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 その道はずっと直線だった。

 駆け足ほどのペースで、三十分程走った気がする。

 時計もケータイも急なことだったので、持ち合わせていないから、正確には分からない。

 それにしても一体どこまで続いているんだろう?

 前は久遠が走っている。

 知った道と言うことか? 直線道だけど。


「あ」

 ようやく出口が見えた。中々に長かったな。

 どこに繋がっているのだろうか。

 行けば分かるか。


「――止まって」


 今までずっと黙っていた久遠が声を出した。

 なんで? もう目の前に出口があるのに。


「誰!?」


 久遠は真剣な面持ちでそう投げかけた。

 出口に誰かいるのだろうか?


「……」

「……」 


 返事はなかった。

 しかし、注意深く聞くと、足音が微かだが聞き取れた。

 本当に誰かいるんだ。

 久遠はよく気づいたな。凄い。


 足音は次第に大きくなてっていく。

 何者かが近づいているのだ。

 いったい誰なんだ?


「あ、あ、あ」

 なんだ?

 しつこく"あ"とばかり言っているようだ。

 たぶん女の声。

 けど距離と声の小ささのせいで、どんな人物なのか分からない。

「久遠、アレは魔術師?」

「わからない。けど、」

 久遠が最後まで言い切る前に、前方からの声がはっきりと聞きとれた。


「――――あ、き、にぃ」


「――――はる?」


 間違いない。この声! 僕を「秋にぃ」と呼ぶ唯一の人物!

「ダメっ!」


「春ーーーー!!!!」


 久遠が何か言った気もしたが、僕は春に呼びかけた。

 良かった。無事だったんだ!

 もう争いは終わったのかな?

 いや、一人逃げ出したとしても、それでいい。

 生きていてくれれば、それだけで良いんだ。

 

 本当に良かった――――。


「あ、あ、き……あき……あき、に、あき、あきあきあきあきあきあきあきあきあきあきあき―――――――」


「えっ?」


 なに?

 何を言ってるんだろう?

 確かに春の声なんだけどな。

 あ、この道のせいかな。反響でもしてるのかな……。


 僕は春の方へ向かう。

「ダメっ!」

 久遠が僕を止めた。掴んだ腕には、随分と力が入れられている。

「春の所に行かせてよ」

 妹の所に行く位いいじゃないか。

 なんで止めるんだよ

「……アレが、あなたの妹なのね」

「そうだけよ」

 人の妹をアレとか言う言い方はしないでほしいな。

「そう……」

 久遠は悲しそうな表情を見せる。

 なんだ? 何かあったのか?

 むしろ喜んでよ。妹の無事が確認できたことに!


 そう思っている僕に、久遠は静かに告げた。



「あなたの妹は、もう――――死んでるわ」



「………………………………え?」


 なんて言った?

 今、おかしなことを言われた気がする。


「今、何て言ったの?」


「あなたの妹は、すでに死んでいるわ」


 おいおい、冗談はやめてくれよ。

 生きているに決まってるだろう?

 現に今声が聞こえたんだから。


「ネクロマンサー」


 ネクロマンサー?

 何だそれ? ゲームか何かのキャラか?


「敵に死霊術師がいたのよ」

「……それは魔術師なのか?」

「そうよ。死者を操る魔術師」

「……え?」

 それって、つまり……。

 いや、違う!

 そんなことはない。

 それを認めると言うことは……。

「あなたの妹は」

「黙れ!」

 僕は久遠の言葉を聞かなかった。




「もう――――、いいですかね」



 その時、一人の男が現れた。

 白色の、霧か煙か、とにかく気体状の何かを纏っていた。

 二十歳ほどで、細い体つきの燕尾服を着た男だった。片手にはステッキを握っている。

 男はにっこりと、僕に笑顔を見せた。

 僕はそれを、胡散臭い、と思った。

 仮面の笑顔にしか見えなかった。


(わたくし)の名は夏華羅煙竜(かからえんりゅう)とお申します。竜胆(りんどう)の魔術師でございます」

 竜胆の魔術師。

 この人たちが僕たちの村を襲っているのか?

「あなた様が龍泉地秋様で間違いないでしょうか?

「そ、そうだけど……」

「お迎えに上がりま――――」


「オン! ライトニング!」


 その時、久遠が夏華羅の声を遮った。

 その言葉を発すると同時に、久遠の拳銃(・・)から雷が放たれた。

 その雷は真っ直ぐ夏華羅へ向かった。


 いや、色々おかしいだろ。

 なんで拳銃なんか持ってるの?

 雷なんてどうやって出してるの?

 人に雷ぶつけるって何考えてるの?

 死ぬだろう。


「危ないですねえ」


 しかし、夏華羅はけろっとしていた。

 何で無事なんだよ。雷だぞ。雷!

「チッ。ダメか」

「では、次はこちら――――」


「待って!」


 僕は声を出して割り込んだ。


「春は! 妹は無事なんだよね?」

 僕にとって今、それだけが気がかりなのだ。

 魔術を信じろと言われたら信じるし、村に魔術師が襲ってきているってのも信じてやる。

 けど、春が死んだなってことは何が何でも、絶対に信じない!

 だって、聞こえたろ。春の声……。


「ああ、彼女ですね」

 夏華羅は、そんな人いたな、とでも言いたそうな反応をした。

「もちろん」

 良かった。もちろん無事なんだね。


「死んでますよ」


 …………。


「嘘だ!!」


「おお、そんなに興奮しないでください。仕方のないことなのです。あなた様を見つけるためだったのですから」

「黙れ黙れ黙れ黙れーーーー!!」

 そんなふざけた嘘つくんじゃねえ!

「まぁ、これだけは差し上げましょう」

 そういって夏華羅はステッキを振った。

 すると前方、夏華羅よりももっと先、出口付近からナニカっが僕に向かって飛んできた。

 僕はそれをキャッチし見た。


 大量の暖かい液が、ビチャリと僕に散った。


 血だ。


「―――――ぁ、ァァ、ァァァァ!!」


 それは妹だった。

 ただし躰はなかった。

 頭部だけだった。

 それも、両目をくりぬかれると言う無残な状態だった。


「すいませんね。彼女に掛けた術の痕跡ごと消すためには、それが一番手っ取り早かったものですから」



 何を言ってるんだ、コイツは――。

 何を――――。


「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」


 なんで! 

 何でこんなことに!!

 どうして!

 どうして春が!!

 どうして!!!!





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