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10話 襲撃

数時間は、歩いたが、今のところは何も襲って来る気配がない。

まあ、頻繁に襲撃されたらたまらんし、これが普通なのだろう。

なので、暇で退屈な俺は、女魔術師であるクレリウスに話しかける。


「なあ、クレリウス。 あの一瞬で消える魔術って一体、どんな魔術を使ったんだ?」


俺でも目を追えないほどの速度。

あんな、一瞬にして背後に回り込まれるなんて

会得したら、かなり便利そうだ。


「あれは、適正がある人が唱えられるようになる魔術……と師匠が言ってたの。一子相伝だから、貴方達には教えられない。」

「一子相伝って、どこの北○神拳の伝承者だよ……」

「何よ? その北○神拳の伝承者って?」

「ああ、俺の世界に書かれてた空想の物語さ」

「ふーん、一度は読んで見たいわねー」


ルビアさん、俺の世界に来れるなら、今すぐ俺を元の世界へ返してくれ!


「一子相伝って凄いね! あたしも、メイド道にそんなのがあったらいいのになー」

「メイドにそのような非効率的なモノなどいらんわ!」


そう言って王子は、ツッコミをする。

なんだかんだで、この二人は、仲がいいな。

非常にうらやましいぞ。


「それより、俺の世界ってなんなの?」


やべえ、余計な事を言っちゃったな。

いや、まてよ?

馬鹿正直に答えてもどうせ信用してくれないから問題ないっしょ!


「ふっ……俺はこの世界を救う為に駆けつけてきた、異世界の勇者なのさ……」


かっこよくキメポーズをとる俺。

決まったな。

今まで一番かっこいいぞ!


「頭だいじょうぶなの?」

「カズキくんは精神の病に侵されてるかもしれません! あたしが今すぐに治療魔術を唱えて差し上げます!」

「こらこら、無駄に魔力を消費させるな。勿体ないではないか」

「プププ……馬鹿ねーそんなのが信じられるわけないじゃない!」

「……」


見事にすべってしまった。

俺の胸には、無数の心の剣が心臓へと突き刺さっている。

くそう……何故なんだ。

かっこよかったはずなのに!

それに……なんでルビアも否定するのさ!

まさに四面楚歌である。

今に見ていろよ。

いつか、絶対にギャフンと言わせてやるからな!


そんな雑談をしていた俺たちに、ふと人の気配を感じる。

魔物か?

それにしては、そこまで、おぞましい気配はない。


だが、かなりの数が俺たちを取り囲んでいる。

それは、ルビアや、クレリウスも気付いていて、すっかりと臨戦モードだ。


「王子様。賊が現れたの。衝撃が来るかもしれないから注意して」

「只の賊か、君たちならば、問題なく始末出来そうだね。後は、頼む」


とんがり帽子を被った、クレリウスもそう証言して、王子たちを避難させる。


「汚物じゃないのが残念ね。まあ、賊も汚物みたいな物だわ! どっちにしても、消毒ね!」


複数に囲まれているが、今の俺たちは、負ける気がしない。

相手は、只の盗賊のようだしな。

でも、相手は人間だよな?

……いかん、余計な考えをして、命を落としたらシャレにならん。

つねに、俺は、手加減なしで挑まないと!

そうこう、考えているうちに、盗賊らしき集団がぞろぞろと姿を現してきた。

そして、リーダ各らしき、大男が俺たちに向けて大声で叫ぶ


「大人しく、食糧と金を引き渡せ! 引き渡さないのなら、貴様らは、皆っ!」


リーダ各の男は、最後まで言葉を発する事は、無かった。

気が付けば、ルビアが魔術を唱えて出現させていた、複数の水滴が弾丸のように直撃してしまい、ハチの巣となって、リーダ各の大男は、絶命してしまう。

あまりの事態に、盗賊達もざわざわと動揺が隠し切れない様子だ。

そのグロい姿に、俺は思わず、吐き気を伴ってしまう。

あんなあっさりと、人を殺せる事が、はたして、俺には出来るのだろうか……


「汚物の分際で生意気なのよ! 罪もない人間に、危害を加える貴方達は、全員……消毒よ!」

「さっさと始末するの」


そう言って二人は統率がすっかりと失われた盗賊達を虐殺し始めた。

一方的だ。

くそ、俺も殺るしかない!

逃げ惑う盗賊に、俺は、剣を振り下ろす。


「た、助けてくれ! 頼む!」

「くっ!」


だが、俺の攻撃は止まってしまう。

くそ、後一歩が足りない。

悪党を始末できなくて何が勇者だ!


「済まないが、悪党は死んでもらう!」


目を瞑りながら、俺は、悪党の男性を真っ二つに斬り裂く。

力を込めなくても、簡単に真っ二つになってしまった。

ははは、グロすぎる。

この世界は、ハードだ。

勇者の力が無ければ、俺は、絶対に生き延びる事が難しい世界だろう。


「何、ボサっとしてるのよ! カズキもさっさと汚物を消毒するのを手伝いなさい!」


俺が棒立ちしている様子に気が付いたのか、ルビアが俺に駆け寄って、話しかけててきた。


「なあ、ルビア」

「なによ?」

「人を殺すのって、こんなにもあっさりと死ぬんだな」

「当然じゃない! あんた、頭がおかしくなったの?」


ルビアは、馬鹿にするかのような目つきで、俺を心配している。

全く、女神様の神罰を与えるのが当たり前なら仕方ない。

俺は、女神であるルビアの忠実な部下でしかないのだ。

その任務に忠実にこなしてやるよ!


「やってやるぞーーーー」


こうして、盗賊達は、俺たちの活躍で全滅する。

何事も無かったかのように、俺たちは、その場から移動を始めたのであった。


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