狂愛
目的はハッキリしているので……
待ち合わせのカフェで開口一番
「あまり汚い所はイヤよ!」と言葉を投げた。
そしたらカレ、「“汚い所”って店のトイレ?」
って返して来た。
例え“並み以上”の男だって、こう言う口の利き方をされたらその場で席を立つところだが……
私の目の前の男は美しく可愛らし過ぎた。
その自らの容姿に裏打ちされたオンナに対する自信がふてぶてしくて……憎たらしくも可愛い!!
目の前のカフェラテのカップすらもどかしく、私はカレの手の甲に、さっきネイルアートを施したばかり指先を遊ばせた。
「私の事、そんなに安く見積もってるの?」
「佳奈ちゃんを試したのさ」
明らかに年上の女の事を“ちゃん”付けで呼ぶこの男の名前は……ウソかホントか分からないが拓海と言う。
「ナマイキなんだね!拓海って!!」
自分でも信じられないのだけど……私は会ったばかりのこの歳下の男にすっかり甘えている。
「別にナマイキになんてなりたくないけどさー こないだ、いきなり女子トイレに引っ張り込まれて、あの狭い中でスカートをたくし上げられたんだぜ! ドアにガンガン肘、ぶつけながらさぁ~ もしこんな現場押さえられたら100%オレが悪人じゃん!」
「エーッ??!! じゃあトイレから逃げたの?」
「バカだなあ~逃げたら騒がれるに決まってんじゃん!」
「だったら どうしたの?」
「シたよ」
「シたんだ」
「うん」
私、暇になっている方の手の指をカフェラテのカップにくぐらせて中身をコクリ!と飲んだ。
「じゃあ私とは?」
「佳奈ちゃんは騒いだりしないだろうからなあ」
「……しないの?」
「とんでもない!!オレのとっておきにする!」
◇◇◇◇◇◇
カレは私を小ぎれいなブティックホテルへ連れて行き、その中で一番いい部屋をさっさとカード支払いしてくれた。
ほんの半日前、私は夜勤で……ベッドの上で固まっている患者さんを“体交”していた。
その私が……今はふかふかのバスローブを羽織って天蓋付きのベッドに腰掛け、『カレのシャワー待ち』をしている。
夫には「今日、夜勤の予定だったコが倒れたから急遽フォローに入る」と言ってある。
実際、日勤夜勤で連続32時間勤務だったけど……こんな“夜勤”だったらあと二日やったっていい! その位、私のカラダは燃えている。
だけど……
本当にいいんだろうか?
夫に対してでは無く
カレに対して。
カレの……若いクセに不遜な態度は……そのスマートなエスコートに裏打ちされているから、それだけで私をゾクゾクさせる。
そう!
こんな男にこそ!
私は抱かれたい!!
だからカレにみっともない思いはさせたくないから
私は自分のお財布の中にあった一万円札をそっくりカレの上着のポケットへ移した。
これで貸し借り無し!
彼を思いっきり抱けるし抱かれる事ができる!
トクトク鳴る胸の鼓動を鼻歌で宥めながら
ベッドの上に身を投げていたら
シャワーから上がった彼が……キスをしながら私のバスローブの紐を解いた。
そして、バスローブを脱がせたカレが私のふくらみを嬲った途端、
私は叫び声を上げていた。
ああ!!
もう!!
とことんまで
カレに
絡み付きたい!!
こうして私の胸の内に
『狂愛』が生まれた。