ゴブリンの城塞洞窟
指定された数字に沿って進んで下さい。順に読んでも話は繋がりません。
死んだら1からやり直しです。
ボリュームは少ないですから、ズルは非推奨!
〔1〕
君の村は今、正に貧困によって危急を迎えている。
そこで村の若者の一人である君は立ち上がり、自分の村を救うために単身で不気味な洞窟の前へとやって来たのだった。
忌むべき邪悪なゴブリン達が住処としているこの城塞洞窟には、彼らが各地から集めた様々な財宝が眠っていると聞く。
軽い背嚢を背負った君は、ある思いを巡らせた――
――君が生まれ育った、慎ましくも優しさに溢れた名もなき農村。そんな村も、今は長引く凶作で酷い飢饉に苦しめられていた。
経済的食糧難から故郷を救い出すには、金貨に交換出来るような財宝の一つでも持ち帰らなくてはならない。君を健やかに育んでくれた肉親のような郷里。恩を返す時が来たのだ。
だが君は考えた。
――財宝の噂は果たして本当なのだろうか?
――真実だとして、これ以上進む勇気が今の自分にあるだろうか?
醜悪なゴブリンが築いた天然の要塞を前にして、君は今決断しなければならない。勇気がないなら尻尾を巻いて村へ逃げ帰るのもいいだろう。
この瞬間こそ、君という人間の真価が問われる。
●松明に火を灯して洞窟の中へと入るならば〔2〕へ。
●怖ず怖ずと村に逃げ帰る腰抜けは〔3〕へ進め。
〔2〕
迷路のように入り組んだ洞窟内の通路。君は勘だけを頼りにして慎重に歩き続ける――
天然の洞穴を住処にすべく、ゴブリン達は長年懸けて更に岩壁を掘削し続けたのだった。結果として出来たのが、頑強な砦の如きこの岩窟である。
そう、君はゴブリン達が築き上げた安住の地に入り込んだ。しかも“か弱い”侵入者なのだ。
ではここでゴブリンと遭遇すればどうなるか……? ただでは済まないだろう。盗人を歓迎するほど彼らはお人好しではないのだから……。
細心の注意を払って行動することだ。
――暗がりの中、辺りの岩肌を照らす松明の炎。パチパチと微かな音が響き、オレンジ色の炎がゆらゆらと揺れ動く。農村育ちで武器もろくに扱えない貧相な君にとって、片手に持つ僅かな光明と危険を避けるささやな幸運だけが今の希望だった。
そうして暫く進んでいた君は、左手側に木製のドアがいくつか並ぶ通路に出た。
通路脇に等間隔で灯りが設置されているものの、通路の奥は暗闇に包まれていてここからではよく見えない。
明かりによって君の影だけが不気味に暗闇の方へ伸びていた。君は通路の向こうから流れて来た湿り気のある空気を感じる。
●一番手前にあるドアを調べてみるならば〔5〕へ。
●このまま通路を進むなら〔6〕へ。
〔3〕
飢えに喘ぐ村。
救う者もいなければ救われる者もいない。
死がゆっくりと村を覆い尽くす。
いずれは君の番も必ず回って来るのだ……。
死神が迎えに来るその時まで、震えながら待て。時が来れば〔4〕に進もう。
〔4〕
君は死んだ。
実に呆気ない。だが人生とは往々にしてそんなものだ。
身体は腐り、君の魂は天へと昇る。
運が良ければ輪廻の女神に出会うこともあるだろう。
DEAD:END
〔5〕
君は慎重にドアへと近寄る。
ドアノブの前で中腰の姿勢のまま聞き耳を立ててみると、木製の扉を隔てた向こうから何者かの声が聞こえてきた。
何人かがギャーギャーと何事か喚いているようだ。
●気にせず通路を進むなら〔6〕へ。
●声をもっとよく聞こうとするならば〔7〕へ。
〔6〕
向こうから、小柄な何者かが歩いて来るのがぼんやりと見える。
君は目を凝らすと、暗闇の中で輪郭が浮かび上がってきた。どうやら小鬼の類らしい。まだこちらには気付いていないようだ。
君はドアの付近に突き出した大きめの岩があるのを見つけた。痩躯の君一人ぐらいならば隠れられそうな窪みがある。
そこへ身を潜め、岩陰と暗闇でヤツをやり過ごすことにしよう。
――君は運良くヤツをやり過ごし、安堵の一息をついた。
気を取り直して薄暗い通路を進む。〔8〕へ。
〔7〕
集中して聞いていると“イカサマ”という言葉だけは何とか聞き取れた。
この部屋でゴブリン達が賭け事でもしているのだろうか?
その時だ。君はふと背後から視線を感じて振り返った――瞬間、全身に悪寒が走る。腰ほどまでの身長しかない不気味なゴブリンが君を見上げていたからだ。
顔はご多分に漏れずゴブリン特有の醜悪なものだった。装備は革製らしく、比較的軽装のようだ。
――コイツは子供だろうか?
相手の容姿だけでそう推察した君の考えは少々甘かった。
君の目の前にいるヤツは非力ではあるが、高い知能を持っているゴブリン・コマンダーだ。或いは本当にゴブリンの子供であれば、君の寿命も少しは延びたのかもしれないが……。
ゴブリン・コマンダーは懐から静かに警笛を取り出す。そして即座にそれを吹いた。しかし、人間である君には特殊な笛の音は聞こえない――
代わりに、背後のドアが開く音が聞こえた。君は反射的に振り返る。
三匹の屈強なゴブリン兵が手に棍棒を携え、今にも飛び出して来るではないか!
ゴブリン兵達は先ほどまでギャンブルに興じていた。君の予想通りである。そして“イカサマ”の件で言い争っていた彼らは、現在非常に機嫌が悪い。全く以て問答無用である。
練磨された身体性を持つゴブリン兵達が、叫び声を上げて君に襲いかかる。“か弱き”者である君に成す術はなかった。
釘の付いた棍棒で袋叩きに遭いながら、血塗れになった君は〔4〕へと進まなくてはならない。
〔8〕
通路を抜けると、そこはドームのように巨大な空間が広がっていた。所々に灯りが点在しているおかげで、視界は仄かに明るい。
少し先には水流の緩やかな川がある。洞窟内に出来た天然の河川だろうか。対岸には小屋らしきものの存在が見て取れた。川には都合良く渡し舟も繋いである。
ここまで来た君は臆することもなく小舟に乗り込み、好奇心と共に〔9〕へと漕ぎ進んだ。
〔9〕
君は無事に岸へと辿り着いた。帰り道のことも考えて桟橋に渡し舟を繋いでおく。
何かありそうだ、という逸る気持ちを抑えながら、そのまま真っ直ぐ小屋へと向かった。
――君は小屋の前に立ち、その外観を眺めている。
なんとも見窄らしい家屋だった。
●松明を消し様子を伺いながら小屋へ入る→〔10〕へ。
●嫌な予感がするので引き返すことにする→〔11〕へ。
〔10〕
不用心にも鍵は掛かっておらず、小屋の中へは容易に入ることが出来た。
屋内に入った君は周囲を見渡しながら、部屋の中を注意深く観察し始める。〔12〕へ。
〔11〕
何だか嫌な予感がする……。
ここまで来たというのに、君は不思議とそう感じて本能的に後退りした。刹那――後頭部に強烈な衝撃を受ける。
君は衝撃で崩れるようにして前のめりに倒れ込んだ。地面にうつ伏せになった君の頭から、生暖かい血溜まりが広がっていく。
ここまで来たのに本当に残念だ。〔4〕へと行こう。
〔12〕
部屋の中は、ランプや蝋燭の灯火が隅々まで行き届いており、充分に明るかった。
入口直ぐの左手側には、もう一つのドア――木製で赤茶けた色をしている――がある。
壁際の棚には、気味の悪い正体不明の物品がいくつも陳列されていた。魔法使いや腕に覚えのある料理人、或いは目利きの鑑定士ならそれらに価値を見い出せるかもしれないが、生憎と君は若さだけが取り柄の農耕を営むただの村人だった。
部屋の真ん中ほどには、生活感漂うテーブルと乱雑に配置された食器類。テーブルの上に置かれた皿の一つには、まだ湯気が昇る美味しそうな緑色のスープが入っていた。材料は不明だがきっと豆か何かのスープだろう。そう思うと、途端に忘れていた空腹感が湧き上がる。
または奥を見れば台所もあるが、酷く汚れていた。今にもゴキブリが現れそうだ。
部屋の隅の方には、大きめの四角い木箱が置かれているのも見えた。
では兜の緒を締めて探索を始めよう。
●ドアを調べる→〔13〕へ。
●スープを飲む→〔14〕へ。
●台所をもっとよく調べてみる→〔15〕へ。
●木箱を調べる→〔16〕へ。
〔13〕
赤茶けた色をした木製のドアにゆっくりと近づく。
だが君がドアのノブに触れようとするよりも早く、ドアが自然と開いた。
すると目の前に、エプロンを着け包丁を持ったゴブリンが立っているではないか!
●戦う→〔17〕へ。
●話す→〔20〕へ。
〔14〕
空腹感に負けた君は、おもむろにスープを啜った。今までに味わったことのない美味である。同時に、君は飢えで苦しむ村の皆のことを思い出した。
そう思ったのも束の間だった。今まで感じたことのない異常な激痛が喉に走る。
スープの正体は、苦虫の出汁だったのだ。苦虫は通常、人間に作用する有害な性質の毒を持っている。
猛毒によってもがき苦しむ君。喉を掻きむしり、存分にのた打ち回った。暫くすると痛みさえ感じなくなる。
間もなく〔4〕へと辿り着くだろう。
〔15〕
はて、君はそんなにゴキブリが好きなのか?
不衛生極まりない台所には、特にめぼしい物は何もない。散らかっていて汚いだけである。
しいて挙げるなら、案の定、君の好きな黒いゴキブリが流しを這いずり回っていた。
さあ、早く〔12〕へ戻りたまえ!
〔16〕
木箱はしっかりと施錠されていた。
だが錠前自体は長年手入れがされていない様子で、経年の影響により随分と劣化している。錠前を何とか自力で壊せたら木箱を開けられそうだ。
●考え直して放っておくなら〔12〕に戻れ。
●周りにある物を使ってでも錠を壊すなら〔18〕へ進め。
〔17〕
恐怖に駆られた君は、先手必勝とばかりに何も考えず雄叫びを上げてゴブリンに飛びかかる!
だが、ゴブリンは持っていた包丁で君の心臓を易々と貫いた。
痛みは一瞬だけだった。
見事なお手並み、完全に致命傷である……。
似つかわしくない蛮勇が裏目に出たようだ。君の赤い血が傷口から全て出尽くすと〔4〕へ。
その後、ゴブリンは君の身体を天井から吊して、保存食用の干し肉とするだろう。
〔18〕
ぶつけるのに手頃な物を探して錠前を壊すことにする。
君は周辺を物色して、丁度打って付けに違いない拳大の漬け物石を見つけた。
出来る限りの腕力を使い漬け物石を錠前に何回かぶつけると、錠を壊すことに成功した。
そして君は好奇心に後押しされて木箱を開く。――木箱の中には、一見ガラクタと思える品物が沢山入っていた。
さて、そんな品々の内で君の目を引く物はあるだろうか?
●残念ながら興味を引かれる物は何もなかった→〔12〕へ戻る(勿論〔16〕を選ぶことは出来なくなる)。
●玩具のような白い玉を見つける→〔19〕へ。
〔19〕
君は白い玉を手に取り、まじまじと見つめる。それはとても綺麗な曲線を持つ、白く美しい水晶玉だった。
――これは、全く狂いのない完全な球体である!
こんな物は自然界には存在し得ない。ここまで完全な球体は人の手で生み出すのも困難だろう。貧しい農民の出である君には、そんな事実は知る由もなかったが……。
しかも白い球体の中には、オーロラを思わせる幾重もの不可思議な光が宿っている。揺蕩う幕状の光かと思えば、帯から分かれ天の星のように瞬く光も現れた。その光は……まるで生きていると言っても不思議ではない。
数瞬すると光の一つが君という観察者の存在に気付き、君が持つその卑しい心を捉えた。それにも気づかず白の水晶玉を更に覗き込む君は、瞬く間に水晶の妖光に魅入られた。
君はより深く水晶玉に心酔する。最早眼前にある美しい球体を観察することだけに必死だ。自分の意思では目さえも離せなくなっていた。
――錠前を壊した時。物音を聞きつけたゴブリンが赤茶けた木製扉を開き、君の背後に迫っていた。だが水晶玉を見つめ続けている君は、家主である彼女の存在に気付かない。
いつ殺されてもおかしくない状況である。
ところが――。君が狂気に取り憑かれたことを彼女が知れば、彼女は喜んで君を受け入れる。その後、君を“夫”として迎えることだろう。最上の奴隷として!
君もこの白色たる水晶球の側から永遠に離れたくはないのだ。そして美しき水晶球への愛おしさに狂う君は、その狂気を用いていくこととなる。
強大な魔力の塊である『グウィヌスの竜珠』の良き守護者となるのだ。
MADNESS:END
〔20〕
君はゴブリン相手に何とか交渉を試みようとする。
――すると驚いたことに、ゴブリンは一目見た君を甚く気に入ったらしい。君がここに留まるのなら、彼女が持つ財宝の一部を村へ送ってくれるという話になった。
それが本当ならば、村は飢えの苦しみから解放されるのだ……。現在置かれている君の状況を鑑みると、悪くはない取り引きのようにも思えてくる。
目の前にいる彼女――ゴブリンの女史も、案外悪いヤツではないのかもしれない。
そうして君は、英雄的な決断を下す――
君は思った。
ここの暮らしも、案外悪くはないだろう。
HAPPY:END
バッドエンドは好きですか?
初めてゲームブックを製作しました。地味に二人称小説も初。
小さい頃からの夢が叶った瞬間。案外書けましたね。
初心なのもありノーヒントで死亡率は高めですが、短いので何分ご容赦を。
このパートだけでも完結してますが、色々と次回への繋がりや伏線も仕込んでます。お楽しみに!