全員の帰還
「終わったのか…なにもかも」
とりあえず今自分が今どこにいるのか、今はいつなのかを確かめた
「現実世界だ…俺が急に旅出された日にちと合ってる 間違ってない…良かった…」
滝さんは一息ついて、自分の携帯を確かめた
「うーん、とりあえず智嬉に連絡しようかな」
いつも通りに連絡すると
『ああ、滝か!見事に帰還できたみたいだな!俺たち!』
「智嬉か!無事だったんだな!」
『みんなはもう能力者施設の中にいる!』
「なんだって!?施設が残っているということは、また戦いが?」
智嬉さんは少し沈黙した
『とりあえず、来て欲しい お前が来たらなにか分かるかもしれない』
「…分かった」
さっぱり分からない滝さんだったが、前にいた能力者施設がまだあるという時点で不安になりいても経ってもいられなかった
(そういや圭介はどこへ?)
自分の弟がいるかまず確認しに1階の居間へ階段を駆け下りた
「圭介!いるのか?圭介!」
辺りを見渡すと誰もいなかった
「えっ… これはどういうことなんだ」
もう一度ゆっくり見渡すと、居間のテーブルに置き手紙がおいてあった
滝さんは迷わず手に取る
"兄貴 これを読んでいるということは、目覚めたんだと思う"
「ああ」
"俺は一旦、能力者施設が残っているか見てくる それと、俺は兄貴より一足先に現実世界へ帰還した 心配はいらないよ 身体も異常なしだ"
「圭介…良かった…」
(だけど、光の洪水の中にいる時、親父が目覚めた気配がしたんだけど… )
手紙を強く握りしめて、滝さんは自分の車で能力者施設へ走り出した
「またなにかあったら怖いから、車でいくか」
滝さんから能力者施設への距離は、そう遠くはない しかし前回車なしで能力者施設へ歩きで向かうと敵に狙われてしまったのだ
「本当にあったな……能力者施設」
滝さんは車から降りて、駆け足で施設の中へ入った
すると……
「み、みんな!!?」
「おかえり!!」
能力者の仲間だった人数、10人程集まり、みんなで滝さんを出迎えた
「無事だったのかみんな!!」
「滝……よく、よく現実世界に帰ってきた!!」
「兄貴、本当にありがとう 俺たちを復活させてくれて」
久しぶりに見たみんなの顔に、滝さんは涙を浮かべた
「……っ!!!」
俺も、滝さんを出迎えた1人
俺も光の洪水の中で、ただ生きることだけを願った
「滝さん…俺たち、帰ってきましたよ」
俺は恐れ多くも、滝さんの泣いている背中を優しく抱きしめた
「ああ、ああ…帰って、これた!!」
「しかし能力者施設まで残ってるなんてなあ、また戦いが始まんのかよ?」
純さんも体に異常はなく無事だった
するとみんなで話し合っている中、後ろから声が聞こえてきた
「その可能性はない」
「誰!?」
みづきさんも無事に帰還していた
足音の主は……
「親父!??」
蒼山貴明さんであった
「皆無事に帰ってこれて、本当に良かったな 滝、みんな、本当に平和を取り戻したのだ」
「貴明さんが……亡霊じゃない…!?」
「私は、実体だよ 確かに私は1度死んだ けれど、シルヴァがいた世界で私の身体をコールドスリープにさせたようだな おかげで体は無事だった シルヴァが魂を復活させたのだ」
貴明さんの話を黙って聞いていた滝さんは号泣していた
「うわあああ……!!!」
「滝…」
傍にいた智嬉さんは優しく滝さんの背中を撫でる
「それで、貴明さんのことは信じるにしても、シルヴァさんは?」
瞳さんも無事だった
「ああ、シルヴァはもう目覚めないよ 本来、もう生きていけない体だったからな 私が現役で戦っていた時から既に」
圭介さんはその話を聞いて驚く
「じゃあ、やっぱり、司令官は亡霊のまま、ずっと能力者施設にいたってことか?」
「亡霊に近い透明人間、みたいな… 父さんも詳しくは分からないのだ」
貴明さんは号泣している滝さんの傍にいく
「滝 思う存分、私を殴ればいい 私は、君たちに散々迷惑を掛けてしまったのだから」
「……親父…それは違うよ」
「滝?」
滝さんはゆっくり顔を上げながら父親に話す
「親父がやりたかったことって、自分の力で平和を取り戻すことでしょう?」
滝さんに言われて貴明さんは動揺した
「なっ!!」
「光の洪水に飲まれた時、俺も平和を取り戻したかった 自分に親父の力があるんなら、その力で、平和を取り戻したかった 親父の力は憎まれる力なんかじゃないって、示したかった」
貴明さんは涙を流した
「滝…お前…」
「最後に死神が現れたのも全部分かってたよ けれど… ただ祈るしか出来なくて ごめん」
滝さんは深々と父親に頭を下げた
「君たちを幾度も危険な目に遭わせて、本当に申し訳なかった」
貴明さんは俺たちに向かって土下座した
「これだけでは足りないのは重々承知している」
「なあ、貴明さん、本当に敵は来ないのか?」
純さんはあくまでも普通通りに接していた
「あ?ああ もう私とシルヴァで死神を封印したからな、もう襲っては来れない」
「じゃあ、この能力者施設、取り壊しましょう、また戦いが来るんじゃないかって思えて、嫌だ」
みんなは賛同していた
「よし……今日は皆解散! リメンバーズチームは残ってくれ!」
滝さんの号令で、俺は一旦滝さんとはさよならした
「大胡」
「はい?」
「俺たちと一緒に戦ってくれて、ありがとう あとのことはこれから俺たちが決める」
「……また会えますか?」
滝さんは優しく微笑んだ
「ああ…願っていればきっとな」
「必ず、会える気がします 俺は信じてる」
「……大胡」
俺はまさしくこれから帰ろうって時に、滝さんは一声かけた
「はい?」
「能力者に向いてるか、って純に相談したんだってな」
「え?」
「……能力者になんか、もうならないほうがいい、俺たちは、戦わなくていいんだから」
滝さんの答えに、少し胸が熱くなった
「……はい!!」
そして俺たちは、一時解散した
「滝 能力者施設を取り壊す前に、話したいことがある」
皆がいなくなった後貴明さんは重々しく滝さんに話す
「……なんだよ」
「お前たちのその後について、だ」
滝さんは体が固まった