懐かしい顔、再び
「誰なんだ!?」
その声が聞こえた途端、滝さんは苦しんだ
「う、うう…」
さすがに心配になり、俺は恐る恐る近づく
「大丈夫ですか!?」
「バカ!俺は敵だ!!むやみに近づくな!!」
「…生意気な事言うようですが、まだ、敵になりきれていませんよ」
滝さんはとうとううずくまった
俺は心配して顔を覗き見る
滝さんの声は、時より優しい声色になったりする
それで俺は勘づいた
「くそっ、俺は…本当は敵になんかなりたくなかった」
「あなたの親友、智嬉さんも心配していますよ」
「!! 智嬉を知っているのか!?」
「はい、俺の上司です 」
滝さんはゆっくり立ち上がった
「君は、一体…」
すると、さっき響いた声の主がやってきた
「てめえ…やっぱり来たか…」
再び苦しそうな顔をした
「荒井純だ 久しぶりだな」
長身の男性で、紺色の髪のガタイのいい雰囲気だった
「あんな煙が町中に異常に出てたら、誰だって心配になるだろ 」
「……っ!!」
段々、滝さんの目つきが元に戻っていく
完全に敵になってはいないらしい
「なにがあったんですか滝さん、詳しく話してください!!」
「さっきからいる、君は?」
荒井純さんは、俺の顔をじっと見た
「俺は春山大胡、能力者です 根口智嬉さんに能力者にならないかと誘われて」
「智嬉が!? まだ元気なのか… よし、滝が敵じゃない時に能力者施設へ連れて行こう! 事情を話すんだ!!」
「はい! 」
滝さんは純さんに強く掴まれた腕をいともたやすく振りほどいた
「俺は、まだ話せない!! お前達を傷つける訳にいかない!!」
「滝…っ どうして!?」
「ここで捕まったら、あのお方の信頼に関わる」
「新しい敵なのか」
滝さんは顔を下に向けた
「……マト・ジャヤ様」
「マト?」
「これ以上は言えない!! アジトに戻る!!」
滝さんの通信機から、マトらしき声が聞こえた
『滝、なにをやっている 今すぐ戻れ』
「…すまない、また 迷惑をかけるな」
滝さんのか細い声で、テレポートでアジトへ戻っていった
「滝…くそっ!! 大胡!この事を智嬉に伝えてくれ!!俺もできる限りの事はする!」
「もう一度、あなたの名前を言ってください!」
純さんはニッコリ笑って答えた
「荒井純、滝や智嬉と一緒に戦った能力者だ 今は荒井病院で働いている じゃ、智嬉によろしくな」
<挿絵>
そう言って踵を返した
当たりを見渡すと煙は大分消えていた
「大変だ… 智嬉さんに知らせなきゃ!」
テレポートで能力者施設に戻った
すぐに司令官室へ向かい智嬉さんに話す
「そっか… やはり敵になっていたんだ、滝 純も来たんだな」
「はい、純さんの呼び掛けに、滝さんは少し敵ではなくなりかけていましたが」
「あいつは純とまあ、いざこざがあったんだよ 過去にな とりあえず、お前は無事で良かった」
司令官室で話していると、雅人も戻ってきた
「大丈夫か! 帰りが遅いから心配したよ!」
「雅人! 」
「危なくなったら、すぐ連絡してくれよ 俺もいるんだから」
俺は涙が出そうになった
「大胡?」
「いや、同じクラスにいて、話もしなかったやつにこんなに心配されるんだなって 捨てたもんじゃなかった」
「大げさだよ 智嬉さん、俺も、戦う決心がつきました」
智嬉さんは優しく笑う
「そうだな、じゃあ能力者になるには、あの方を呼ばないと… 私じゃ能力を伝授できないんだ」
「なんですって!?」
智嬉さんはキーボードでしばらくカタカタと鳴らすと、モニターから1人の人物が現れた
『智嬉か お疲れ様、私になんの用かね』
「司令官!お疲れ様です!新しい仲間が出来て、その人達に技を伝授してくれませんか!」
すると、智嬉さんのいる右手に眩しい光の柱が現れた
「うわああっ眩しい!!」
俺と雅人は慣れていなく、腕で目を隠す
現れたのは、白いクローク姿の人物だった
「司令官!」
「ここに来るのは…懐かしいな…よく、守ってくれた 智嬉よ」
「コールドスリープ中申し訳ありません!!」
司令官はクスッと笑った
「いやあ、なに 眠るならいつでも出来るよ それより緊急なんだろう?」
司令官は俺の顔を不思議そうに見る
「初めて見る顔だな 名前は」
「… はじめまして、春山大胡です」