第1話 魔女と騎士王
とある国の森のはずれにひっそりと暮らす魔女。
これはそんな彼女に恋した騎士の物語。
その魔女はとても美しい白髪をしていた。
魔女は若い女性だった。
人間離れした美しさと彼女が使う不思議な術から魔女。と呼ばれているが、
その実、魔法なんてものは使えない。
医者よりも薬草類に詳しくそれを効果的に使う術や例えば動物を人に変えるなんて魔法を使うことはできない。依頼人や対象にそう見えるように催眠術を施すくらいだ。
彼女の師である本当の魔女ならば、そういったものも可能だっただろう。
しかし、それは叶わぬことだ。
彼女の師は自由を愛する旅人のような存在だったからだ。
それに彼女の人柄と薬草学により生活には困らない程度には生活できていた。
そんなある日、王国から使いの騎士が彼女を尋ねて来た。
数多くの騎士たちを束ねる姿から、騎士王と呼ばれている青年だ。
「邪魔をするぞ。東の森の魔女よ」
騎士王 エディンの低い声に呼ばれて出てきたのは、妖艶な格好をした若い女性。
東の森の魔女 クローディア
「はい。何か用ですか?」
その姿とは打って変わって話口調はとても穏やかなクローディア。
「貴殿が東の森の魔女か?」
「そうですが、アナタは?」
「失礼した。私は王国騎士団 隊長のエディールインと申す。長いのでエディンで構わない。」
「私はクローディア。魔女ノルン=アルケミシアの弟子です。」
「ノア殿の・・・・・・」
エディンが驚くのも無理はない。
魔女ノルン=アルケミシア 通称全知の魔女ノア
始祖の神に愛された人間。
神から愛されたが故に人ならざる力を手に入れたが、同時に人を失ってしまった者。
「伝承だとばかり思っていたが」
「本人だという確証はありません。ただ少なくとも私はそう名乗った師を信じています。」
彼女の瞳に嘘はない。
そう判断したエディンは今日来た理由を話すこととした。
「実は今日来たのは依頼があったからなのです。」
「どうのような依頼でしょうか?」
「西の魔女を退治していただきたい。」