リーダー交代
「なあ、智嬉 食い終わってからでいいんだ 大事な話があるんだけど」
「なんだ?」
「一緒に司令官室へ来てくれないか、あと新しいメンバーの大胡も」
「俺ですか?」
俺は一瞬滝さんに呼ばれて緊張して肩が縮んだ
「滝、私たちはこれで失礼するわね 私もみづきさんも仕事があるから」
瞳さんは申し訳なさそうな顔をした
「ん?ああ、悪かったな、今回は…急に呼び出したりして」
「あなたも、戦えないのなら無理しないで 戦ったら、また狙われるのはあなたなんだから」
そう言われて滝さんの表情が暗くなった
「ああ…分かってる その事に関係している話を司令官と話すんだ」
「能力者をやめるの?」
みづきさんに聞かれて滝さんはギクッと身体が固まる
「まあ、そのほうが懸命よ 追放はないにしも、また一番に戦場に出れば狙われるわよ」
「分かってる…」
「悲しむのは瞳さんや私たちよ あなたが死んだら」
「みづき、お前やたらと滝に絡むな?」
横から急に入る智嬉さん
「久しぶりに顔見るし、心配なのよ」
「お前は…絡みづらいな…」
「滝!」
小声でみづきさんにボソリと言い放ち、滝さんは司令官室へ向かった
「言いすぎたかしら…」
「大丈夫 あいつも今回ばかりは身に染みてんだよ 半分抵抗しないで敵になったからな それより、大事な話ってなんだろう」
智嬉さんはあくまでも滝さんを信頼していた
「純は今回いなくていいのかしら」
瞳さんは首を傾げる
「あいつはあいつで忙しいからなあ じゃ、行くか、大胡」
智嬉さんは椅子から立ち上がって俺に話しかけた
「は、はい!」
「雅人」
瞳さんは雅人に近づき話しかける
「なんですか?」
「智嬉をよろしく頼むわね」
雅人は優しい笑顔で瞳さんに答えた
「はい できる限り、守っていきますよ」
瞳さんもみづきさんも、施設から去っていった
司令官室――
「俺は戦えない だから、次のリーダーを智嬉、お前に託したい」
「俺はあくまでもスパイだからなあ…リーダーになっても、いつも施設にいられるわけじゃないよ」
「困ったなあ…」
司令官は困り果てた滝さんを見て、ニヤリと笑う
「そうだな、みづきも瞳もいないよな」
「純はもう、戦えないんでしょう? 唯一リーダーの経験者が…」
「お前純のこと嫌いじゃなかったか?」
司令官に言われ、智嬉さんは首を横に振る
「いざという時は頼りになるやつですよ」
「そうか、まあ純にも交渉してみよう だが今は新しいリーダーを決めている」
「誰ですか?」
司令官に言われテレポートで現れたのは、トヴァースさんだった
「トヴァース!?」
滝さんはびっくりしている
「トヴァース…本当にごめん…あの時は、対立してしまって…」
「敵に操られて俺にふっかけたんだろ?分かってるよ 気にするな 改めて、新しいリーダーに任命されたトヴァースだ よろしく」
トヴァースさんは智嬉さんに近づき握手をした
「滝、戦うのはもう止して欲しい 君の身体は既にボロボロだ なにより、敵の能力が入ったままで戦うのは危険すぎる」
司令官は厳しい表情で滝さんに訴える
「はい、今回ばかりは、瞳と一緒に避難します」
「おや?素直だな」
「みづきにも厳しく言われたんですよ 確かに、俺が死んだら悲しむのは俺の仲間たちだって」
司令官は俺の目を見て
「大胡、すまないが滝1人で行動するのは危険だから、帰り道一緒について行ってはくれないか」
「俺が!? 」
滝さんはニコッと俺に向かって笑う
<挿絵>
「そんなに俺の家は遠くないよ、大丈夫だ 」
「了解しました」
滝さんと初めて、2人きり
出会ったのは敵になっている滝さんだったから、初めが初めなだけに話しにくい…
外はあいにく雨が降っていた
施設の玄関の扉を開く
「滝さん?いきましょう」
俺は傘を滝さんに渡す
「ああ、行こうか」
滝さんの顔をじっと見るとなんとなく、不安になっていた