それぞれの立場
智嬉さんやみづきさんが眠っている医療ポッドを囲むように、司令官を中心に円になり陣を組む
床に魔法陣が生まれた
「"我の最大秘術…治癒魔法…皆の体、傷を癒し、再び力を!!"創傷治癒!!」
司令官が技名を唱えると、2人の体が光だし、暖かい空気に包まれた
「これが…司令官の力…」
純さんはポツリと呟いた
「すごい…司令官の力は、こんなにあっただなんて…」
圭介さんも驚いていた
しかし、浮かない表情でずっと見つめていた者もいた
滝さんだった
「……っ!!」
その様子を司令官は勘づいていた
すると、智嬉やみづきさんが自然とゆっくり上半身の体が起き上がった
「智嬉!!」
「みづきさん!!」
純さんと圭介さんは喜んでいた
「……これは一体…」
「体が、綺麗になってるわ…」
喋れるようにもなっていた
その様子に、司令官は大きく深呼吸をし、安堵をしていた
「良かった…本当に良かった…」
バタン!!
そういうと、大きな音を立てて司令官は倒れてしまった
「司令官!!」
トヴァースさんは慌てて司令官に駆け寄ると
「大丈夫、力を使い過ぎて気を失ったんだ みんな…シルヴァに力を注いでくれて、ありがとう!!」
「大きな負担になる技だったんだな、だから俺たちに力を貸して欲しいって言ったのか…」
滝さんは不安そうに話した
「なあ、兄貴ちょっと話がある 司令官はトヴァースさんに任せて、1度サロンに来て欲しい」
不安そうな滝さんを他所に、構わず圭介さんは話しかけた
「!!」
「じゃ、智嬉とみづきは俺が面倒見るよ」
純さんは医者でもある
こういう時に頼りになるのが純さんだ
「……?」
「どうした大胡、さっきから周りを見渡して」
トヴァースさんが俺に近づく
「あ、はい、陽仁さん見かけないなって」
「それなら、智嬉の代わりに、諜報員としてアジトに向かってるよ 」
「そうですか…俺、連絡が来ないから心配なので、通信します!」
しばらく連絡が来ないことが不安で、まさかということもあるので俺は1度テレポートで自室に戻り通信をした
「もしもし、陽仁さんですか!?大胡です!!」
すると、普通に通信が繋がった
『お?その声は大胡か』
「あれ、今どこにいるんですか」
『アジトの中にずっといたら捕まっちゃうからな 今はアジトを観察できる近くにいる』
陽仁さんはあくまで場所を言わなかった
「…どこにいるんですか」
『ちょっとした隠れ家っていうか、小屋っていうか お前も来るか?』
今は智嬉さんとみづきさんに対してなにもできない、だからといって単体で四天王に立ち向かってしまえば足を引っ張るだけ ならば選択肢は
「陽仁さん、協力させてください」
『分かったよ、待ち合わせは荒井病院前な そこから近いから俺はテレポートで行く 待ってるぜ』
通信を終わるとすぐに俺は出かけた
出かける最中に滝さんに道中見つかってしまった
「あれ?大胡 どこ行くんだ?」
「滝さん!圭介さんと話し合いしてたんじゃ」
「まあ大したことないよ で?どこ行くんだよ」
滝さんには逆らえず、素直に話した
「荒井病院前です そこに陽仁さんが諜報員として隠れ家で潜んでいる場所があるんで、俺も協力する次第です」
身構えながら俺はそういうと、滝さんは肩をすくめた
「俺はあくまでも戦闘員、俺のやるべきことは、敵と立ち向かうこと 仲間を守ること…」
「滝さん…」
滝さんはニコッと笑った
「行ってきなよ 俺は司令官の容態も心配だから、ここにいる なにかあったら連絡してくれ」
「滝さんも着いてくるかと思いましたよ」
滝さんは苦笑いをした
「なあに、諜報員は智嬉もいるしな、俺はその道のプロじゃない 手を出したらいけないのさ 陽仁が待ってんだろ?早く行ってきな」
「……了解!!」
俺はなにかまだ、滝さんが言いたいことがあるんじゃないかと腑に落ちなかった
しかし陽仁さんを待たせてはいけないので、駆け足で施設を出た
滝さんは俺が出ていくのを後ろから見守っていた
(あくまでも俺だけの目的を、考えればいい… 全部背負いこむことはない…分かってるよ圭介、だけど…)
<挿絵>
「俺が、1人で敵を倒したら、済むことなんだよな きっと」
仲間も一時は瀕死状態になったこともあり、滝さんは少し滅入っていた