよね。
さて、分業において重要な地位を占めるのは、徴税権を管理し、財政政策の決定権を持つ都市でした。
昨今の財政政策批判で、財政政策を馬鹿にしている人も多そうなイメージですが、人類の発展や文化というものは都市の成長と共にあります。
というのも、株式の無い時代に、労働力を集中的に使う手段が、税を集めて使用できる公共事業くらいしかないという事情があったためです。
取りっぱぐれの少ない領主(土地持ちは逃げませんから農家も)への資金融通という債権市場の発達から、株式という物は徐々に出来上がっていきました。
※土地を中心に債権を回していたので、土地本位制と呼んでも良いですよ
現代のような株式会社のその始めの会社は、オランダ東インド会社だと言われています。
莫大な資金が必要になるので、航海1回毎に出資者を募っていたのを、オランダ国王が中心となって航海のための会社を作ったのです。
現代の株式会社=商人から領主への資金融通による財政政策
と見ると、財政政策の重要性が解りますね。
さらに言えば現代の株式市場そのものを、近世までの都市を見ると、都市を中心として、経済が発展するのは当たり前の事だと言えます。
領主にしか出来ないインフラ整備など、財政政策は、人類発展の根源の一つなのです。
ですから、都市の役割というか、領主の役割は、近代までの分業において、特に重要だと知っておいて良いかもしれませんね。
さて、人類最初の株式会社は、商人個人どころか国家にさえ、資金とリスク的に手が出せない、巨大インフラのような会社でした。
大きく見れば、オランダ東インド会社は、それまで領主や国家が主導して行っていた貿易のアウトソーシングです。
延長して考えれば、現代の株式市場は、本来領主がすべきだった経済発展のアウトソーシングとして見ても良いかもしれません。
この株式市場が機能するには、領主にお金を貸せるほどの商人がたくさん必要です。
商人も分業の一形態ですので、株式市場や株式会社の成立には、商人という分業が成立する程度に、その時代には、輸送コストが充分に下がった(穀物が余って採算がとれた可能性もある)という前提があったという事になりますね。
近代の輸送コスト低下の革新となる、その契機はいったい何だったのか?
これは、当時を振り返って自分で考えた方が面白いかもしれません。
とにかく、仮に株式市場を知識チートとしてファンタジーで活用しようにも、中世ではその出資者が居ません。
その原因を、高輸送コスト故のハイリスクによる出資者の不在と考えると、輸送コスト、即ち物流の革新というのは、新しい商品を世に送り出すよりも、経済の本筋での内政チートになりえると言えるのかもしれません。
このように、輸送コストの低下は、その社会を変革させるほど、意外な効果を持っています。
当作品も随分前に書いた物だったり、らじばんだり
意外とこの手の書き物って少ないですよね。
(探せないだけ