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23話 最深部

無限に沸く魔物を倒し続けていた俺たちは、ついに地下迷宮の最深部らしき場所へ到達した。


「随分と広い部屋だな」


辺りは、大きな広場だ。

植物だって、生えている。

ここまで周りが明るい迷宮は、初めてだ。

迷宮のそこらじゅうに生えていた、光るコケとは違う。

天上は、光が輝いていて大きな明かりが辺りに照らされていた。


「宝を守るように門番らしきゴーレムが2体も並んでいる。やはりここが最深部か……」


俺とイーリスの目の前には、4m以上はありそうな大きな2体のゴーレムが、ゆっくりと俺たちに近づいていく。明らかに、俺らを攻撃する気がまんまんだ。


「見た目からして、炎は効きそうにないな。厄介だ」

「物理で倒せるかな?」


骨のゴーレムの時は、無理だった。

まあ、あれは無数に分離したせいで、倒しきれなかっただけだったけどね。

イーリスは、何かの魔術を唱えるようだ。

何かをぶつぶつと呟いている。

かなり、長そうな詠唱だな。

俺も、強化魔術で腕に強化させる。

よし、さっさとヘイトを俺に集めてみせますか。


「食らえ!」


大振りをかまして、斬りつけるも、ゴーレムは、ビクともしていない。

なんだ? 勇者なら、ここは一刀両断する場面だろ。

最近は、こんな役ばっかりじゃないか!

雑魚専しか役にたってない。

悲しんでいる暇もなく、ゴーレムは俺に攻撃を仕掛ける。

鈍足かと思ったら、意外と素早い。

勇者の俺じゃなかたら、避ける事は、できなかったな。

おれが避けた先には、ゴーレムが叩いた床は、綺麗にぽっかりと穴が空いている。


「鋼鉄のプレスを食らうがいい!木偶人形!」


ゴーレムの天上から、巨大な鉄の塊が落下する。

かなりの重量がありそうな大きさだ。

一体のゴーレムはそれに押しつぶされ、避けたもう一体はそのままイーリスに反撃を試みる。

ヤバイな……魔術を発動した直後だから、隙が出来ている!

俺は助ける為に足に強化魔術を施し、速攻でゴーレムの元へ向う。


「食らええええええええ!!」


体が軽い。

今までに感じなかったほどに力が溢れる。

全身に強化魔術が行きわたったのか?

足に魔力を集中させているのは変わらない。

なら一体なんだ?

どちらにしろ、これなら致命傷を与える事は出来る!

勢いよく、両手を握りしめながら、両腕をゴーレムに向けて振るう。

すると、ゴーレムは、真っ二つに斬れてしまい、そのまま機能を停止した。

あれ? 斬れたぞ?

どうなっているんだ。

そういえば、一瞬、剣の姿が変わっていたような気がするな。

どういう事だなのろう?


「よし、邪魔者は倒したな」

「ああ、ナイスな連携だったぜ」


ゴーレムが塞いでいた、道には、何かが描かれている石版と、宝箱の中に大きな結晶を発見していた。


「ふむ、どうやら、あれが歴史を記されている石版のようだ」

「へえ、実物の石版は、初めて見たな。しかし……デカな。この魔力結晶は」

「私の目的はこの石版だ。魔力結晶はカズキにくれてやる」

「全部もらってもいいのか?」

「魔力結晶など、魔界では腐るほど取れる」

「そ、そうか」


どうやら魔力結晶の資源は魔界なら大量にあるようだ。

それなら簡単に譲ってくれる理由も納得できるな。

そんな会話をしているうちに、俺は何者かが近づいてきているのを感じる。

反応は一人……イーリスの仲間か?


「……どうやら、私の仲間が来たようだ。お前はここに隠れて居ろ!」

「えっ!」


そう言ってイーリスは俺を抵抗する暇もなく、無理やり大きな宝箱の中に入れられてしまい、宝箱の閉じ込められてしまった。

俺が宝箱に隠れた後、イーリスの相棒らしき人物の足跡が近づいてくる。


「イーリス……やっと見つけたぜ。しかし、なんだ?ここが最深部だったのかよ」

「そうだ。既に目的の品を手に入れたぞ」

「あーあ、結局はあの落とし穴は近道だったのかよ……俺も落下すればよかったぜ」

「私はそれを知っていたから、わざと落とし穴に落下してやったのだ、貴様も落ちればよかったものを」

「ボタンを押してしまったイーリスが素で落ちただけだろ……」

「黙れ!」


爆発したような大きな音が聞こえる。

多分イーリスが魔術を唱えたのだろう。


「いててて……全く、これだからお嬢様と相棒になるのは嫌だったんだ」

「ふん! さっさと帰るぞ!」

「へいへい……」


そして、何かの魔術を唱えた二人は、そのまま気配は消え失せてしまった。

俺は気配が完全に無くなったのを察知して、宝箱の中から脱出しようと体を動かし始める。


「……あれ? 開かないぞ?」


どうやら、この宝箱は内側からでは開ける事が不可能なようだ。

これって大ピンチじゃないか?

だが、俺のは人間離れをするほどに力がある。

この程度の宝箱なんて直ぐに破壊してや……


「ぐぎぎぎ……む、無理だ……」



想像以上に頑丈だった宝箱の前に、俺は完全に力尽きてしまった。








凶暴な魔物を相手にしならが、二人の魔術師はついに最深部へと辿りついていた。

途中で逸れてしまったカズキは未だに発見出来ていない。

もはや息絶えてしまったのだろうと大魔術師の少女は悲観していた。


「結局、カズキは見つからないの」

「だ、大丈夫よ! この程度でやられるほど、カズキは弱くないわ!」


ルビアはカズキが生きているのは確信している。

だが、その場から全く移動していないカズキに何かが起こり、行動不能になってしまったのは確かのようだ。


そして、カズキの反応があった目的地へと到達する。

瓦礫が散乱している大きな広場……キョロキョロと辺りを窺いながら、ルビアは困惑しながら、仲間に話しかける。


「あら? おかしいわね……カズキの姿が何処にも見当たらない?」

「でも、何かと争った痕跡が残っている……ここにカズキが居たのは間違いないかもしれなの」

「うーん、あの宝箱が怪しいわね……ちょっと調べてみましょう!」


辺りを見渡したルビアは大きく目立っていた宝箱に近づく。

迷宮の最深部に存在するお宝。

きっと財宝に違いない。

カズキの存在をすっかりと忘れたルビアはニヤニヤしながらその宝箱を開ける。


「…………えっ!?」

「や、やっと来てくれたのか……」


宝箱の中身は……力尽きていたカズキが魔力結晶を抱きながら横たわっていた。

あまりの展開にルビアは吹いてしまう。


「プププ……わ、私も流石にこれは予想外だったわ!」

「宝箱の中からカズキと魔力結晶……魔力結晶を取ろうとしたら宝箱に閉じ込められた可能性が高い……酷い罠なの」

「眺めてないで、さっさと俺を出してくれー!」


カズキの災難はこれからも続く。




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