拗らせ幼馴染
結奈とおしゃべりを続けていた時だった
「二人共おはよう」
「あっ、おはよー」
「爽ちゃんおはよー!!朝練お疲れ様!」
「サンキュ、結」
私達に声を掛けてきたのは結奈の幼馴染である黒瀬 爽太
スポーツ少年らしい短髪に程よく日に焼けた肌
名前の通り爽やかな外見をしているためモテること間違いなしだが、何より爽太はめちゃくちゃに面倒見がいい世話焼きなのだ
性格も良くてかっこいい!絵に描いたような好青年だが、一つだけ欠点を上げるとすれば
「あっ、爽ちゃん頬に砂が少しついてるよ?待ってね、今取ってあげるから」
「べっ!別にそんくらい適当に服で拭けば!!……ありがとう」
片思いを拗らせすぎてるってことかな
照れて慌てる爽太に構わず、結奈は素早くハンカチを取り出し爽太の頬を拭ってあげていた
ちなみに当の本人は真っ赤だ、真夏の太陽並みに真っ赤だ
頬杖をつきながら頭上で行われるやり取りを呆れながら見る
爽太は結奈とは幼稚園の頃からの付き合いらしく、結奈曰くもう家族同然だとか
だが、そう思っているのは結奈だけで、爽太はもうかなり前から結奈のことを女の子として好きになっていたらしい
なんで私がそんなことを知っているかって?
そんなの、結奈と仲良くなった私に爽太が恋愛相談しているからに決まってるでしょ??
まあ、そうなったのも、あまりにもバレバレな態度に私が耐え切れずに爽太にツッコミをいれたのがきっかけなんだけどね
ジト目で見る私に気づいたのか爽太が慌てて照れたのを隠すように顔を背けた
いやいや、なんで私に隠すんだよ
あなた私にかなり情けないとこまで見せちゃってるよね??
バラそうか?バラしてやろうか??お前のじれったすぎる拗らせヘタレ日常!
私の威圧感に気づいたのかビクッと肩を震わせる爽太
まあ、そのご立派な威圧感も、結奈が私の方を向いたから一瞬で塵と化したけど
「そう言えば、トモちゃん今日は幼馴染くんたちと一緒に登校してたね!」
「うぇ!?なんでそれ知ってるの!?」
「?なんでって、クラスのみんながまた騒いでたからだよ?なんか皆毎朝教室から月ちゃんと早乙女君の登校を眺めてるみたいだね」
「嘘でしょ!?どんだけ暇なの!?」
思いの外大きな声で叫んでしまったから慌てて口を手で塞ぐ
しかしとき既に遅し
鋭い視線が四方八方から突き刺さってくる
オーマイガット
ごめんなさい黙りますので私を見ないでーーーー
あああああ、こんなことになるから最近はちょいちょい一人で登校してたのにーー!!
でもなぜか知らないんだけど1、2回時間をずらしてもいつの間にか三人また同じ時間で登校してるんだよね~
なにこれ、これも長い付き合いの代償的な??勘弁してよーー!
こっちは時間ずらして一人で学校行く度にLIMEに月と忍からの大量のお怒りメッセージを貰うというのに!!
「相変らず大変な幼馴染を持って苦労してるな」
「ほんとだよー!!…まあ、その言葉そのまま爽太に返すけどね」
頭を抱えて唸る私に哀れんだような声を掛ける爽太
慰めてくれてるのかもしれないけど、お兄さんや、自分の発した言葉全部ブーメランで返っていきまっせ?
「はあー…私も爽太みたいな普っ通ーの幼馴染が欲しかった~」
「お前俺のこと馬鹿にしてんのか?」
「あ"あん??」
「……悪い」
こいつは知っている
私があの二人のことに関してかなり参っているということに
だから私がガチで睨んだらこいつは素直に謝ることを知っているのだ
「あっ」
キャアアアアアアアアア!!!
結奈の小さな声の後に続いて突然黄色い叫び声が教室中に響き渡った
私と爽太が顔を上げて教室を見渡せば、その原因はすぐに見つかった
「トモちゃん、すっごい呼んでるよ?」
「お前、今更もう隠れられねえぞ、バッチリ目合ってたろ」
「トーーーモーーー!!」
「ついに叫び出したぞ」
「トモちゃんしっかり!」
結奈に肩を揺さぶられながら私は教室の扉のところで手を振っている馬鹿もとい忍から必死に顔を背けた