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8話 決闘

俺とルビアはそのまま登録を済ませて、無事に魔術師の資格を得る事が出来た。

測定不能になってしまった俺であったが、一応は、光と水の魔術は唱えられたので低ランクの魔術師の資格を得る。

それに対して、ルビアは殆どの属性を唱える事が出来る大魔術師である。

大魔術師は、魔術師で最高のランクに位置しているらしい。

酷い格差である。

もうルビア一人で魔族を倒しても大丈夫じゃないか?


受付広場に戻ったが、そんな俺たちに待ち受けていたのは、ニヤニヤとしながら、笑っている、野次馬の集団であった。


「よう、結果はどうだったんだよ? そんなボロボロの服を着ているんだ、結果は散々だっただろうなーギャーハハハハ!」

「おいおい、その辺にしてやれよ、となりのお嬢さんに申し訳ないだろう」


なんだ? 俺を挑発しているのか?

馬鹿め、その程度の挑発は、俺には効かん!


「ああ、お蔭様で散々だったよ、まあ低ランクの魔術師になれたからいいけどね」

「ちなみに、私は大魔術師だけどね!」


ルビアはドヤ顔をしなら、大魔導師の証明書であるカードを掲げて、野次馬達に見せつける。

流石の野次馬も只々と驚いているな。

ふふん、恐れいったか!

まさに、俺は、虎の威を借る狐になっている気分である。

まあ、こんな格差が酷いコンビじゃ、ますます俺の扱いが悪くなってしまうけどな!


「お嬢さん、こんな出来そこないの男よりも、俺とコンビを組まないか? こう見えても俺は、上級魔術師のランクを持つ男だぜ」

「いや、俺のチームと組むべきだ! 俺のチームに組めば、天下無敵のチームになれるぜ!」


俺を差し置いて、すっかりとルビアの引き抜き合戦が始まってしまった。

全く、舐められたものだな。

女神様を引きぬくとか、出来る訳がないだろう。


「雑魚は、引っ込んでなさい! 私は雑魚には興味ないの。私の相棒のほうが、あんたたちよりも、強いんだから!」

「えっ?」


野次馬達の視線が一斉に俺へと降り注ぐ。

その視線は、嫉妬や憎悪に満ちた、非常に居心地の良くない視線である。

余計な事を言いやがって、これじゃあ、俺が対処しなきゃならないじゃん!


「へえ……低ランクで、そんなボロボロになっている坊主の何処が強いんだい?」

「疑問に思うのなら、私の相棒と戦ってみなさい! 私の相棒に勝てたなら、乗り換えるのを考えてもいいわよ!」

「おい、やめろ馬鹿!」

「俺が先だー! 俺と戦わせろー!」

「抜け駆けは許さんぞ! 拙者が先でござる!」


ルビアが俺に責任を押し付けたせいで

辺りは、ざわざわとさらに騒がしくなる始末だ。

我先にと俺へ決闘を申し込んできやがる。

ははは……どうしてこうなった。


「静まりたまえ! ここは、魔術師ギルドの受付会場だぞ! 決闘は、訓練広場で行ってもらう!」


突如として現れた、杖を持っている、婆さんが、俺に身もふたの無い提案をする。

どうやら決闘は避けられないらしい。

とほほほ……


「決闘をする人物は、今ここで一番ランクが高く、このギルドで貢献した人物にさせて貰う。意義がある者はおるか?」


婆さんの言葉で、すっかりと辺りは静まりかえってしまった。

かなりのお偉い人だったのかな?

野次馬は、やれやれ、とした表情で飛散していく。

どうやら、一番強い奴が誰なのかは、みんな知っているようだ。

そして、その場でとどまっていた野次馬は、一人の女性へと視線を注ぐ。


「えっ? 私なの?」


きょとんとした表情で、そう伺う黒いとんがり帽子をかぶっている、黒髪の女性。

うむ、かなりの美人だな。

ルビアに負けない程の美少女だ。

きっと、よいお婿さんと結婚できそうな人だな。


「そうじゃ、さっさと準備をするのじゃ」


俺は、魔術師ギルドの野外に広がる、訓練広場へと向かった。

ここは、訓練生たちが鍛える広場として使われているらしい。

今回は、決闘の為に、訓練していた人たちは、退場させてられている。

そこまでするのかよ……

ちょっと大げさすぎるんじゃないか?


「では、両者構え!」


俺は剣を床に置き、拳を構える。


「どういうつもり? まさか、素手で、私と戦うつもりなの?」

「ああ、俺は紳士なのでね、可愛いお嬢さんには、なるべく大けがさせたくないのさ」

「ふふ、この私にそんな大口を叩ける自信があるのね。ホラじゃないのを期待するの」


ニヤリとほほ笑む美少女。

俺の力は、あまりにも強い。

剣を使えば、真っ二つにしてしまう恐怖が俺にはある。

いくら、治療魔術が出来るからって、そこまでしちゃったら無事では済まない。


「では、始め!」


婆さんの掛け声と共に、俺は素早い速度で、少女へと接近する。

相手は何もしかけてこないな。

なら、痛いだろうが、一発おみまいしてやろう。

俺は拳を少女の腹へ向けて殴りかかる。

だが、少女は突如に消え去り、俺の拳は空を切る。


「……あれ?」

「馬鹿! 後ろよ!」

「バイバイ」


俺が後ろへ振り向いた先には、既に、風の刃が無数に襲い掛かる直前だ。

回避は無理。

ならば、少しでもダメージを減らすしかない!

水の壁を瞬時に創りだし、渦巻く風の刃から、俺の身体を守るように覆うが、簡単に水の壁は切り裂かれてしまった。

そして俺は、無様にも風の刃を食らってしまった。


「……あれ? 痛くないぞ」


俺は風の刃を真面に食らってしまったが、全くダメージを負っていない。

そんな平然と突っ立っている俺に、彼女も驚いている。


「こんなの、絶対におかしいよ。何であれを真面に受けて、傷ついてないの?」

「馬鹿ね! カズキの魔力抵抗は、凄く強いのよ!」


彼女の疑問に、透かさずルビアは、その答えを言いだした。

あっさりと、俺の特殊能力をバラすなよ……


「魔力抵抗か……凄く厄介なの」

「お前も、不思議な魔術を使っているじゃないか。俺の目に追えない程に、突如として消える魔術なんて卑怯だぞ!」

「貴方に言われたくない!」


なんだ? 突如に杖を持って、棒立ちし始めている。

何かの魔術を唱えているようだ。

魔法陣みたいな形のようなのも出現している。

嫌な予感がしてきたぞ。


「あのバカ! 訓練場で戦略級の魔術を唱える気じゃ! 皆の者! さっさとこの場から離れるのじゃ!」


辺りの観衆は一目散に逃げ出して、審判をしていたお婆さんまでもが慌てて逃げ出している。

なんだよ、そんなにヤバイ魔術なのか?


「何ボサっとしているのよ! 相手が詠唱中で隙だらけなんだから、今のうちにさっさと仕留めなさい!」


そうだった。

このまま棒たちしていたら、相手の思う壺だ。


俺は、詠唱中の相手に攻撃を……って、また消えた!

くそ、いちいち厄介な魔術だな。

何処へ消えた?


「今度こそ終わりなの」


俺の上から対戦相手の声が聞こえた。

まさか、空に浮いているのか!

俺は、直ぐに、相手の声が聞こえた空へ眺める。

そこには、光輝く一つの球体が出来上がっていた。


「空を飛んでいる敵に、どやって倒せと……」


俺は、空を飛べない。

だが、達人ともなると、空を飛べるようになるようだ。

流石は、魔術師。

って、そんな事を考えている暇は、ない!

どうにかして、相手の攻撃をなんとかしないと

大怪我じゃすまないほどに、ダメージを受けそうだ。

マジでヤバイ。

どうしよう。


そして、全く躊躇せずに、相手は、光輝く光線を俺に向けて発射される。

落ち着け……こういうときは、俺の天才的な発想で、華麗に防げる筈!

ええい! 破れかぶれの強化魔術だ!

だが、俺の強化魔術は、案の定、上手く発動できていなかった。

そんな事をしているうちに、既に、光輝く光線は、目と鼻の先まで近づいている。

反射的に、俺は両手で光線を受け止める構えを取った。


「ちくしょー! もうどうにでもなれー!」


光線は、なんとか両手で受け止める事を成功させた。

だが、光線の力に押されて、俺は徐々に後ろへと後退される。


「あれ? なんか力が段々と湧いてくるぞ?」


俺の素手には、魔力が徐々に流れ込んでいるのを感じる。

もしかしたら、俺は、ついに強化魔術が発動する事に成功したのか?

これなら、もしかしたら、行けるかもしれないぞ!

魔力を腕と素手に集中させて、魔力を増幅させてゆく、これだけ、俺の筋力は、急激に力を増していく。

いける……! 更に増した力で、俺は、両手で光線を握りしめるかのように、力いっぱい振り投げる。


「おりゃあああああーーー!」


俺が振り投げた光線は、見事に掻き消されていた。

ふう、素手には、俺でも感じるほどに、魔力の流れが感じ取れる。

やはり強化魔術は成功したっぽいな!


「化け物……」


そんな彼女のとっておきの魔術を跳ね返した俺に、すっかりと驚愕した表情で、俺を見つめていた。

なんだか、やっと勇者らしい活躍をした気分になれたよ。


「さて、次は何を仕掛けてくるんだい?」

「もうこれ以上、貴方に攻撃を仕掛けても無駄ね。降参するの……」


あっさりと負けを認める女魔術師。

ふう、どうやら、これ以上の攻撃は、彼女には、無いようだな。

そのまま、対戦相手は、すたすたとその場を退場して行った。

危なかった、俺はけっこうギリギリだったし

これ以上、強力な魔術を食らったら、俺でも無事では済まなったぜ。

辺りも、俺があの光線を跳ね返したのを驚いている。

俺を舐めていた奴は、今どんな気持ちなのだろう。

そう考えるだけで、俺は、どんどんと有頂天になっていく。


「こりゃあ、たまげたな……戦略級の魔術ですら無効化させるとは、ここまでの魔力抵抗を秘めた奴は初めてじゃのう」


そう言って、カツカツと俺に近づく婆さん。

こいつも、一体何者なんだ?


「ふふん、これでカズキが最強の相棒だって証明できたわね!」


ルビアもすっかりと上機嫌だ。

なんとか、勝てたものの、もし俺が倒されたら、一体どうするつもりだったんだよ!


「では、決闘は、カズキの勝利じゃ!」


俺は勝利のVサインをして

観衆はざわめきと、歓声が響き渡った。



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