終わりと始まりと01
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「はい、それではこちらで手続きは終わりです。」
薄い書面に記載をして(元の世界の署名で良いらしい)職員に手渡した。
(もっと長ったらしい説明させられるんじゃないかと思ってたんだけど・・)
役場の中を見渡す。そこは人が溢れていた。老人から子供まで、その場に身を包むもので互いに寄り添う彼らは決して生活が豊かではないと感じさせた。シュレーゼンは流民を受け入れていると聞いたから、おそらく彼らがそうなのだろう。
流民もこれだけ沢山いるからかと思ってたのだがそれだけでもないらしい。先程まで別室で能力測定の検査をさせられていたのだが、今までこの国に訪れた”迷い人”が何らかの能力に長けている者が多くいたことも原因にあるみたいだ。
(期待とかあるのかも・・何らかの能力があると良いんだけど・・はい、貴女能力なしですね・・なんぞ言われたらどうしよう、立ち直れませんよっ・・って、はっきし言って勉強とかからっきしだし、スキルも・・ごにょごにょ・・ ><;)
元の世界に戻る為に、まずとりあえず生活をしなければならない。(この年でストリートをやるのは嫌だし)直ぐに戻れる見込みが分からないのだ、しょうがない。通貨もこちらと全然違うらしく、まったくの無一文というわけだ。なので、生活に必要な分だけ稼ぎながら方法を探そうと思っている。
測定・・って言っても、サーチ(調査)の術で大まかな潜在能力値が分かるのだそうだがそうこう悪戦苦悶してるうちに、先程とは違う男性職員がやって来た。
「お待たせしました、・・ええとリサさんですね?」
「あ、そうです」
「シュレーゼンへようこそ、歓迎します。・・ええと、ちょっと別室に移ってもらってもいいですか?測定の結果をお伝えしたいので。」
「分かりました」
先程入った別室へと入っていった。小さな部屋が所狭しと通路に沿って並んでいる一つに促されて席に座った。目の前の男性職員が書類を広げ始めた。
「えぇとあくまで大まかに、ですから・・気にしすぎないでくださいね?」
「はぁ・・・」
(プレッシャーかけないでくださいよ・・)
「率直に、リサさんは女性にしましたらスピード・跳躍力・持久力など身体能力が非常に長けてらっしゃいますね。言ってしまうと、体術的に長けてらっしゃる。・・・魔術の方はこちらの世界に来てから使えるようになったと言うのでまだ体に魔力が馴染んでないみたいですので、測定不可の結果でした。」
優れていた部分があった嬉しさと同時に疑問が沸いた。
「あの、私運動は自慢じゃないですが普通だったんですけど」
おかしいんじゃないか?と。文化部だった自分が、運動の才能がありましたなんてそんな筈ないだろう。その測定の胡散臭さが伺えた。
「んー、ですが測定ではかなり高めでしたよ?」
「マジですか?」
「ええ」
「「・・・」」
しばしの沈黙
「それじゃあ、試してみますか?」
3度目の場所移動、次に向かった先は役場の中庭の辺りに面した所にだった。
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