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八方美人店主の苦難?!  作者: 廼乃華。
3/5

3杯目

本日は金曜日。


22時をまわった所で店はお客様でいっぱいになった。


週末のこの時間帯がカフェ&バーCEREZOの書き入れ時である。


週末だけは、久視さんにも入っていただき、一哉と3人体制で店を回している。


今日は団体さんも1組入っているせいか一哉なんかはオーダー取りで走りまわっている。





「しかし、米二さんの時よりも週末は賑やかになったね。これも哲平君の人望あってだね」


カウンターに座っていた常連の杉さんが話かけてきた。


「いえいえ、俺なんかまだまだ。でもそう言っていただけると俺も嬉しいです。ありがとうございます」


「いやホントにね。まあでも女性客が多くなったあたりを見ると、哲平君や久視くんを目当てに来ているお客も多いんじゃなんの? ま、男色家の哲平君には関係ない話かな?」


そういって笑い出す杉さん


「杉さん、それはもう勘弁してくだい!」


「いや、すまんすまん(笑) お詫びといってなんだが一杯何かのんでよ」



そういってお酒を進められたのでお言葉に甘えていただく事にする。


杉さんは近くの商店街の会長をしており、自身も書店を営んでいらっしゃる。


お酒をのみつつ、杉さんや他のカウンターに座っていったお客さんと他愛もない話をしつつ時間が流れていく。


やはりこの店を米二前マスターから引き継いで良かったな。なんて事をふと考えたりする。





「そういえば哲平君、今年は音楽祭にCEREZOも模擬店だしてよ」


「あ~、そういえばそんな時期ですね。去年は引き継いだばかりでバタバタして出せなかったですもんね。是非」


音楽祭というのは商店街が主となってGWに行っているお祭りで、アーティストが野外でライブを行ったり、近くのお店の方々が模擬店を出したりしても近年とても盛り上がっているイベントだ。


「いや、ありがたいね。米二さんの時はあの人が焼いたたこ焼きすごく人気だったもんね。やっぱりたこ焼き屋台でいくの?」


「うーん、ちょっと時間ください。スタッフと話あって後日連絡しますね」


「わかったよ。おいしいやつ期待してるね」





その後も店はお客さんが入れ替わり立ち替わり、いつも通り営業終了時間が近づいてきた。


しかし今日はいつもと変わった事一つ。


いつも元気な常連の実歩が来店しているのだが、今日は終始大人しくいつもより暗かった。


そして、普段はあまり酔いつぶれない実歩さんだが、今日はカウンターで、ぐでーと酔いつぶれてらっしゃる。



そのままではもちろんまずいので、一夜に実歩さん用のタクシーを手配させ、そろそろ終了時間だし起こす為に声をかける。



「実歩さん~、実歩さん起きてください。そろそろお店閉めますよ」


実歩さんの肩をゆすりながら軽く声をかける。


う~ん、と言いながらのっそりと目を覚まし上体を上げる実歩さん。


「今日は、珍しいですね。アップルティー淹れたので飲んでください。それ飲んだらタクシー呼んだのでそれで帰ってくださいね」


俺が声をかけると、実歩さんは驚いたような?目を丸くした表情をされて、次に嬉しそうに微笑みながら、無言でアップルティーを飲んでいく。


しかしホント珍しい事もあるもんだ。


こうしてるこの人も可愛いよなぁ




プルルルル!



俺のそんな考えを打ち消すかの如く、店の電話が鳴った。


電話には一哉が対応し、どうやらタクシーが来たようだ。



「実歩さん、タクシーが来たようなので。今日は帰ってゆっくり寝てください。タクシーまでは一哉に送らせますね」



そして、一夜に送られながら。店を出る実歩さん。


「ありがとうございます。実歩さん。また来てください」


俺が声をかけるが実歩さんには聞こえなかったのだろう、そのままこちらを向くことなく店を出られた。







いや、ホント今日は珍しいものを見たな。


そういえば杉さんの言ってた音楽祭の事もちゃんと考えないとなぁ




それよりも今はまず、閉店準備だな。

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