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なんで俺が、メイド科に!?  作者: LOVE坂 ひむな
第一章 学園の巻
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魔剣使い

 ふと気づくと前回の次回予告と食い違っていた—— まあそういうこともあるよね

 その後偉い人に合格を保証してもらった俺は、校内で諸々の手続きをさせられることになった。案内はさっき闘技場に駆け込んできたサアク先生だ。


「えーとこれがー、保険の資料と申込書でー、こっちがー、学内新聞の申込書? 学内新聞は取らなくていい」


 さっきと随分テンションが違う。採点放り出して観戦に来ていたぐらいだし書類仕事は嫌いなのかもしれない。というようなことを考えていると、誰かが走ってくる音が聞こえた。


「ミコト・ヨリナ・ヒシュマーシュくんはいらっしゃいますか!? ユプト様が闘技場へくるようにとのことです!」


 七三分けにメガネで背の低い、見るからに事務員といった人だった。


「闘技場へ!? これはまたミコトくんの戦うさまを見られるのかな!?」


 サアク先生がはしゃぎ出す。


「はい。また竹林流右派の受験生が来ていて、試験官では相手にならないのでユプト様がミコト——くん? をお呼びなのです」


 なぜそこで疑問調になった。やはりメイド服だからか。今着ているのはショートパンツスタイルで装飾も少ない動きやすさを重視したものなのだけど。


「受験生に試験官の代わりをさせるというのかい? それはマズいんじゃないかな」


「ユプト様も校長先生も本人がよければ問題ないとおっしゃっています」


「私は問題ありません」


 強い人と安全に戦えるというのはやぶさかでない。快く承諾した。——というかユプト様と校長先生って別人なのか。


 闘技場へ行くと、ただならぬ気配の少年が、一万年も前からここにいたかのように、自然に静かに佇んでいた。霊的状態を【ミイェリ】で数値化してみた感じでは物理攻撃力が飛び抜けている。得物は剣のようだ。試験・訓練用なので刃は潰してあるのだというが、当たれば痛いではすまないだろう。もっとも、闘技場には特殊な魔術が張ってあり、戦闘が継続不能なダメージを受ければ即座に回復をかけられ場外に転移されるとは聞いている。


「悪いが私では勝てそうにない。お前さんの特待生待遇は保証してやるから代わりに戦っておいてくれ」


 合格のみならず特待までも保証してくれた。それこの人の一存で決めていいの?


 相手と目が合った。


「——メイドさん?」


「対戦相手です」


「そうか。よろしく頼む」


 格好に関しては突っ込んで聞かれなかった。


「——はじめ!」 


 そして、試合が始まる。


「名乗りを上げようッ! 僕はズィロ・ボロフ! 前世の名をタカハシ・コジマというヘパイストス型転生者だッ!! 固有魔術【武器錬成】による魔剣を受けてみろ!!」


 えっ何そのノリ。自分も名乗った方がいいのかな。


「俺はヒシュマーシュ家ヨリナ氏のミコト! 天職は侍女騎士! あいにくとお前のために見せられる固有魔術はないが、魔剣とやら見せてもらう!!」


 こんな感じでいいのかな。自分も転生者であることは言わないでおいた。あと急だったので言葉の繋がりがおかしくなったかもしれない。


 それにしてもよりによって魔剣使いか。さっき力量差のあるユプト様を倒せたのは相性がよかったからだ。魔力を得物に通せる魔術剣士は単なる剣士に対して武器性能のぶん圧倒的優位に立てる。多少力量や技量が優れているぐらいでは覆せない。


 そして魔術剣士にとって、剣士にとっての魔術剣士に対応する難敵となるのが魔剣使いである。俺は竹刀に魔力を通して使っている。生物や生物だったものは魔力をよく通すので、普通の剣に魔力を通したものとなら余裕で打ち合える。しかし魔剣使いが相手となると話は別だ。魔剣は金属の体を持つ魔術生物を材料に作られる。そのため魔力が通りやすい。よく魔力が通った金属剣とよく魔力が通った竹刀で打ち合えば、結果は普通の金属剣と竹刀で打ち合ったのと同じことになる。ズィロ少年も魔力の通し方を知らないということはなく、バッチリ魔力を通して剣を振っている。


 魔剣は材料採取も製造も難しければ使いこなすのも極めて難しい。というのも製造者以外の手には基本的に馴染まないのだ。そのため使い手は限られているはずだが、このズィロ少年はさっきの口ぶりだと自分で製造して使っている。もしかすると材料も自分で採っているのかもしれない。


「いやこれ負けたな」


 ズィロ少年の剣筋には隙がない。数合打ち合って竹刀の方は霊的にも物理的にもボロボロ、一方魔剣はほぼ傷一つない状態だ。悔しいが勝ち目はない。


「降参だ降参、俺の負けだよ」


「そうか! 楽しい勝負をありがとう! ——しかし君は武器が良ければもっと戦えるな!? またの勝負を楽しみにしているよ!」


 やや投げやりに降参したにも関わらずズィロ少年は爽やかだ。一方試験官たちは大騒ぎしていた。


「ユプト様を倒した少年が負けただと!?」「天職が侍女騎士って何だ」「本気を出していないんじゃないか」「いや、あの竹刀はボロボロだ」「折れる前に降参したということか」「侍女騎士って何なんだ」「それでメイド服なのか」「今年はすごいな」「こんな逸材が二人も」


 ——侍女騎士がなんなのかは俺もわからん。


***************

次回のメイド!!!!!


「ミコトさん! 入試では嵐を巻き起こしたそうですわね!! 黒魔術研究会に入りなさい!! わたくし影の会長を務めておりますの!」


 ユリヤ様がアパルトメントにおいでになった。なんでここがわかったんだ。黒魔術って何。今生では魔術を本格的にやるつもりではないんだが。あと影の会長ってなんだよ。


「ミコトくん! 私から白魔術研究会の次々々期会長に推薦しておいたよ!!」


 サアク先生からもお誘いがかかってしまった。というか研究会への加入がすでに決定事項みたいになってませんか?


「ミコト、僕と一緒に古流武術部へ入ろう」


 ズィロ少年もかよ。


「きゃー可愛い! あなたがミコトくん!? 製菓研究会のお茶会に来ませんか!?」


 お前は誰だよ。


「君は過去転生者ではないかね」


 あっ——バレた?

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