第5話 愛しのロディール様
城に着くと早々に謁見の間に案内される。
「ようこそブラッドスペルへ歓迎しますわ。ロディ様」
「やぁ、エリザベート。久しぶりだね。」
まるで乙女のような眼差しで男装クローディアを見つめるエリザ
「もう、ロディ様ったら、エリザと呼んで。」
恋する乙女そのもののような口調で、女王の威厳はどこへやら
「あはは。ごめんよエリザ」
「許して差し上げますわ。城内に部屋を用意してありますので、そちらをお使いになって?」
「ありがとう。助かるよ」
そこで一度エリザの前から退室した二人は、兵士に案内されゲストルームへ入ると一息つく。
「どういうことか説明していただけますかな? ”ロディ様”」
全く説明を受けていなかったせいで、状況が飲み込めないエディンは、嫌味を込めてクローディアをそう呼んだ。
「あとで説明しようと思ってたんだけどなぁ。」
扉の付近や部屋の中に話が聞かれる可能性のある物がないことを確認するとロディの口調のままクローディアは語り始めた。
ロディとは誰なのか、エリザのあの反応は何なのか。
「今から13年位前・・・・・・」
13年前――――――――――
僕たちは同じ村に住んでいた。
エリザ、クローディア、ロディ、それにエルとルエ
エリザも別に王女とかそんなんじゃなくて、普通の子だった。
でも、ある日ノア先生が現れた。
彼女が別に何かしたわけじゃない。
たまたま、本当にたまたま彼女が魔法を使っているところを僕たちが見かけてしまっただけ。
そして、魔女だとバラさない代わりに魔法を授けてくれと言っただけ
でも、それがすべての始まりだった。
各々欲しい能力をもらった。
エリザは姫とか女王とか高貴な存在になれる幻影の力。
ロディは大切なある人を守る力
エルとルエもそれぞれ力をもらった。
けど、クローディアだけは何も望まなかった。
代わりに薬草学と催眠術を教えてくれ。とだけ
しかし、エリザが西の大国の王家から養子の話が来た時点で村人は変だなと疑っていた。
エリザは村で一番容姿が優れない。
ロディは剣術が一番弱い。
変化がなかったのはクローディアだけだった。
村人たちは、彼らが魔女と契約した。と彼らの家に火を放った。
この頃はまだ魔女は迫害の対象だった。
エリザは逃げるように王家に引っ越し、実の家族を見捨てた。
その際、ロディを連れたようだけど、途中で野党に襲われて離れ離れになったらしい。
エリザはロディのことが好きだった。
エリザにとってロディは王子様みたいな存在だったみたい。
だから、彼女はどんなに年をとっても若く美しく見えるよう幻覚をかけ、今も必死に抗ってる。
でもね、ロディはもうとっくに死んでるんだ。
ノア先生が教えてくれたよ。
火を放った村人の子供に刺されて死んだって。
武器を持ってる訳はなかったし、無抵抗なまま死んでいったそうだよ。
「ここまでが僕が知っていること。」
「その話おかしくはないですか?」
「何が?」
エディンの疑問点がどこかわからずクローディは首をかしげる。
「何故、ロディ殿が刺された時、それを見ていたはずのノア殿は助けなかったのでしょう。」
「・・・・・・」
「あと、ロディ殿とクローディア殿は双子だったのですか? 髪型と恰好をちょっと変えただけで勘違いしてしまう程」
「あ、あぁ。そのことか。」
クローディアは言いよどむ。
何か隠しているように思えてならないエディン。
「1つ目。先生は多分。始祖の呪いを解くために理由があってロディを見殺しにしたんだ。僕たちのフルネームは皆始祖神からとってるからね。」
【力の神 ロディール
武の神 エディール
美の神 エリザヴェーテ
全能の神 ロディア】
始祖3神がノア先生に振られた後、彼女を模して造ったのが美の神エリザヴェーテ
「多分。名前にも関係あるんだ。エディンも気を付けた方がいい。」
あくまでもロディのフリをしたまま、けれど真剣な声でクローディアは言う。
まるで、ノアの目論見に気付いている風だ。
「2つ目。ロディとクローディアは双子だよ。それこそ髪型と性別以外は外見では区別がつかないくらい似ていた。そして、僕たちは始祖返りと呼ばれていた。」
「始祖返り? 初めて聞きますが」
「始祖の神が振られた気まぐれで人間と交わって生まれた僕らのご先祖様に戻ってる。っていう意味らしいよ。だから僕たちの髪の色は普通とは違う。」
確かに。とエディンは思った。
自分を含め魔女。と呼ばれる彼女たちはこの世界の住人たちと髪の色が異なる。
ノアに力をもらった反動なのか否クローディアは力を授かっていないので、全員が始祖返りで髪の色が色鮮やかになっている。と言うことになる。
疑問が深まる中、ノックをする音が響いた。