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魔法使いの試練

【用意する物】

六面体のサイコロが必要です。堅めの紙でサイコロを自作するのもいいでしょう。

無ければ鉛筆の側面に数を割り振るか、紙に円を書いて6までの数字を配分し物を落とす等して、ランダムで数を出して下さい。

用意するのが面倒なら想像して好きに進むのもいいでしょう。

尚、用意はしたくないがどうしてもサイコロでやりたいという方。

そんな方はこちらのサイト様のWebサイコロを利用してみて下さい。

http://mpnets.net/dice/index.cgi?set=1


【ルール】

指定された数字に沿って進んで下さい。

死んだら1からやり直しです。


【キャラクターパラメータ】

◆体力=回復上限は20で0になると死亡します

◆技力=戦闘の際に用います

◆魔力=上限は15で魔法の使用によって消費します


体力・技力・魔力は変化します。メモを取る事を推奨します。


【戦闘の規則】

敵も体力と技力を持っています。

先ずサイコロを振り、出た目にあなたの技力点を足します。

次に敵の分も振り、出た目に敵の技力点を足します。それを比べて数字の大きな方が攻撃に成功した事となり、比べた差分の数だけ相手に損害を与えられます。

損害分だけ相手の体力点から引いて下さい。

これを繰り返して、相手の体力を0にした方が勝利です。


【修得魔法】

自動で使う魔法と指示され選択する魔法、常時・戦闘時に任意で選択する魔法があります。

戦闘時はサイコロを振る前に一つだけ使用出来ます。

後述は消費魔力です。


『転移』:杖の力で師が住む塔へ帰還する 消費-0点

『松明』:杖の力で周囲を明るく照らす 消費-1点

『感知』:魔法の物品の気配をより強く感じる 消費-2点

『読心』:相手の心を読む 消費-3点

『治癒』:常時・戦闘時に体力を5点回復する 消費-3点

『火焔』:炎を発生させ攻撃する(戦闘時は敵に損害5点を与える) 消費-4点

『開錠』:あらゆる鍵や錠を外せる 消費-5点

『剛腕』:一度の戦闘のみ技力が1点増して更に敵への損害は2点増す 消費-5点





〔1〕

 悪名高き老練な魔法使いスレイル。君は彼の唯一の弟子である。

 今君は魔法使いになるための最終試験に合格すべく、ゴブリンが集う城塞洞窟前に降り立っていた。

 の混沌渦巻くゴブリンの岩窟には、ゴブリン達がいずこからか集めた様々な財宝が今も静かに眠っていると聞く。師の命により、今回はその中からある品物を入手するのが目的だ。

 老獪ろうかいな師匠からは、目的の品物が強力な魔法の水晶であることしか聞かされていない。情報を多く与えないのも試験の内の一つなのだろう。

 だが相手が魔力を秘めた物品であれば、その魔力に引きつけられる。君が魔法使いとして有能ならば、必ずや気づき見つけられるはずだ。それがゴブリンの住処で屈指の魔力を秘めている物ならば尚更である。


 ――若く健康な肉体と内に野心をくすぶらせている君は、体力点20・技力点5・魔力点15と、魔法修業者用の魔杖(形状はロングスタッフと呼ばれる代物)を持っている。

 体力には自信があり武術の心得もあるが、戦士としてはやや貧弱な部類。だが魔法使いとしては前途有望な才能を秘めた若者だ。


 この世界でも有数の魔力を持つ魔法の水晶。それを見事持ち帰ることが出来れば、君も正式な魔法使いになれる。

 ここまで来て臆してはいられない。

 暗く深い洞窟内の〔2〕へ、いざ進め。




〔2〕

 杖を掲げ『松明』の魔法を使おう。或いは嫌なら使わなくてもいい。だがこの暗闇では視界も悪く動きも鈍るだろう。戦闘力が下がるので、以降は室外(部屋の中では大方明るい)での戦闘は技力点が4になる。

 魔法を使うと暗がりの中で杖の先が青白く発光し、辺りの岩肌を照らし出す。魔力点から1点を引くように。


 ――薄暗い通路が入り組んだ洞窟。内部は迷路そのものだった。今は君の足音だけが不安げに響く。だが仮にも魔法使いの高みを目指し、通常の勘以上の魔力を備えている優秀な君だ。そう簡単に迷うことはないだろう。

 少量の魔力を地図代わりのアンテナにして働かせながら、比較的整っている洞穴の道を進む。現在の環境は元々のものではないらしく、ゴブリン達が岩壁を掘削した形跡が至る所にあった。

 君は侵入者であり略奪者でもある。どこから危険の種が飛んでくるか分からない。火の粉を自力で払える力はあるが、なるべく慎重に行動した方がいいだろう。


 そうして君が進んでいると、仄かに周りが明るくなってきた。更に歩を進めてみれば、舗装された通路が現れる。灯りが数個設置されていた。左手側には木製のドアが五個並んでいる。

 光の行き届かない通路の先は暗闇に包まれているが、向こうから湿り気のある空気が流れてくるのを君は肌で感じる。空気と共に、微量の魔力がこちらへと漂ってくるのも嗅ぎ取れた。

 探せば他の通路もあるだろうが、目的地へはこのルートで間違いないだろう。

 使いたければ『感知』の魔法で確認してみてもいい。



○『感知』の魔法を試してみるならば〔3〕へ。

●手前にあるドアから順に開けていくなら〔5〕へ。

●通路を進むなら〔6〕へ。




〔3〕

 君の魔力受信能力は最大限まで引き上げられた。

 一番手前にあるドア、その向こうに強い魔力源を感じる。同じく通路の先にもやはり魔力源を感じた。

 魔力点から2点を引き〔2〕へ戻れ。




〔4〕

 君は息絶えた。

 舞い降りた死の女神がその身体と魂をついばむ。

 君の魔力は全て森羅万象へと還元されることだろう。

 そして、時は再び巡り来る。


 DEAD:END




〔5〕

 君はあくまでも慎重に、ゆっくりとドアを開けた。ドアの隙間から中の様子を探る。

 ――部屋の中央にある木製テーブルで三匹のゴブリン兵が賭け事に興じていた。ゴブリン達は簡素な椅子に座ってカードと駒のやり取りをしている。

 彼らが君の存在に気づくのも時間の問題だろう。

 決断するなら早い方がいい。



●部屋の中で直接戦うなら〔7〕へ。

○『火焔』の魔法を試すならば〔9〕へ。




〔6〕

 通路の先から小柄な何者かが歩いて来る。君は油断することなく近づいていった。相手の正体が完全に判明する。

 ヤツはゴブリン・コマンダーだ。身長は君の腰ほどの高さしかない。それ故に非力である。だが代わりに、ゴブリンとしては有数の高い知能を持っていた。

 ヤツが首から下げているゴブリン用の警笛。あれで仲間を呼ばれてはまずいことになる。ここは笛を吹く余裕を与えずに始末しよう!

 ――さあ、初戦闘だ。ゴブリン・コマンダーの体力点は5、技力点は2しかない。ヤツの装備は比較的軽装なので簡単に倒せることだろう。警笛を吹かせないようにするには、君が攻撃をし続ければいいだけだ。


 見事始末したなら〔8〕へ。

 奇跡的にも負けてしまったのなら〔4〕へ進め。




〔7〕

 ――さあ、初戦闘だ。屈強なゴブリン兵達が唸り声を上げて襲いかかって来るぞ。

 釘の付いた棍棒を手にしたゴブリン兵が計三体。何しろその人数が厄介だ。三体で併せて体力点30と技力点6を持っている。

 本来は一体当たり体力点10・技力点4といった輩だが、今回は三体同時に相手をしなくてならないので少々無謀だったかもしれない。

 では幸運を祈る。


 ――ブラボー! 見事に生き残った君は〔10〕へ。

 負ければ、尚も袋叩きに遭いながら〔4〕へ進め。




〔8〕

 小鬼との戦闘を終え、君は一息つく。

 呼吸を取り戻し、君は薄暗い通路をまた進み始めた。〔11〕へ。




〔9〕

 魔力点を4点引いた君は『火焔』の魔法を唱え始める。

 哀れで愚鈍なゴブリン兵達が君の存在に気づく頃には、魔法の詠唱は終わっていた。

 君自身の安全を省みる必要のない室外から放れた炎。部屋中を紅蓮の業火が覆い、絶叫するゴブリン共を焼き尽くす。

 逃げ場のない密室空間では『火焔』の威力は凄まじい。炎が渦を巻き、部屋の中の全てを飲み込んだ。


 ――魔法の炎が鎮火すると、君は焦げ臭さを我慢しながら〔10〕へ進む。




〔10〕

 ゴブリン達の焼け焦げた死骸が転がる部屋の中を君は調べ始めた。

 部屋の隅で雑に立て掛けられていた奇妙な細い剣を見つける。……鞘に納まった剣が置かれている周辺、そこだけは不思議と炎の影響を受けていない……。

 君は鞘から剣を引き抜いた。細身な片刃の剣、実に妖美な刀身だ。

 きっとこれは東国から伝わった『刀』と呼ばれる剣だろう。ゴブリン兵達がこの武器の価値を理解していたとは思えないが、賭けで何者かから巻き上げた物の一つであるのは間違いない。

 目当ての物ではないが、珍しいので戦利品として持ち帰ることにしよう。

 次いでに言えば、君は刀剣類の扱いには長けていない。棒術の方が遥か得意なのだ。よって武器を『刀』に持ち変えることは余りないだろう。


 ――君が部屋を出ようとしたその時、扉の前で小鬼と遭遇した。

 小鬼の様子を見るに、どうやら怯えているようだ。……顔は他のゴブリンと変わらず醜悪そのものだが。

 無視するなら〔12〕へ進め。

 何なら『読心』の魔法を試せる。使うならば〔13〕へ。




〔11〕

 薄暗い通路を抜ける。するとそこには巨大な空間が広がっていた。

 均等な距離で松明が設置されているので視界は良好、足元には天然とおぼしき緩やかな河川が流れている。

 川には渡し舟が繋いであり、対岸には小さな家屋がひっそりと建っていた。家屋の辺りから魔力の流出をピリピリと感じる。ここから向こう岸へ行くには舟に乗るしかないだろう。

 君は小舟に乗り込み、〔14〕へと漕ぎ進めた。




〔12〕

 通路に戻り、他のドアも順に開けていく。

 どの部屋も共通して掃除が行き届いていない。寝台やテーブルなど内装も特に代わり映えはせず、とにかく不潔で汚れていた。

 最後となる五番目のドアを開けて部屋に忍び込む。――君は大きな壷に入った黄色の塗り薬を見つけた。

 君が傷を負っているならば、このゴブリン謹製の塗り薬を患部に塗布すると、体力が5点だけ回復するだろう。この際、多少キツい匂いは我慢しなければならない。

 それ以外にはめぼしい物は何も見つからなかった。

 通路に戻り〔11〕へ進め。




〔13〕

 魔力点から3点を引くと、相手の心がスラスラと読み取れた。近距離で心に隙のある相手だからこそ使える手だ。

 ――やはりヤツは君の強さに怯えている。このままヤツの心の中を更に探ろう。


 ――この先に小屋、毎日、巡回する、宝玉、眺める……錠前、木箱の中、盗む、とても危険……音を立てる、夫婦、察知――。


 他には大した思考は読み取れなかった。

 必要な情報を得た君は、ヤツを捨て置いてさっさと〔12〕へ進んだ。




〔14〕

 岸へと辿り着いた君は、さほど遠くはない家屋を目指してそのまま歩き出した。

 ――家屋の前に無事到着した君は、周りをぐるっと見回す。

 家屋は、如何にも見窄らしい木造の小屋だった。あばら屋に近い。建て付けの悪そうな窓にはボロボロのカーテンが掛かっている。穴からは屋内の光が漏れていた。

 そんな建物の隣りには小さな沼地があることにも気づく。

 では、どうするか?



●『松明』の魔法を消して小屋へ入ってみるなら〔15〕へ。

●沼地に近寄って調べてみるならば〔16〕へ。




〔15〕

 鍵は掛かっておらず小屋へは容易に入ることが出来た。

 屋内に入った君は周囲を窺いながら、むさ苦しい室内を念入りに調べ始める。〔17〕へ。




〔16〕

 君は沼気が満ちた深紫の沼を見下ろした。

 濁って底も見えない腐ったブドウ色の水面には、様々な種類の沼沢植物が茂っている。得体の知れない腐敗したゴミや木片なども沈まず浮いていた。独特なメタンガスの異臭。それに腐敗臭が混じって、つんと鼻を突く。

 どうやら沼地は住人のゴミ捨て場になっているようだ。破滅的な雰囲気に気圧され、君は鳥肌が立った。

 ……何だか嫌な予感がする。

 君は直感的にそう感じて、沼地から離れようと後退りした刹那――。

 眼前の沼から大きな何かが飛び出して来たではないか!

 地面に着地した何かはゆっくりと立ち上る。

 ――それは、蛙と人間を合わせたような奇怪な生物だった。肌は全体的に薄緑色だが、腹部だけ少し白い。……両生類の特徴を見事に備えた生物である。

 その上、薄緑の体躯の至る所で濃い緑色を放つひるに似た回虫が寄生していた。苦虫と呼ばれるこの回虫は本来黄白色だが、変異で色が変わり一匹が親指大に巨大化している。

 蛙人間の濁った丸い眼は既にしっかりと君を見据えていた。粘液とも沼の汚水ともつかぬ液体を滴らせながら、君の方へじわりじわりと近づいて来る。

 ちなみに……君からは見えていないが、コイツの背面はやや褐色で暗色の斑もある。

 ――君がこれから戦う相手は、スワンプモンスター・イビルフロッグだ。コイツは鋭利な爪を持ち、体力点が20と技力点が5もある強敵だ。

 驚くべきことに、特殊な皮膚に覆われたコイツには『火焔』の魔法は通用しない。むしろここで炎を発生させれば、沼に残留するメタンガスに引火して君の方がただでは済まないだろう。

 この生物は打撃にも強い。杖を得物とする君からの損害を1点減らす。だがもしも君が剣のような武器を持っていれば、逆に損害を1点増やせる。

 君はそんな武器をどこかで拾った記憶はないか? さあ、思い出したまえ……。持っているなら今すぐその刃を引き抜くのだ!


 ――決闘を制した君は〔18〕へ!

 敗北すれば、君は死の沼に引きずり込まれることだろう。同時に、当然〔4〕行きだ。




〔17〕

 小屋の中はランプや蝋燭に火がともされており、光が行き届いて充分に明るい。

 入り口扉の直ぐ左手側には、木製の赤茶けた色をした扉があった。それ以外に扉は見当たらない。

 壁際の棚には様々な物品がいくつも陳列されている。ゴブリンが好む食品関係の瓶詰め――虫や動物や人間の胎児のホルマリン漬けまである――から、簡単な魔術の儀式用器具と書物まで……。ゴブリンの子供や人間の子供の特徴を捉えた小さな人形もあった。ゴブリン族は人間の子をゴブリンの子とすり替えるチェンジリングでも有名だが、何か関係があるのだろうか。ともあれ、今は役に立ちそうな代物は特に見つからない。

 生活感漂う部屋の中心には木製の食卓が陣取っていた。その上には乱雑に配置された食器類があり、置かれている陶器皿の一つには不気味な緑色のスープが入っている。緑色の液体はまだ湯気を放っていた。

 奥を見れば台所もあるが、ここから眺めても調理場や水場の周辺は酷く汚れているのが分かった。黒く素早い昆虫が繁殖していそうな場所である。

 部屋の隅には大きめの四角い木箱が置かれている。生憎と錠前付きだ。

 さて、何を調べてみるか?

 魔力点が残っていて使用したいなら『感知』の魔法で探ってみてもいいだろう。



○『感知』の魔法を使う→〔19〕へ。

●左手側の扉を開ける→〔20〕へ。

●不気味なスープを飲む→〔21〕へ。

●一応台所をよく調べてみる→〔22〕へ。

●錠前付きの木箱を調べる→〔23〕へ。




〔18〕

 沼地周辺にはガラクタしかなく、残念ながらめぼしい物は見当たらなかった。つまり戦利品は何もないのだ。当然と言えば当然の結果であろう。

 だが、沼地の強敵を見事打ち倒した君は賞賛に値する。そんな君に天は贈り物をした。

 君はまだ気づかないが、将来己の内側で変化を発見することだろう。

 醜い蛙人間に寄生していた変異型の苦虫と君が接触した結果、苦虫の体液が些細な傷口から体内へ侵入していた。体液は時間をかけて君の身体と深く結び付き、熟成によって通常の人間では有り得ない再生能力を開花させる。魔力とも違う肉体的な進化である。

 或いは例の武器を用いていた場合、君は武器に秘められた魔力の一端を垣間見ることになった。その威力と覇気と、込められた燃えるような情念を知ったのだ。どの道遅かれ早かれ、君は例の武器に魅了されるだろう――。

 しかし、実質的な戦利品が何もないというのも可哀想な話である。そんな君へ幸運なお知らせだ。

 君がもしこの冒険中で非業の最期を遂げた場合、神秘的な力によって体力点が1点だけ回復して、即座に復活する。正にラストチャンスである。君の中にある苦虫の執念がそうさせるのかもしれない。

 さて、今だ見ぬ支配者への運命の道に抱かれながらも〔15〕へと進もう!




〔19〕

 君の魔力受信能力は最大限まで引き上げられた。

 木箱から凄まじく強い魔力源を感じる。目眩めまいがするほどだ。

 湯気が昇る緑色のスープにもほんのりと魔力があることに気づいた。何やら毒性も帯びているようだが……不思議と害意は感じない。

 それと、台所の下にはゴキブリの巣がある。

 ほぼ答えは見えたはずだ。魔力点から2点を引き〔17〕へ戻れ。




〔20〕

 君はドアの取っ手を握り、扉を開こうとした。しかし開かない。内側から鍵が掛けられているのだろう。

 君は『開錠』の魔法を試してみようかとも一瞬考えたが、嫌な予感もするので他を調べることにした。〔17〕へ戻る。




〔21〕

 君は緑色のスープを啜ってみた。見た目とは裏腹になかなかの美味だ。

 次の瞬間、喉に謎の爽快感が走る。

 不気味なスープの正体は、苦虫の出汁だった。苦虫は人間に作用する有害な毒性を持っているのだが、それはあくまで一般的な人間相手の話。魔法使いにはまた別だった。

 魔の力を持つ者に対してはある種の強壮剤に成り得る。毒性の働きが変化して魔力が一時的に増強するのだ。

 謎の爽快感は全身に巡り始めた。少しすると不思議な活力が湧いてくる。暖かく優しいオーラに包まれていく、そんな感覚があった。

 君の魔力点は5点も回復する。それに加えて『感知』の消費魔力は0点になり、更には『治癒』と『火焔』の効果が1点増す。魔力そのものだけでなく、集中力の向上により魔法のコントロール力も増大するのだ。

 君は気炎万丈で〔17〕へ戻る。




〔22〕

 なぜ君はそんなに黒い昆虫が好きなのか?

 不衛生極まりない台所にはやはりめぼしい物は何もない。分かっていただろうが、散らかっていて汚いだけだ。

 そして予想通り、君の好きな黒い昆虫がいた。二匹も流しを這いずり回っているではないか。

 さあ、満足したなら早く〔17〕へ戻りなさい!




〔23〕

 木箱は施錠されているが、何か堅い物をぶつけて錠前を壊せば木箱を開けられそうだ。

 それとも『開錠』の魔法を使うか? 君にまだ魔力が残っているならの話である。



●考え直して他を調べる→〔17〕へ。

●周りにある何かを使って錠前を壊す→〔24〕へ。

○『開錠』の魔法を使う→〔26〕へ。



〔24〕

 手頃な物はないかと周囲を物色する。君は使えそうな拳大の漬け物石を見つけた。

 そして石を錠前にガンガンと何度かぶつけ、君は難なく錠を壊した。何と脆い錠前だろうか。

 晴れて木箱を開けようとしたその時、背後で妙な気配を感じた。〔25〕へ進め。




〔25〕

 君は後ろを振り返る。そこには見窄らしい服を着た若い男が立っていた。痩せた手にはなたを持ち、君を睨みつけている。

 ――有り得ない。部屋には最初から誰もいなかったはずだ。扉が開けば音もするだろうが、作業中だったとはいえ君が何の物音も聞き取れなかったなんて! ……どこかに隠れていたのだろうか? 更に有り得ないことだが。

 実は君の目の前にいる男は、物音や気配を消すすべを自然と身に付けているのだ。先刻は彼が殺気を放ったので君がその存在に気づいたというわけだった。

 おまけに、魔に見込まれたこの男は凶暴な狂気に取り憑かれている。その証拠に、今は男から微量の魔力を感じるだろう。

 ――君の相手は完全な狂人である。尚且つ君の行動によって彼の思考は激しい怒りに支配されている。言い訳も交渉も通用しないだろう。同じ人間だからといって話しかけてみても無駄な行為なのだ。

 彼はゾンビ並みに痩せこけているのに素早くてパワフルだ。体力点10と技力点3を持っていて、君が死ぬまで攻撃を止めない。


 さて……例え彼を殺すことが出来たとしても、安心するにはまだ早い。心して〔28〕へ進もう。

 鉈で滅多斬りされたのならば〔4〕へ行こう。

 死後バラバラに分離された君の五体は、家の隣りにある沼へ沈められる。




〔26〕

 魔力点から5点を引くように。

 魔力が霧状となり、それが凝縮すると鍵の形として具現化された。万能な幻の鍵が鍵穴にピタリと入る。鍵がメカニカルに働く。

 カチリと錠が外れる音を確認すると、君は木箱を開いた。〔27〕へ進む。




〔27〕

 大きめの木箱の中には沢山の品物が詰め込まれていた。

 さて、そんな品々の中で君の目を引く物はあるか?

 又は魔力点さえあれば『感知』の魔法を用いて、更に選択を絞るのもいいだろう。



○『感知』の魔法を使う→〔29〕へ。

●君は玩具の短剣を見つけた→〔30〕へ。

●君は白い玉を見つけた→〔31〕へ。

●君は古めかしい眼鏡を見つけた→〔32〕へ。

●君は羅針盤コンパスを見つけた→〔33〕へ。




〔28〕

 出口近くにある赤茶色の木製扉、そこから物音を聞きつけたゴブリンが飛び出して来た!

 エプロン姿で手には出刃包丁を持っている。ゴブリンは狂人との戦闘後の惨状を見て怒り狂うことになる。

 ――彼女の体力点は15で技力点は4もある。しかも謎の短剣術を駆使してくる。君への攻撃が成功すると損害が1も増す厄介な相手だ。

 並びに、彼女がサイコロで6を出すと(サイコロを振るのは君だが)、得物の出刃包丁で君は心臓を軽々と貫かれる。その場合は体力点に関係なく君は即死するだろう。早めに決着を付けるが吉だ。

 彼女を倒すことが出来れば、君は安心して木箱を開けられる。


 ――二つの死闘を潜り抜けた君は〔27〕へと進もう!

 負けたり心臓を貫かれたなら〔4〕へ行かなくてはならない。

 彼女は君の身体から内臓を引きずり出す。身体は天井のフックに吊され保存用の干し肉に、内臓は漬け物にされるだろう。




〔29〕

 魔力点から2点が引かれる。

 君の魔力受信能力は最大限まで引き上げられ、より繊細な見極めのために焦点が極限まで絞られた。

 この中で明確に魔力を感じるのは白い玉だけだ。それが目的の品で間違いない。

 ちなみに……玩具の短剣からは少し危険を感じる。

 君の冒険もゴール寸前だ。〔27〕へ戻れ。




〔30〕

 見るからに玩具の短剣を手に取る。銀色の刃は樹脂製で全く切れない。突いてもすぐ折れそうだった。

 しかし、それは見せかけだった。君が柄を握っていると、カチッという音と共に柄から小さくも鋭利な刃が飛び出した。

 君はその刃で手に怪我を負う。

 体力点が1点減った。しかも罠である仕込み刃には麻痺性の毒が塗られており、暫くの間は利き腕が麻痺することになる。技力点も1点減らそう。

 もうこんな危ない物には触れたくないだろう。〔27〕へ戻れ。




〔31〕

 白い玉を手に取り、よく見つめる。非人工的で完璧な球体だった。

 君は一見して玉の魔力に感づいた。白い球体の中には、まるで生きているかのように変化する幾重もの魔光が宿っている。

 そう――これこそ君が探し求めていた魔法の水晶球『グウィヌスの竜珠』だ!

 早く〔34〕へと進もう!




〔32〕

 古ぼけた眼鏡を手に取り、試しに掛けてみる。君は近眼でも遠視でもましてや老眼でもないが、もしかするとこの眼鏡は魔法の眼鏡かもしれない。

 君は眼鏡を掛けてあちこちを見てみたが……特に変化はなかった。

 ただの伊達眼鏡だ。君は眼鏡を床に叩きつけた。

 この時、君が『開錠』の魔法で安全に錠前を外したのなら、背後で何者かの気配を感じることになる。〔25〕へ進もう。

 無理矢理に錠前を壊して、既に相手の正体を知っているなら〔27〕へ戻れ。




〔33〕

 君は手に納まるサイズの羅針盤コンパスを調べてみた。これは魔法の羅針儀の類いかもしれない。

 だが羅針盤の針が動かない。どうも壊れている。

 もしかしたら壊れる以前は魔法の羅針盤だったかもしれないが、壊れている今は何の価値もない。普通の羅針盤よりも使えない代物と化している。

 壊れた羅針盤を箱の中へ戻して〔27〕で他の物を調べよ。




〔34〕

 この白き水晶球は、小さな見た目とは裏腹に強大な魔力の塊である。内包する魔力は常人を魅了する程だ。

 だが魔法使いが用いた場合は、その力を引き出せれば絶大な恩恵を受けられるだろう。勿論水晶の魅了に耐えられるだけの魔力の持ち主でなくてはならない。

 ここまでは優秀な君も直ぐに見抜いた事実だった。

 しかし君は知らない。この『グウィヌスの竜珠』が生まれ出た背景を……。


 ――その昔、グウィヌスという巨大な魔竜がいた。

 圧倒的な力を誇るグウィヌスは、気分一つで世界の半分を焦土に変えた。特に彼女は、浅ましく醜い人類が嫌いであった。

 グウィヌスが傲慢な人間を踏み潰し、焼き払い、凍りづけにしていた頃。人間の中から十三人の英雄が現れる。

 彼らは、一人一人が国を興せる程の卓越した能力を有していた。

 そして、英雄達とグウィヌスの生死を賭けた戦いが始まるのだった。

 十三英雄と魔竜グウィヌスとの戦いは三日三晩も続いた。

 そして、十二人の命と引き替えにグウィヌスの魔力は一時的に尽きることとなる。

 その隙を突いて、最後の一人がグウィヌスの首を討ち取った。

 グウィヌスは首だけで暫くの間這い回った後、涙を流しながら怨みの言葉を吐いて絶命した。

 そして、彼女が流した最後の涙。その一粒がなぜか結晶化したのだった。

 それが『グウィヌスの竜珠』である。

 最後の一人であった伝説の魔法使いバルザック。彼は持ち帰った竜珠を独り占めして長年の家宝としたのだった――。

 竜珠が今も人の心を狂わせるのは、グウィヌスの強い怨みが魔力と共に込められているからかもしれない。

 その後のバルザックはといえば――。弟子の一人から裏切りを受けた結果、いとも容易く殺されてしまうのだが……。この時、弟子によって竜珠も持ち去られてしまう。

 次の話も君が知らない事由であるが、実は竜珠の元の所有者は君の師であるスレイルだった。

 そして愚かなる師は、なんとゴブリン族から多額の金を借りていたのだ。多くの金は裕福な暮らしと遊ぶための資金として消えていった。収入が取り立てに追い付かない額だったので、スレイルは借金のかたに竜珠をゴブリンに引き渡してしまっていたのだ。

 君は――師のあくどい私財回収の片棒を、まんまと担がされたのだ! ――まあ肝心の君はそんな事情を全く知るよしもなかったのだがね。

 もしかするとスレイルは、端から借金を全て踏み倒すつもりでいたのかもしれない。例え君が今回の試練に失敗した――死体になった――としても、彼は一人でここに乗り込める程の実力者でもあるのだから。

 ……さて、君の冒険を終わらせよう。

 意気揚々と〔35〕へと進むがいい。




〔35〕

 さあ『転移』の魔法を使いたまえ。そして師が住む塔へ帰還しよう!

 目的の品を携え無事に生還した君を師が見たら、意地の悪い彼はどんな表情をするだろうか。

 そう、君は今から嬉しくて堪らない。


 何にせよ――これで君も今日から立派な魔法使いなのだ!


 TRIUMPH:END




今回は本格的にルールを組み込んで戦闘と魔法に特化した話にしました。敵の強さや魔法のバランスはいかがだったでしょうか。

今作だけでも完結してますが、前作を読んでもらうとより世界観が味わえるかと思います。

前作の展開の流れを踏襲して、前作でのストレスを解消する形にしました。前作ではどうにもならなかったやつらを全て叩き潰せる仕様です。

新たな強敵も登場、特に後半では前作の主人公も登場して……。この様な流れは次回の完結編にも入れる予定です。


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