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濃いイベントはお断り03

***


それから商隊の男性達が周囲を警戒する声が高まっていった。遠目では分からないが、探査の術でどの辺りに居るのか分かるらしい。



(もうすぐ敵と接触する・・・)



外灯の明かりが見えるだけの背景の中に、小さな明かりの集団が見え始めた。それは時間が経つほど多く、大きくなっていった。今では、薄闇の中に動く影まで見え始める。動きを見て誰の目にも明らかだった。”攻撃する気がある”ということが。


動く影達だったが、互いに配備された灯りに照らされた姿が見えた。よく漫画に登場してくる典型的なベタな悪人そのもだと思った。筋肉質な、賊達。大きなお叫びを出して向かって来る。賊達は手から火の球を出しこちらに飛ばしてきたが、味方の魔術師の結界に阻まれていた。ヒューっと空に灯りが放たれたのを機に、その場が激戦となっていった。



手から放たれる火や風の爆風。遮る水と風の流水と結界。もはや常識の中の戦いではないのだ。敵の狙いはこの商隊の積荷らしい。街を行き来するのに危険があるので、交易する回数を減らし一回の取引をそれなりの量にしていると聞いた。敵もそれなりのリスクは覚悟の上なのだと。



「・・不味いな」


隣に居るアードルフが口を開く。



「2人共、頭を下げて近くの物に捕まっているんだ」


言われて慌てて手近な物を探して指示通りにした。”結界が壊れる”外の声が聞こえた時には既に馬車に激しい振動がきた。ガラスは粉々に砕けて破片を頭から被った。ガタガタと未だ揺れていたが、アードルフは剣を手に”外へ行く”と言い飛び出していった。



フランツィスカが言う。

「じたばたしても仕方ないよ、じっとしておいで。人間何とかなる時には、なるんだからさ。」



外の様子は、苦戦しているようだった。結界が壊された事により、敵の攻撃を受けたのだ。他の馬車も同様だが大丈夫だろうか。



「ここ最近は、こういった賊の被害が減ってたんだけどね。連中もいい加減痺れを切らせたんだろうさ。稼業が出来ないと食べれないからね。」


「・・違う職に就こうって賊は思わないの・・?」


「ふぁふぁ、若い子は素直で良い。連中も昔はどうかは知らんが、今はあれじゃから、もう全うの道に就こうとは思わんだろうの。こんな戦国のご時勢じゃ、賊でなければ用兵くらいしか連中は食べていけんだろうなぁ」



戦国状態で各地で戦争している中、職にあぶれる者が多いと言う。敗戦国の扱いは酷い場合も多く、その中からまともな職ではない物に付くものがいると言う。


「じゃが、移民を受け入れている街もあるんじゃ。これから行くシュレーゼンもそう。職に就く努力をすれば雑下かもしれんが出来るようになるかもしれん。」



「私も滞在しても良いみたいだし、良い街ね。」


「ふふふ、お前さんは大丈夫じゃろう。見た目も良いし、魔術に才能もある。」


「あ、ありがと」


そんなに褒められたことがないので、こそばゆい。

フランツィスカは包容力のある女性だなと思った。



「フランティスカは・・何の仕事をしてるの?」


「私かい、そうさな人生相談のような・・まあ占い師さ」


「あ、何か分かる気がする。すっごく素敵。」


「そうかい、有難う」



ふわり、と笑顔を向けられる。


こちらの世界で収入を得たら、彼女の店にお客として訪れようと思った。そうこうしてる内に賊達が引き上げの怒声を上げ始める。何だろう?と思ってるとフランティスカが説明してくれた。最初に通信魔術で近くの辺境警備隊に連絡をした後、位置を確認する為の灯を宙に放った事で、援軍が駆けつけてきてくれたのだ。賊達もタイムリミットを悟ったというわけで、実に去っていくのも早かった。



援軍が到着してからは、本当にあっという間だった。詳しい状況説明などして、後は安全な場所まで付いて来てもらえた。途中族に出くわさないで街に着けたのも彼らのお陰だ。


これで一安心と商人たちもほっとして互いを励ましあっていた。私は私で、アードルフとフランティスカ、乗せてくれた他の商人たちにお礼を言った。”生活が落ち着いたらまた尋ねます”、と。彼らと別れをし、私は始めての街の中を歩いていった。

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