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ギフト返品不可、ただし命は例外

作者: 妙原奇天
掲載日:2025/12/27

 夜二時。スマホの広告が目に刺さった。


「ギフト:明日のあなたを一時間だけ先に受け取れます」


 酔っていたわけじゃない。ただ、明日が嫌だった。指が勝手に「注文」を押した。


 チャイムは三分後に鳴った。あり得ない。ドアの外に、白い箱。伝票は空欄。かわりに赤字で一行。


「返品不可、ただし命は例外」


「……は?」


 箱は、妙に冷たい。発泡スチロールのはずなのに、指先の熱を奪う。

 迷っているうちに、またチャイムが鳴った。今度は家の中からだ。


 梱包テープが、勝手に裂けた。


「開けるな!」


 声。玄関の箱じゃない。背後――自分の部屋。振り向くと、部屋の真ん中に同じ白い箱があった。いつ置いた。


 蓋が跳ね上がる。中から、男が転げ出た。俺だ。髪が濡れている。息が荒い。腕に、細い擦り傷。


「お前……誰だ」

「お前だよ! 一時間後の!」


 未来の俺は、俺の肩を掴んだ。指が冷たい。

「いいか、玄関の方は——」

「もう触った」

「……最悪だ」


「何が起きるんだよ」

「説明できない。説明すると、確定する」

「確定?」

「このギフトは、“未来”じゃない。“手順”を届ける」


 未来の俺は、震える息で笑った。

「お前、さっき思っただろ。『明日が嫌だ』って」


「思った」

「それが注文ボタンだ。で、届くのは——」


 玄関の箱が、内側から叩かれた。どん、どん、とリズムが正確すぎる。

 未来の俺が叫ぶ。


「耳を塞げ! “あいつ”の合い言葉を聞くな!」


「合い言葉?」

「聞いた瞬間、お前は——自分で自分を——」


 玄関の向こうで、静かな声がした。オペレーターの声だ。やけに丁寧。


「返品をご希望ですか。返品不可、ただし命は例外です」


 俺は、思わず答えた。

「……命って、どうやって返品するんですか」


 未来の俺が、泣きそうな顔で言った。


「そうやって。“言わせる”んだよ」


 箱の中で、何かが笑った。

 そして俺は理解した。ギフトの中身は、明日の俺じゃない。


 ——俺を殺す手順だ。

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