自分の考える道
所変わってアジトでは
滝さんは牢獄の中手首に縛りつけられた縄を隠し持っていた小刀で斬り、意識が一瞬通常の滝さんに戻った
「……ったく、こんな縄簡単に外せるよ 俺の身体、完全に敵にされちまったな…」
傍にあった全身鏡を見てぼそり呟く
「逃げてえよ こんな所から」
滝さんは牢獄から抜け出し、少し離れにある開けた場所へ移動した
「滝!」
「ジャヤ様?」
滝さんが振り向くと、後ろには…
「お前は…」
「久しぶりだな、滝」
<挿絵>
「お前は、トヴァース!!」
その人は、貴明さんの生まれ変わりである、トヴァース、と名乗り出る男であった
「そんな…どうして!? なんで俺がいる場所が分かったんだ!?それも、司令官のいる世界から!!」
滝さんは動揺していた
「ちょっとやばいことになってな お前さんが敵でいられると、俺も仲間と戦わなきゃいけなくなる 生まれ変わりだからな そんなことは、絶対に避けたい」
「でも…」
トヴァースさんは必死に説得するが、滝さんは躊躇う
「いつもと様子が違うぞ、いつものお前ならとっくに戦っているだろう?敵と シルヴァから既に話は聞いてる、 敵の身体になったら、お前が困るんだぞ」
「でも、俺は…」
トヴァースさんが説得している中、マト・ジャヤは来てしまった
「牢獄にいないと思ったらこんな場所にいたのか ここは私の力を蓄える場所…アジトの中心部だ 私の力でこのアジトは成り立っている おや、君は」
トヴァースさんは武器の槍をジャヤに突き出す
「滝を返せ!!」
「トヴァース!!」
「君は誰だ?」
「俺は貴明の前世の生まれ変わり、トヴァースだ!! 滝を返してもらうぜ!!」
ジャヤはニヤリと笑う
「君もかなりの能力の持ち主だな よくここで立っていられる 私の力の部屋なのに、力を吸い取らないのか」
トヴァースさんは滝さんを庇う
「滝!!なんでジャヤに逆らえないんだよ!!お前が倒さなきゃ、司令官のいる世界は大変なことになっちまうぞ!!」
「トヴァース…ごめん…俺は、ジャヤ様の言うことを、聞かなきゃならないから…」
「滝…!?」
滝さんの得意武器は棍棒、しかし、能力者には殺傷能力が高いナイフをトヴァースさんに向ける
「お前、マジか?」
「ああ…たとえ親しい仲間でも、俺の役目なんだ 殺さなきゃならない」
「なんでなんだよ!!」
トヴァースさんの槍と滝さんのナイフが暴れ回る
ジャヤは愉快に笑いだした
「ふ、はははは… 仲間同士が対立しあう、 貴明の悲しみを、お前らにも感じさせてやるよ」
「こいつ…こいつさえ、倒せれば… 滝、目を覚ませ!お前は蒼山滝、蒼山貴明の息子だ!!」
滝さんは敵に操られそうになったが、トヴァースさんの言葉で意識が元に戻った
「俺は…蒼山貴明の息子…蒼山…滝…」
「ちぃぃっ!!滝、能力者が憎いんだろう!?親父を殺した能力者が憎いよなあ!?」
「ジャヤ…てめぇ…」
トヴァースさんはジャヤの腹を拳で殴った
「ぐはっ!!」
「トヴァース…もういい」
「滝!?」
滝さんは項垂れていた身体をゆっくり起こした
「確かに考えてみれば、俺は親父の仇を取りたくて能力者になった 能力者戦争を引き起こした能力者を倒したかった だから、カルテー二達を倒した」
「なにを言っている貴様」
滝さんは胸ポケットにしまっていた通信機を取り出す
「でも、トヴァースや俺の仲間たちは、少しでもこの能力者が生まれる世界を、街を、よくしようと動いている!俺はトヴァースを、みんなを、傷つけたくない!!」
滝さんは完全に元に戻っていた しかし
滝さんの正義感溢れる言葉に、ジャヤは激怒した
「ふ…笑止!!」
ジャヤはトヴァースさんと同じく、滝さんの鳩尾を殴った
「かはっ…」
「滝!!」
「人間なんだろう? 鳩尾が急所なのは知っているよ」
滝さんはジャヤの攻撃でよろめいた
その隙に、滝さんは通信機で仲間を呼んだ
「なあ、トヴァース…」
「どうした?」
滝さんは若干痛そうだが、苦し紛れにニヤリと口角をあげてトヴァースさんに訊ねる
「仮に俺が、同じ仲間の能力者同士戦ったらどうなるんだ?」
「…永久追放だな 喧嘩はいいが、相手が死ぬまで争ったら逮捕か追放だ」
トヴァースさんは怪訝そうな顔で話す
「そうはなりたくないなら、大人しく私の元で戦うんだな 私は自分の部屋で一息ついている お前はその間によく考えろ」
ジャヤはテレポートを使って自室へ戻った
アジトで滝さんが追い詰められている頃、俺たちは純さんの案内で陽仁さんの家で作戦会議をしていた
「陽仁、滝を助けて欲しい!」
「純…」