【15】辺境の勇者と聖女
――――8年後。
ここは山と領都の境のこじんまりとした民家だ。
「お帰り、アルダ。今日はどうだった?」
出迎えてくれたのはエプロン姿の成長したリーリャだ。
「ああ、狩りで幾つか仕入れたからもらってきた。アーリヤ姉さんたちがリーリャにも会いたいって」
「うん、私もまた姉さんたちに会いたいな」
「けど今は大事な時だろ?」
そっとリーリャのお腹に触れる。
「うん」
リーリャが頬を赤らめる。
「無事に生まれたら姉さんたちにも顔を見せてやろう」
「そうだね。楽しみだなあ」
とは言え今でもたまに土産を持ってくるやつらもちらほらいる。
「スィーリお義兄さんやお義父さんに会うのも楽しみだね。忙しいからなかなか来られないけど」
「アイツらは……まぁなぁ」
スィーリなんて自分の結婚そっちのけで甥っ子か姪っ子の誕生を心待ちにしている。
「アルダー!肉いつ食べル!」
バーンと扉を開けて入ってきたのは、一緒に狩りに行っていたアレクだ。外ではラーシュと戯れていたのか?
アレクも相変わらずここにいついているし、たまにやって来るラーシュは……相変わらず年を取っているようには見えないが。
「今から調理する」
「俺も……リーリャにたくさん食べサセル!」
「ま、栄養は必要だもんな」
「ふふっ」
リーリャが穏やかに微笑む。こんなにも穏やかな日々が来るとはな。最近は辺境も落ち着いている。勇者の仕事はあるが聖女が新たな命を心待ちにできるくらいには。
「うわー……今日も疲れたあ ー。メシー」
次に来たのはレンニだ。
「よう、今日も講師か?」
「そんなとこ」
マティの始めた医師改革で、医者認定について国が補助を始めたのだ。しっかりと実力のある闇医者は医者に。薮医者はダメだ。
そんな中レンニも医者資格を取り、今では講師までしている。
山ではその弟子たちも医者やヒーラーを務めているし、辺境の街や各地でも資格保有のための講師に引っ張りだこだ。
「ほら、肉料理だ」
他にも野菜料理を並べる。
「デザートもあるぞ」
「懐かしいなあ」
「お、いいねぇ」
いつの間にかラーシュまでやって来て食卓につく。
今はもう、レンニお手製の薬は飲まずに済んでいる。
「いい顔をしているよ」
「そりゃぁ良かった」
レンニに微笑みかける。
「親父さんには会いに行ってるのか?」
「辺境伯家の仕事で会ったよ」
「そうじゃなくてだなあ。プライベートで食事とか歓談とかあんだろ?」
「お前はどうなんだ」
「この間も会いに行ったけど?プライベートで」
「そう言う……もんか」
今度、時間がある時に会いに行ってもいいかもな。
辺境の勇者は民衆に愛される義賊でもある。
しかし時に勇者は辺境伯騎士団とも手を組み辺境を守る。
辺境は今日も平和だ。たまに魔物とのドンパチはあるが、勇者がいるから。勇者の隣には聖女がいるから。
やがてアレクとスィーリがサプライズでアルトゥールを連れてきた。リーリャも知っていたのか?クスクスと面白そうに微笑んでいる。
「アルダ、リーリャちゃんも元気そうだ。それに……無事に孫の顔も見れるとは」
「ああ。近くで見てやってくれ」
「もちろんだ。ありがとうな、アルダ」
「それは俺もだよ。……父さん」
【完】




