蒼山滝との戦い
「久しぶりだな 司令官」
「お前…本当に、滝、なのか?」
司令官は恐る恐る近づく
「ああそうだよ あの頃と変わらない、俺だよ」
滝さんは躊躇いもせずに短剣の刃を司令官に突き刺す
「それは、剣じゃないか!お前があれほど嫌だった武器!!」
「ああ…これなら、どんな能力者でも殺せるって言われたんでね… どんなに世話になった司令官でも、俺は司令官を殺す!!!」
滝さんの目は正気だった
「待てよ!!」
慌てて走って前に出たのは智嬉さんだった
「智嬉っ…」
さすがに、親友が現れると途端に迷いが出る
「司令官を倒すなら、俺が相手だ!!長年親友としてやってきたが、残念だな 滝 お前を倒さなきゃいけないなんて」
「……っ!!!」
滝さんは振り上げた剣を床にゴトン、と投げた
「滝?」
「俺は……俺は…っ!!」
滝さんは両腕で頭を抱える
「滝!?」
智嬉さんは心配して顔をじっと見る
「来るな!! 俺は…思い出したくない…!!」
「滝… 」
すると、智嬉さんと司令官に囲まれたまま、滝さんは床に座り込んでしまった
「これは一体どういうことなんだ…」
智嬉さんがぼやくと、敵が現れた
「だらしがない、それでもお前は、能力者最強の戦士か!!」
敵を目の前に、司令官は対抗する
「能力者である前に、人間だ」
「なっ貴様は…」
司令官は滝さんを抱えながら、敵を睨みつける
「私はこの子たちの司令官、シルヴァ・トラーズ はるか未来の人間だ 貴様がマト・ジャヤか?」
「……シルヴァ…トラーズ…カルテー二様を倒した者…」
智嬉さんは嫌な予感がして、構える
「敵なら容赦しない!!"氷拳"!!」
智嬉さんの技で、辺り一面氷漬けになり、マト・ジャヤにも足止めをした
「これはっ…」
「この施設を守るのも俺の役目 滝がいない今は、俺がリーダーなんだよ」
「小僧が生意気な 滝!! なにをしている!!能力者が憎いんだろう!!やれ!!」
マト・ジャヤのレーザー光線のような技が滝さんの体を貫き、ゆっくり立ち上がった!
「……はい、マト様」
「滝…お前、本当に敵になる気か…」
「俺の目的は、貴様らを殺すこと マト様を攻撃したお前、許さない」
<挿絵>
智嬉さんに危害が及ぶと思い、俺は慌てて智嬉さんの体を庇う
「バカ!!死にたいのか!!」
「智嬉さんも死ぬ覚悟なら、俺も、死ぬ覚悟で戦いますよ」
「大胡…」
滝さんが落とした短剣を俺は拾う
「この剣で、あなたを殺しますよ」
「ふ、ふふ…やれるものならやってみな」
滝さんは身体から信じられないぐらいの大量のオーラが全身から溢れ出し、手のひらを天井に向けて翳す
「滝…本当に悪に魂を売ったのか…」
「死ね、能力者!! "黒闇風牙"!!」
滝さんが叫ぶと巨大な竜巻が生まれ、俺たちを襲いかかってきた
「"夜光鉄剣"!!!」
短剣が光り、滝さんを刺した! と思ったが
間に割って出てきた司令官を刺してしまった!
「し、司令官!!」
「大丈夫、私は無傷だ 実は私は透明の身体をしているんだよ 滝…お前本当に、それでいいんだな」
「ぐっ…!!」
司令官はフードコートの帽子をとった
肩の長さまでぐらいの、綺麗な銀髪をしていた
「滝…本当にいいんだな」
「なにを躊躇う必要がある!!滝、やれ!! 上司だろうが構うな!!」
「……っ… マト様、まだ殺すには早いですよ」
滝さんは敵の傍に近づいていく
「滝…っ!!」
「十分楽しんでから、殺しましょう、まだ死ぬには惜しいですから」
「それもそうだな」
そうして、ロビーの階段にいた2人はテレポートで消え去った
滝さんの出る言葉は、自身の本音なのか、操られているからなのか、俺には分からなかった
「くそっ… なんで… 滝…っ!! 」
「……滝は完全には操られていないな 早く取り戻さないと、あいつの身体は、手遅れになる」
俺たちがそれぞれの持ち場へ戻ろうとすると、智嬉さんは立ち止まっていた
(必ず…助けるからな…滝…お前が俺を助けてくれたように…俺も…)