オッピロゲンガーって何の悪霊?
実験てきにつくったお話です。
あまり、長編にしませんがお付き合い下さい。
僕の名前は火土気野野芥斗健全な高校生男子だ。
僕は今日も一日清々しい気分で登校している。朝の空気はなんて美味いんだ。いや、朝はちゃんと朝食とったぞ。
それについては、すこしゲンナリとした記憶を呼び起こす。
朝食時の時だ。
「おはよ、のっちゃん」
「やあ、おはよう姉さん」
単純な挨拶から始まる家族のやりとり。と、言っても僕と姉さんの二人しかいないんだがな。両親はわけあっていない。しかも、姉さんといっても血の繋がった姉弟ではない。
「のっちゃん。今日もくの字で歩いていないわね。お姉さん心配だわ」
「くの字って? いや、説明しなくていい」
僕は煩悩退散の御札持ち出してブツブツと念仏をとなえる。
「その気持ちの悪い念仏だけは姉さんは評価するのよ」
「は?」
念仏が気持ち悪い。だけど、それが良いのか? 姉は僕が念仏を唱えているときクネクネ興奮しているからな。なんの嗜好なんだよ、それは。
「でも心配だわ。朝だというのに直立歩きの少年を見ると」
「見ると?」
「元気が足りないというかお盛んでないというか」
僕はまた御札を取り出して姉さんに投げつける。あっちが色情狂なのか。すまない。内の姉がとんでもないこと言ってしまって。普段は清楚な姉なんだ。蔑視しないでやってくれ。
「この年になると普通は幼馴染の女の子が男の子ベッドに乱入するのよ」
「たぶん、それは創作物での話だよな」
「違うわよ。姉さんも高校生のときにお隣の……」
「うわー! 言わなくていい。言わなくていい。煩悩退散!」
僕はありったけの御札を投げつける。朝からなにを言っているんだ? この人は。
「のっちゃんの場合は近くだと猛君でしょ? それでも、姉さんはいいと思うのよ。でも、心配で、心配で」
朝から腐った話を持ち込まないでほしい。しかもテーブルに得体のしれない食べ物が所狭しと、暴れている。生ものというよりかはちゃんと活動しているグロテスクな生物がいるんだが。
「なんだコレは?」
「豚足」
いやいやいやいやいや、豚足じゃないし、豚足と嘘の材料にした意味もわからない。
僕はとりあえず、グロテスクな料理から一番口にしてもいいものをつまみだして姉から退散する。
「まって、のっちゃん! 今晩は今朝よりもっと凄い精力がでる料理つくるからね。今日は女の子の一人や二人つれて帰るのよ~」
なにを約束させようとしているんだ。この人は。それでも、仏の野芥斗だ。姉の悪行を許し、日々悟りの境地を目指して学校へ行くのだ。しかし、世の中は煩悩に溢れていることを思い知らされることになる。
「という話があってな」
「ふ~ん」
近所の猛君とは別の学校で通学路がちがうのだ。で、かわりに話しているのが、これまた次に近所の芥翔子という幼馴染の女の子だ。別段、普通の女子である。まあ、煩悩が多い連中に人気はあるみたいだけどな。
「チェリーも苦労しているんだね」
「その呼び名、やめい!」
僕には暗黒歴史がある。いまは無害な人間であるがエロマスターという二つ名をもっていたことがある。厳密にはチェリーエロマスターだが。しかし、僕は改心する為にとあるお寺の山に登り座禅したりして苦行を行ない煩悩は追い出したのだ。
で、残ったチェリーだけが僕の二つ名として生きている。迷惑この上ない。
「チェリー可愛いじゃん」
「そういう問題じゃない。あと、お前は俺に引っ付くな!」
翔子は俺を舐めているのか、健全であるこの僕に躊躇なく体を密着している。慣れたもので毎朝これだ。
「べつに、いまのアンタと触れ合ったって無害だしね。それに落ち着くんだよね」
「ちっ、俺はお前の抱き人形とかじゃないんだぞ!」
「そうそう、そんなところだよ。昨日の夜さ、ちょっと怖いことがあってね。チェリーにくっついて少しは落ち着かせているんだよ」
「どういう理由だ」
僕は呆れた。しかし、密着程度で僕の心が邪になるはずもない。ここは我慢していこうか。
登校中、冷やかしの嵐をうけまくって災難だったけどな。
昼休みのことだった。僕は健全に男子友達と輪になって昼食をとる。しかし、姉の作ったお弁当が禍々しいオーラを放っていた。
「どうした? チェリー?」
どいつもこいつも僕をチェリーと呼ぶがお前だって童貞だろ? そうじゃなかったら、僕がお祓いしてやるところだ。
そんなことより、問題は弁当箱の中身だ。俺は取り扱い危険物の中身を調べることにする。
「危険度はSプラスというところか、今までの除霊のなかで最大の危険を感じるな。魔王クラスの悪霊か、いいだろう」
「チェリー、なに中二臭いことをいっているんだ?」
クラスメイトたちはそろって僕を馬鹿にした態度で言う。しかし、気にしている場合ではない。世界を魔王の手から守らなければならないのだ。クラスの平穏を誰が守れるというんだ!
パカッ!
僕は弁当箱を開ける。どうやら、トラップはないようだ。しかし、パンドラの箱は厄災を放った。
「キャー!」
女子たちの非難した叫びだ! こいつはとんでもない。
「おい、チェリーよ。ハニートラップか?」
「相手は誰だ?」
「姉さんだ」
僕は観念して言った。どうしようもない。姉さんの洗ってない生下着だ。これをどう食せと?
「お前、姉さんいたんだ?」
「ああ、いるよ。義理の姉さんが」
「お前は羊の皮を被った獣か?」
「誤解するな。姉はお前たちが考えるような人間じゃない」
しかし、一同が白い目で見る。仕方がないのは承知。
「パンツを弁当箱にいれる人間なんぞ、性的に意味ありげなアプローチしかないだろ!」
「ぐぬぬぬ。たしかに。直ちに除霊する」
俺は一級品の除霊札を持ち出しパンツの浄化を試みた。だが、別で悲鳴をあげる声がでる。
それは、翔子だ! かなり慌てている。どういうことだ!
「それ、あたしのパンツ! いや、違う、違うよ」
「なんだ、違うのかビックリした」
俺は不浄なるシマシマのパンツを手に除霊を始める。そこで、翔子にガバッと腕でつかみ取られて教室の脇へと連行される。
ヒソヒソ声で話のやりとりは始まった。
「違うわけがないでしょ。バカ! 皆に知られたくないだけよ」
「そうか。何故、俺の弁当箱にお前のパンツが? 痴女に目覚めたのか? 除霊せねば」
「除霊されるのはあんたの方でしょ! エロマスター復活したの?」
僕にスケベな心などあるわけがない。今、手元にある汚物を早く消去してしまいたいのだ。
「アンタが仕業のくせにとても失礼なことを考えていたわね」
「無論だ。いかがわしい。さあ、除霊を」
「どうも、洗濯しようにもないとは思ったの。この下着泥棒が!」
「心外だな! 姉さんが用意した弁当箱をあけたらこんなものがでたのだ。お前の仕業だろ?」
翔子怒りで赤くなっているが、俺としても被害者なのだ。しかし、姉さんの手作り弁当がパンツに変わるとは珍事もあるものだな。
「ん? 姉さん」
「あんた、姉さんに弁当作ってもらうわよね」
「そうだな」
「ということは、犯人はあんたの姉さんかも知れないわね」
姉さんはたしかに変わり者だが、悪者扱いにするのは心苦しい。何かの間違いでは?
パラッ。
弁当箱中身はパンツだけではなかった。メモ書きが残されていた。
『お姉さんより、翔子ちゃんのおパンツをいっぱい堪能して飢えた心を癒してちょうだいね♥』
「だそうだ……」
「いやー! 変態姉弟最低!」
こうして、翔子の絶叫とともに昼休みは終了した。
放課後になった。まだ、夏場で夕暮れを涼む感じではないが、どことなくさわやかだ。俺たちを除いて……。
「すまん! 翔子。洗って返すよ」
「そういう行為が嫌なのよ! アンタ、エロがなくなってデリカシーもなくなった?」
ぬぬぬぬぬ、言われてみるとそうかもしれない。あと、どうしても姉さんに毒されている。僕もまだまだ修行不足のようだ。
とりあえず、奇妙なやりとりだが僕は翔子にパンツを返した。翔子はサッと奪い返しカバンにいれる。
「これが、邪な算段があってのことじゃないが、お詫びをしたい。なにか頼みとかあるか?」
「その、前置きがおかしいのよ。普通なら最低でもしばらくは口もしないでしょ?」
そういうものか! 思慮が足りない僕だ。俺は翔子から黙って去ることにした。
「ちょ、ちょっと。だからといってなにも言わずに帰らないで」
「?」
僕としては正直あいつの考えがまるでわからなかった。僕が憎いのならほっとけばいいんじゃなかったのか? よくわからないな。
「お詫びの気持ちで聞きなさい!」
「? ああ」
「オッピロゲンガーって知っている?」
「なんだ? その卑猥に満ちていそうな固有名詞は。除霊が必要だな」
「そう、除霊して欲しいのよ」
「除霊? 構わんが対象物を見ないことにはできないな。どんな悪霊なんだ?」
翔子は赤くなりながら話す。内容はドッペルゲンガーみたいに当人に似た姿をみると……。
「死ぬのか? 恐ろしいな」
「違う。お、お、おおおおおお」
「?」
この女、すでに発狂しているじゃないのか? 取り憑かれているのか? お祓いせねば。しかし、オッピロゲンガーとやらはどこにいる?
「大丈夫か! 翔子。今、助けてやるからな」
「ち、ちがうのよ。オッピロゲンガーを見たらおっぴろげちゃうの! 股を開いちゃうの! パンツ丸見えになっちゃうの!」
「は?」
こんなおぞましい都市伝説は聞いたことがない。というかバカらしい。しかし翔子、彼女は恥ずかしがりながら怯えている。どうしたものか……。
「その、オッピロゲンガーとやらはどこで見たんだ?」
「私が写るものならどこでも。昨日はお風呂の鏡だっ……た、キャー!」
ど、どうしたというんだ! 翔子の視線から恐れるものを見ようとした。
ちょうど、クラスの窓から反射している黒い姿の人型物体だ。おや、どこかで見たことがあるような……。
その物体は徐々に変化をしていきとある女の子に変わろうとしているではないか。ドッペルゲンガーか?
「オッピロゲンガー……」
女の子は翔子と似ているというより当人の生き写しにしかみえない。その姿は奇妙にもこちらを誘うように微笑みかけてくる。悪霊のすることだな。
そして、不可解なことをし始めた。
「イヤー」
そのオッピロゲンガーは座り込んでパンツをモロだししているではないか。こんな怪奇は初めてだ。
「野芥斗見ないで!」
「大丈夫だ! 安心しろ。僕は煩悩を捨て去った男。あんなものを見せられてもどうも感じないどころか不快に感じる」
「それでも、みないで! あと、失礼な台詞ね」
しかし、僕は無視をする。悪霊め! こんな悪さを。許せん! お祓いだ。
僕はありったけの御札を投げ飛ばす。しかし、オッピロゲンガーは消えて霊力のある御札は窓ガラスを破壊してしまう。
「ちっ」
僕は舌打ちをした。問題は他にある。気づくべきであった。翔子にとんだ硝子の破片が向かっていることを。
「危ない!」
僕は彼女を慌てて救うために飛びつく。間に合うだろうか?
「野芥斗!」
彼女を抱きしめることはできなかった。押し飛ばしてしまう。そして、ガラスの破片は僕の体に刺さる。
「野芥斗……大丈夫? 血だらけだよ」
「こんな、怪我どうってことはない」
「それより、お前だいじょ……。え?」
「なに?」
僕にとばされて尻餅をついた彼女は少し過激なフリフリした悪霊を見せつける。
「除霊せねば!」
「って、キャー!」
パンツモロ出しだ。
しかし、なにも感じない。悪霊退散!
そして、因を生んだ悪霊オッピロゲンガーだろうか? 皮肉にも笑い声が聞こえる
「おっぴろげ~♪ おっぴろげ~♪ おパンツ、おっぴろげ!」
かつて、これほどまでに奇妙な体験をしたことはない。オッピロゲンガーとは何なんだ?
「で、翔子、お前はその不浄なるものを隠せよな」
「し、失礼ね」
彼女は羞恥にまみれた表情で返す。僕にはその気持ちがわからない。
「だが、オッピロゲンガー覚えていろ! 貴様の不埒な行ない僕がいずれ除霊してやる!」
「結局、いやらしいってわかっているじゃないの! あんた。しかも、原因はあんたのせいだしね!」
助けてやろうとして、このざまである。しかし、善行とは見返りをもとめないのである。悪をなして善をおこなう。今日の僕は少しでも功徳をなしたのであろうか? まあ、僧侶ではないので深くは求めていないが。
恥ずかしそうに股間を隠す翔子を後に僕は教室を去った。姉さんにオッピロゲンガーのことを聞こう。あの人はああ見えて除霊師なのだ。なにか知っているかもしれない。
「野芥斗、血だらけのままで帰る気? せめて保健室に行って傷を見てもらいなさいよ」
「それには及ばない。この学校の保険医は色情魔だ。僕を誘惑することが多い」
「あんた、わりと見た目がいいからね。って保健室の先生ってそういう人なの?」
「うむ、いつかは除霊せねば」
そう言って、僕はクラスから出ていき翔子をあとにして自宅へと帰った。
そして、自宅で傷の治療をしてから姉さんにオッピロゲンガーのことを尋ねた。
「あら、のっちゃん。血だらけになるまで頑張るなんてお盛んね!」
「姉さん、なんでも性表現に思考するのはやめてもらわないかな?」
「あら、だって楽しいじゃない」
「ところで、姉さん。オッピロゲンガーって悪霊は知らないかな?」
姉さんは可愛らしげに『う~んと』いいながら思い出すポーズをとる。
しばらくして、手をポンと叩き笑顔で答えた。
「オッピロゲンガー、あれね」
「その、あれ」
「そのあれはね」
「待たせないでくれよ」
意味深に焦らす姉。まさか、そういうプレイ? 除霊せねば。
「あれはね、のっちゃんの」
「僕の?」
「そう、のっちゃんの」
「焦らさないで」
「ウフフ」
とても、姉は上機嫌でいる。どうにもこうにも不可解だ。まあ、姉はこういう人間でもあるが。
「のっちゃんの修行で」
「僕の修行で」
「そう、のっちゃんはエロマスターと呼ばれていたころに捨てた煩悩よ。あれは」
「は?」
なんてことだ。直ちに除霊せねば。こんなオチは認めない。しかし、煩悩が生み出した霊とは心苦しい。
「のっちゃんも罪よね」
「ああ、同感だよ。姉さん」
オッピロゲンガーの罪は自分で始末せねばならない。しかし、姉は知っていたのなら教えてくれよ。
オッピロゲンガーよ。待っていろよ!
もう、パンツなんぞみたくない。
どこかしら、『失礼ね』という声が聞こえる。心霊か?
続く?
改めて、読むと作者自身も酷い話だなと思う。挿絵と加えて更に思う(^_^;)
まあ、それが狙いですが。
挿絵については絵師さんに相談してもう少しクオリティーあげたいです。
この作品のに対する、皆様の反応次第ですが。
読んでいただきありがとうございます。