あの時の苦しみ
「またしても失敗か…」
アジトでは、着々と作戦を練っていた
「あの蒼山滝ってやつ、かなり強いな 仲間が死ぬと分かっていても尚我々を倒そうとしている」
テックがそういうと、ケレザが隣でイラつきながら話す
「実の父親を殺したという我々の存在を恐れないだなんて、忌々しい…!!」
「四天王の1人、ルイを倒しただなんて…貴明がなぜ恐れたか、あいつに思い知らせる必要があるな」
レスは椅子から立ち上がった
「レス、お前、滝を殺す気でいるのか?」
「ふん…あいつは精神面が弱い 仲間を殺してしまえばまた貴明のようになるだろう」
「だが、あいつらには司令官っていう強豪が!!」
事前に見ていたテックが声を上げる
「そいつを叩いてみるか 貴明の時にはいなかった司令官っていう存在だな」
「貴明の時は、束ねる人材がいなかったしな」
レスがそういうと、テックはニヤリと口角を上げる
「ふ、それが弱点か…リメンバーズ!!」
テックはテレポートで能力者本拠地へ向かった
集中治療室
「しかし、すごい力だな司令官の力は」
司令官は少し休むと、話せるようになっていた
滝さんは治療室へ戻り司令官の様子を見ていた
「ロダ様に教わった技だ 直伝の技だよ」
「そんなに向こうの世界では、力が強いんですか?」
司令官は医療ポッドから上半身をゆっくり起こす
「貴明がいた頃は、私と貴明、トヴァースで国王ロダ様を守る役目をしていた そんな中で私は治癒術を操る役目をもらった 極めて重大な役割なんだ」
「まあ、死にかけの人間を目覚めさせる技ですからね」
トヴァースさんが治療室の別室から戻ってきた
「たとえ強い仲間の純や智嬉でも、この技は扱えない」
「トヴァースも?」
滝さんは首を傾げる
「俺もさ 強すぎる技を与えられて、自身の力がコントロールできないうちは、まだまだシルヴァの足元にも及ばないよ」
「将来はお前にもさずけようと考えてはいるんだけどなあ」
滝さんはそんな話を聞いて顔を下に向けた
「そんなに力が強いのに…あの時、親父を守れなかったんですか…!!」
「滝…?」
「世界が、この国が消滅してもいいのか?」
「!!」
司令官は自身の手を見つめて滝さんに話す
「私の力は、ロダ様の結界があるからいくらでも向こうの世界では力を出せるが、この世界では私の力は大き過ぎるんだ コントロールできなくて、この世界が消滅してしまう程の力を私は持っている それでも、貴明が死んでも、世界が滅んでもいいと?」
司令官がそういうと、滝さんは勢いよく立ち上がった
「大切な人を守るためなら、それでも、俺なら戦っていました!! 」
「!!!」
滝さんは遠くを見つめて話す
「今も、ずっと後悔しています 今戦っている敵は、親父が倒せなかった最後の敵でしょう? 俺が… 倒さなきゃ誰が倒すんですか… 司令官も、トヴァースも、この敵を倒さなきゃきっと後悔する…!!」
「滝…お前…」
司令官は滝さんを強く抱き締めた
「!!」
「そうだな… 私は…いつだって逃げてきた… 辛い状況から逃れたかった… けれど…こんなに仲間がいるのに、なにを恐れよう…」
「司令官…」
すると天井から声が聞こえた
「ふはは!!辛い状況から逃れたいか!! なら、今お前らを倒す時が来たな!!」
「誰だ!!」
四天王の1人、テックがテレポートで現れた
「四天王…!!」
「親父を返せとは言わないけれど、せめて俺の力で倒す!!」
滝さんは武器を持たず、素手で構えをした
「ふん、この状況で言えるかな?」
テックは能力で後ろにあるモニター画面からアジトを映し出し、敵に捕まってしまった俺と、陽仁さんの姿を見せた
「大胡!!」
「陽仁!!」
「強い仲間が沢山いるだと? この状況でよく言えるな シルヴァ・トラーズ」
テックは憎悪に満ちた表情で話す
「そうだったな お前達は、そうやってあの時も貴明を苦しませていた!!」
「司令官…ごめん…ごめん…!!」
滝さんはなんともいえない感情が溢れ出ていた
「畜生…許さない!!"天華乱舞"!!」
トヴァースさんはテックに技を仕掛けた
「ダメだ!!ここは治療室だ!! そんな技を放つな!!」
「どうすりゃいいんだ!!」
テックは後ろを振り向いた
「さあて、まだまだ仲間がいるはずだな そいつらを捕えなければ」
すると遠い場所から、技を放つ声が聞こえた
「"雷拳"!!」
バリバリバリ!!!
テックは電撃を浴びた
「この技は…純か!!」
「遅くなってすいません! 荒井純参上!!」
「お前を殺せば…こいつは暴走する…っふ、ははは…!!」
純さんは咄嗟に滝さんの目の前に走って庇った
「純!?」
「やってみろよ テック やれるならな」
純さんは脅しにも負けない強さを見せる
「純……!!」