異世界で生活始めます01
1-1 異世界で生活始めます
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今居る場所は学校で、今日は卒業式だった。
寒空がまだ肌に染みる季節だが、人の密集が多いせいかさほど感じられない。周囲は卒業証書を手にし、各々の友人たちとの学校生活最後の話に花を咲かせていた。かく言う私も、仲の良かった友人達と少しでも交流のあった人たちにお世話になったとお礼の言葉をかけていた。
(やっぱ人間、礼は失しちゃならんよ、うん)
(・・お世話になったと言いに来てた○○さん、って誰だっけ・・何て言えない)
先程、自分達に話しかけてきた少年少女の中に覚えてる顔もあれば、忘れていた顔も多々あった事は隠しておこう。これで最後だし、その内忘れてくれるだろう。
こちらの世界に来て1年近く経つ。
私の名前は、こちらではカタカナで発音するけど”リサ”。
元々の世界では”本庄 理沙”(ほんじょう りさ)だった。
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日本で普通に暮らしていたのだが、まさか自分が異世界トリップをするとは思ってもいなかった。いや、心の奥底では『一度は体験したいなー』的な事を言わなかったかと聞かれちゃ困るけど、だが断じて住みたい云々は言ってない。
何が原因でかは不明だが、この学校の校長”ダーヴィト”がこう言っていた。
『世界が正常な状態と我々が認識している物は、決して普通ではない』
『世界は常に変異してるし、またその誤差を埋めようと常に働く力もある』
つまり・・
普通じゃない物だって日常に溢れてるんだよ、って話だった。
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1年前、現実世界の学校へ向かう途中。遅刻しそうになり、近道をしようと何時もと違う道にしたのがまずかった。走ってるうちに空間が歪曲したと思ったら、次に目に飛び込んできた光景は異世界のそれだったのだ。