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「…………おかしい」
そして、ありえない、と夏華羅は呟いた。
「今のはただの窒素の塊をぶつけただけだ」
夏華羅の魔術は、窒素を集めただけの簡単な魔術だった。
久遠の魔術師が雷の魔術を扱ってくれたおかげで、周囲の窒素濃度が僅かながら増大し、魔力の消費も少なく済んだ。
本来なら、集めた窒素に超高熱超高圧力をかけて、、爆弾と化したいところだった。
しかし今回は、一時的に窒素中毒の症状を与えるだけの術にしなければならなかった。
それは、近くに目的である龍泉地秋が存在するからだ。
彼に危害を加えるわけにはいかない。
そして、雷の姫が高濃度窒素を浴びて出来たその隙に、次の致死に値する術を行使する算段だった。
けれど、その少女はいない。
決して消えるはずがない。
幻術か。それとも他の何かの術か。
少なくとも龍泉地秋を置いて行くはずがない。
必ず仕掛けてくる。
それは夏華羅の予想通りだった。
しかし、夏華羅には認識できなかった。
自身が攻撃を受けたことを。




