表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/24

16話 召喚獣

地鳴りが響く中、ついに、恐れていた事態へと直面してしまった。


「ちくしょー! やっぱりこうなってしまったかー!」

「一体何がおこったんだ! これほどの恐ろしい魔力は、生まれて初めてだぞ!」


ラルアスは、治療魔術を唱えて、すっかりと、折れた骨もくっ付き、肉体は回復していた。

そんな彼ですら、驚愕するほどの魔力。

まあ、これは、ルビアの魔力だろうな。


「ルビアの魔力さ。どうやらキンゲル教皇の野郎が、相当にむかつく事をルビアにしてしまったようだ」

「なるほどね。それが事実だとすれば、キンゲル教皇様の命は……」

「ああ、最悪の場合は、ルビアに殺されているかもな」


さも、当然のように、俺はそう語る。

最悪の想定だったが、実際に起きてしまったのなら仕方ない。

俺はさっさとこの国からトンズラしたほうがよさそうだ。

なんたって、キンゲル教皇を殺した一味として国際指名手配にされそうだしな。

まあ、逃げる前に、ルビアを連れ戻さないと行けないんですけどね。


「俺はルビアの元へ駆けつけるけど、お前はどうする?」

「僕もそこへ向かおう。僕と一緒ならば、君も神官に足止めされずに向かう事が出来るだろう」

「よし、わかった! 道案内もよろしく頼んだぜ!」

「ああ!任せてくれ!」


神殿の中は、大騒ぎだ。

あたふたと外へ逃げ出す神官や信者達。

みんなそろって、「女神の裁きが起きたぞー」と叫んでいる。

なんだよ、お前らが悪事を働いていたのは、自覚していたのかよ!


「凄い騒ぎだな。ルビアの奴をここまで怒らせるとか、一体、なにをしやがったんだ?」


ルビアの魔力は、未だに衰えていない。

それどころか強くなる一方だ。

これは、マジでヤバイって……


キンゲル教皇が佇む神殿の広場は、後もう少しだ。

近づく事に、ヤバイ気配がしてくる。

くそっ! やっぱり俺もルビアと共に行動したほうがよかったか!



俺が事件の現場に駆け付けた時は、真っ赤に染まった広場に、不気味にたたずむルビアがたっていた。


「あら? カズキも来たのね。 ふふ……見てごらん。愚かにも、私に牙を向いた、汚物どもが醜くうごめいているでしょう」


ルビアが指した方角には、うごめく何かが沢山散らばっていた。

どうやらあの中に、キンゲル教皇だったらしき、肉塊が居るようだ。

既に原型は、とどめていない。

肉団子のような異様な肉の塊だ。

あまりにもグロすぎて、俺は、吐き気を伴ってしまう。

しかも、あの肉塊は、まだ生きている。

肉塊から悲鳴があちらこちらに響き渡っているからだ。

いったいどうなっているんだ?

この惨状は、ルビアが引き起こしたって言うのかよ!


「ルビア……これは、お前の仕業なのか?」

「ええ、そうよ!」


ニッコリと自信満々にドヤ顔をするルビア。

くそ、いつものルビアのまんまじゃねえか!


「ありえない……この惨状は、貴女がたった一人でおこなったのですか!」

「そうよ! ついでに、ここへ駆けつけてきた汚物や、逃げ出そうとした汚物どもも処分してやったわ! これは、裁きよ……そして、その裁きは、まだ始まったばかり!」

「ルビア! お前、何をする気だよ!」

「まあ、見てなさい! きっと、凄く面白い事がおきるわよ!」


どうする?

どうやってルビアを止める!

俺に出来るのか?

俺は、彼女の配下みたいなものだ。

ちくしょう!

本当にどうすればいいんだ!


俺は動く事すら出来ずに、その場を眺めていた。

それは、俺の隣にいた、ラルアスも同様だ。

巨大な魔法陣が今、何かを繰り出そうとしている。


「さあ……古のドラゴンよ、この神聖セリア教国を……全て滅ぼせ!」


肉塊となっていた者たちが悲鳴を上げながら消えて行く。

ドラゴン!?

俺の想像するドラゴンなら、かなりヤバイ事態になりそうだ。

肉塊が全て消えて、魔法陣も消滅してしまった。

だが、何も起こらない……


「なんだ、失敗したのか、脅かせやがって」

「いいえ、成功したわ!」


ニヤリとほほ笑むルビア。

俺は警戒を高めてサーチ能力をフル回転させた。

そして……一つの大きな塊がヒットする

それは、あまりにも巨大で、あまりにも、膨大な力を感じるほどの強さをもつ化け物だった。


「あの……ルビアさん。なんかあの、骨のゴーレムよりもさらに巨大な物体が近づいてきてるんですが……」

「それがドラゴンよ!」


そうドヤ顔で宣言するルビア。

くそ、こいつの頭のネジは、どうなってやがるんだ!

あんなデカいドラゴンを召喚するなよ!


「聖女よ、答えてくれ! 何故この国を滅ぼす!」

「女神の怒りを買った。ただそれだけよ」

「たったそれだけの為に、多くの人々を殺すつもりですか!」

「そうよ、信者たちも同罪。私はね、汚物は、さっさと消毒しないと気が済まない体質なの。だから綺麗に浄化させないといけないでしょ?」


狂喜に満ちた表情でそう語るルビア。

なんだよ、たったそれだけの為に殺すのか!

そんなに女神にとって、命は、軽いものなのか?

さっぱりわからない。

俺には理解できないぜ。


「ルビア……お前、それでいいのかよ、人間を救う為に俺を呼んだんじゃなかったのかよ!」

「勘違いしないで、私の使命は、この世界へ侵略した魔族の抹消。それを邪魔する人間は、魔族と同じ、汚物なのよ!」


ルビアの信念は固い。

俺にはどうする事も出来ないほどに図太く、誰も彼女を止める事は、出来そうにないだろう。


「……あら、やっと神聖セリア教国を襲い始めたわね、ふふ、いい気味ね!」


ニヤニヤと笑いながら、ドラゴンが暴れ始めたのを感づいて狂喜している。

いつの間にか、大きな地鳴りと悲鳴が響き渡っていた。

ドラゴンが、ついに、この街を襲い始めたようだ。

駄目だ、このままじゃ、多くの人々が死んでしまう!


「ルビア。あのドラゴンを止めてくれ!」

「それは、無理よ」

「ルビア!」

「だって、私の制御から、外れてしまったもの……」

「えっ!!」


そう困惑しながら、言い放つルビア。

今、とんでもない爆弾発言をしやがったぞ。


「なんで、制御不能なドラゴンを召喚させるんだよー!」

「私だって、制御できると思ったのよ! だけど、私の力を遥かに超えるほどに強いドラゴンが召喚されるなんて、予想外だったわ!」

「では……そのドラゴンは、この街を滅ぼした後も、暴れ続ける事になるのですか?」

「そ、そうなるわね!」

「おいいいいい! 駄目じゃんそれ!」


仁王立ちしながら、そう告げられても困るんですが……

アカン、シリアスな雰囲気が一気に台無しになってしまった。

このままじゃ、魔族が侵略する前に、ドラゴンによって、人類が壊滅状態に追い込まれてしまうって!

いや、待てよ、これは、チャンスじゃないか?

制御が不能になったのなら、ルビアもそれを止めなければならない。

なんたって、人類の絶滅から救う為に降臨したんだ。

ドラゴンだって、退治しなくちゃいけないだろ。


「なあ、ドラゴンを討伐しないか?」

「なんで私が、汚物どもを救わなければならないのよ」

「これは、チャンスだ。ルビアが華麗に、ドラゴンを退治できれば、きっと信者達は、ルビアを信仰する筈だ! 教皇は、もういない。 今、もっとも信者達が願っている人は、女神であるルビアだろ!」

「……」

「僕からもお願いします。 ドラゴンを討伐した暁には、僕は、この国をもっと健全な女神教にしてみせます! どうか、民たちを助けて下さい!」


そう言って頭を下げるイケメンなラルアス

どこまでも男前な奴だ。

そして、沈黙をしながら聞いていたルビアは、真面目な表情になりながら、口を開く。


「……確かにそれはいい考だわ。 金髪の男……えっと、名はなんだったっけ?」

「セリア・ラルアスです。」

「じゃあ、ラルアス。貴方には、私を信仰する新しい教皇として、私、いえ、女神を拝める努力をしなさい! これは、神の使いである私から命令よ。貴方にその重圧を耐えられる覚悟は、あるの?」

「神に誓って、僕はルビア様を信仰すると誓いましょう」

「では、セリア・ラルアス。貴方には新たなる教皇に命ずる。私の為に手足となって働いてもらう!」

「ははっ!」


膝をつき、頭を下げながら、ルビアの命令にひれ伏す。

なんか、歴史的瞬間を目撃したような感じだな。

後から、聖書として、記録されたり、するかもしれん。

ラルアス。がんばれよ!


「じゃあ、ちゃっちゃと、ドラゴンを片付けるとしましょうか。私に反逆した、愚かな召喚獣には、おしおきしないと!」

「倒す採算はあるのか?」

「そうね……私の力を遥かに超える化け物だし……力技では、どうすることも出来無さそうねえ……」

「おいおい、ルビア以上の化け物なのかよ」

「私の聖石で、一時的に封印させたほうがいいわね。カズキ、貴方は、私が封印の魔術を唱えるまでの時間稼ぎをさせてもらうわ!」

「おう! まかせろ!」


相手が、ルビアよりも強い化け物だろうが俺は、戦う。

やってやるよ!

俺は、ようやく上りつめたばかりだからなら!

この果てしなく続く、未来へのロードを!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ