4杯目
-実歩視点-
今日は花の金曜日だっていうのに気持ちはブルー。
仕事での失敗が尾を引いてしまっている。
ダメだな。こんな時うまく笑顔をつくれないや。
お酒でものんで気分を切り替えて、また頑張ろうかな。
そう思ってやはりいつものお店カフェ&バーCEREZOに来てしまった。
店内に入ると今日は週末という事もあってお客さんも多い様。
今日は沙那もいないし誰かと話す気分でもないし、一人でゆっくりお酒を楽しもう。
いつも以上に静かな私を察してくれたのか、今日はてっちゃんや一哉君も私には話かけてこない。
そういう気遣いもここを私が好きな理由の一つであったりする。
気が付けばいつもよりも少し酔いが早いような気がする。
どれだけ飲んでもやっぱり気が晴れなかった。
心はどんよりとして、ブルーな気分だ。
そういえばこんな憂鬱な気持ちはあの時以来かな。
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入社してすぐ、会社の歓迎会をしてもらった。
お酒に酔った課長は、私にセクハラ発言などをしてきてすごく不愉快だった。
でもお酒の席だしと、気持ちを抑えて我慢。
お酒に酔って上機嫌だった課長は、1件目の後に、私含めた数人の新入社員を連れて、CEREZOというバー来た。
1件目からの課長のセクハラ発言にずっともやもやした気持ちをもっていた私だったが、同僚達も行くとの事だったのでいやいやついて来た。
しかし、ここについてきたことを私は後悔した。
お酒にのまれて泥酔寸前の課長は、私の体を触る、完全にセクハラ行為をしてきて。
しかし場の空気は乱してはダメだと、私は気丈に振舞った。
我慢、我慢と思っていたが。さすがに耐えきれなかった。
トイレに席を立つとそこで私はひとしきり泣いた。
30分ぐらいたっただろうか、さすがに戻らなければと思い、トイレから出てすぐ、そこにはまだ成人前であろう精悍な顔だちをしたバイトの男の子がたっていた。
「お姉さん、大丈夫ですか? さっきから様子うかがっていました。 お連れの方の泥酔なされていた方は、お姉さんにしていた行為に見かねてかてマスターが追い出しましたよ。 他の方々も終電があるとかでその後、帰られました。
着信や、メールが入っていないですか?」
その男の子の言葉に驚きつつ、携帯を見てみると同僚から着信や気遣いのメールが入っていた。
「ホントだ。入ってます。すみませんお騒がせしました。 私も失礼します」
泣き顔を見られた恥ずかしさや、いろいろな感情がごちゃごちゃになって恥ずかしくなった私は、店を出ようとしたが、男の子に腕をつかまれて止められてしまう。
「待って、お姉さん。その... とりあえず、座って。俺なにか飲み物を入れるんで、とにかく座ってください」
そういってその男の子は強引に私をカウンター席に座らせて。
座ってからすぐその子が何かを持って来た。
「アップルティーです。少しでも落ち着くと思いまして。サービスなので遠慮なく」
すぐのんでしまって帰ろうと思った私は、早々にカップに口をつけそれを飲む。
「温かい...」
それをのんだ瞬間、堰き止められてモノが一気に決壊したかのように自然に涙があふれ止まらなかった。
その後、少し落ち着きを取り戻した私の話を一生懸命、バイトの男の子、土御門哲平君が真摯に聞いてくれた為か、温かいアップルティーを飲んだからか。心はすごく穏やかになった。
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「ほ、さん、実歩さん起きてください。そろそろお店閉めますよ」
肩を揺らされながら声をかけられる。
お酒を飲みながら知らない間に寝てしまっていたようだ。
ぼんやりした頭でそんな事を考えながら上体を起こす。
「今日は、珍しいですね。アップルティー淹れたのでのんでください。それ飲んだらタクシー呼んだのでそれで帰ってくださいね」
驚いた。さっき夢で見ていた事を思いだしつつ、その気遣いがとてもうれしくて、心が温かくなってついつい頬が緩んでしまう。
さっきまでのブルーな気持ちが一気に吹き飛んだ。
やっぱり私、この人が大好きだ。 この人が愛おしくて仕方がない。
改めてこの気持ちに気づいてしまい、なぜか妙に照れ臭い。
てっちゃんの顔が直視できない...
タクシーを用意してくれていたようなのでお会計を済まし、一哉君に送られながら店を出ようとする。
「ありがとうございます。実歩さん。また来てください」
てっちゃんの声が聞こえる。それだけで胸のどきどきが収まらない。お酒の飲みすぎかな。
何かかえそうと思ったけど、今の私は彼を直視することができない。
振り向かず、そのまま店を後にする。
まだ、どきどきが落ち着ちつかない。今日の私はホント変だ。
次はいつも通りの実歩さんで接するぞ、と心の中で近いつつ一哉君にお礼を言ってタクシーに乗った。
読んでいただきありがとうございます。
かなり勢いで書いてる部分もありますので誤字があるかもですが訂正していきますのでどうかご容赦を(笑)
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