親友のお互いの想い
「うーん、困ったなあ」
智嬉さんはシャワーを浴びていた
<挿絵>
(こういう時、誰に相談すればいいんだよ 俺は!!)
智嬉さんは、滝さん一筋だった
滝さんの周りにはいつも誰かが傍にいて、話すのはその誰かであった
智嬉さんには、滝さん以外相談相手がいない
(仕方がない、純と圭介に相談するか 滝が敵になったの知ってるかもしれないが)
智嬉さんと純さんはあまり仲はよくない
しかし、いざという時は協力ができる仲だという
(別に敵になったんだから、リメンバーズ全員呼んでもいいのか リーダーになってから、立場が分からねえ…)
少し湯船に浸かって目を閉じた
「こういう事は、司令官に相談するか あいつなら、きっとやってるし」
意を決して、私服に着替え司令官室へ駆け足で向かった
司令官室――
「司令官!いますか?」
ドアの離れた向こう側に、司令官の声がした
「ああ、智嬉か 入りたまえ」
「失礼します!」
ガチャ…
「なっ、司令官ご飯まだだったんですか?」
司令官のデスクにはお椀が見えた
「透明な身体でも、腹は減るんだよ で?聞きたいことって?」
「……食事中すいませんが 滝が敵になったこと、俺の仲間全員に話してもいいですか?」
「うーん」
司令官は口をティッシュで拭きながら話す
「リメンバーズ全員に話したほうがいいだろ お前にも都合がいいしな あとは、圭介はもちろん、陽仁… 陽仁には、私から話すよ」
陽仁…… 佐々本陽仁 元能力者
佐々本陽仁は、滝さんを暗殺しようとしたが智嬉さんが阻止した相手だった
今は滝さん達に協力している
能力者を止めてから、大学生として暮らしている
「ありがとうございます」
「そっか、お前は滝一筋だったからな 誰も相談相手がいなかったんだな」
「ぐっ…」
智嬉さんは苦い顔をする
「智嬉は戦闘ジムで教えてたんだろ? 1人ぐらい話せる相手はいないのか?」
「……木之原しぐれ」
低い声でぼそっと答えた
「しぐれか しぐれも陽仁の仲間だな」
「しかし、あいつが今何やってるか分かりません! 全然連絡もしてなくて!」
司令官はクスッと笑う
「私が話すから大丈夫だ」
「すいません…なにもかも」
「お前が謝ることじゃない …智嬉、辛いか」
「えっ?」
突然司令官に聞かれ混乱する智嬉さん
「親友、滝が敵になって いつも傍にいたやつがいなくて」
「……っ!! 辛いですよ… けど、1番辛いのは滝です 幸せに暮らしていたのに、突然敵が襲ってきたんですから 」
「貴明の力を狙っているんだよ 能力者をやめても、滝の身体の中にはまだ力が残っている 滝が幸せになることで、恨む敵もいるのさ」
智嬉さんは顔を下に向ける
「終わらせなきゃ、いけないですね… 戦いを…」
「滝が敵になれば、私の仲間のトヴァースにも影響が出る だから早く決着を着けたいんだ!」
「生まれ変わり、だからですか?」
「ああ だから私はコールドスリープしてはいけないんだよ 誰が未来を守るんだ」
智嬉さんは、そうして司令官と打ち合わせをした後、自室に戻った――
(滝の好きなところは、沢山ある 勇敢で、誰よりも仲間思いで、 強くて…)
智嬉さんは部屋の片隅にあるサイドテーブルに飾ってった1枚の滝さんと智嬉さんが映った写真を手に取った
「……辛いよな、滝 俺も辛いよ お前がいなきゃ、俺はなにも出来ない」
ベッドに腰掛けて、うずくまった
(朝になったら、リメンバーズ全員に声かけなくちゃ 瞳に言い難いなあ…)
その頃アジトでは
滝さんはやはり通常通りになったり、敵になったりと不完全なままの状態であった
「お前、私の配下になるか、そうじゃないかハッキリしろよ」
ジャヤは滝さんの胸ぐらを掴む
「俺にも、どうしたらいいか分かんねえんだよ…っ!!」
(親父の力が強くて、まだ抵抗する力があるのか…)
「ふ、まあいい」
ジャヤの力は強く、滝さんは離れた途端むせた
「ゲホッゴホッ!!」
「抵抗するのは無駄だ お前もいずれ、私がお前を殺す
」
「……っ!!」
「私に反抗したら、お前を殺す 能力者が憎いんだろう? こんな戦争を引き起こした能力者が憎いだろう? 私の言う通りにすれば、終わるさ この戦いは」
滝さんの目は、悔しさのあまり目が涙でいっぱいに溜まっていた
「くぅっ……っ!」
「貴明の力を解放したくなかったら 私に従え」
滝さんは敵になったからといって、自由になったわけではなかった
用事がない時は牢獄の中にずっと閉じこめられている
(…… なにも出来ない… 助けを求めることも…)
牢獄の中で、涙を一筋流していた