戦えないのに
「純!久しぶり!」
「トヴァース!! よく滝を連れてきたな!」
滝さんは逃げられないように手錠をかけられていた
「随分物騒なものつけられてるな」
トヴァースさんの近くにいた智嬉さんもアジトから帰ってきた
「これはトヴァースからつけられたんだ! っていうか、なんでお前たちまで!! 俺と戦いたいのか!?」
純さんの予想通り、仲間達が集まると滝さんは動揺していた
「ほらな、言わんこっちゃねえ」
純さんは俺の目を見て肩をすくめる
「戦いたくて仲間を集めたわけではないんだよ お前を助けたくて」
「……無駄だよ 司令官」
すると後からみづきさんも瞳さんも戻ってきた
これで元リメンバーズチームが集結してしまった
「なっ、瞳!みづきまで!?」
「私が伝えたんだよ」
「司令官、これは一体何事?」
「みんな集まってるわね、どうし… あなた、滝…その姿は…」
滝さんは瞳さんに気づかれて罰が悪そうにそっぽを剥いた
「だから嫌だったんだよ こうなるって分かってたからな」
「滝、お前元に戻りたくないのか?」
滝さんの隣にいたトヴァースさんは腰に手を当てる
「みんな集まったから、その話は地下の作戦会議室で話そう 大胡、雅人も来なさい」
「は、はい!!」
これが、リメンバーズチーム…
戦いを幾度も経験した能力者たち
なぜ、また滝さんが狙われたんだろう
今のところ、滝さんは暴れることなく司令官に従っている
まだ姿は敵のままだ
「全く、その姿じゃ話しにくいな 元に戻れないのか?」
「ジャヤ様に殺されますので」
「滝… 俺たちを本気で殺す気か?」
<挿絵>
智嬉さんは滝さんを心配している
「嫌だ!!親友の智嬉、ずっと傍にいてくれた純、いつも支えてくれた瞳とみづきを…殺すなんて!!」
「敵になったのはなぜだ」
司令官はあくまでも優しく問う
「ジャヤ様に殺される…逆らったら… 」
滝さんは頭を抱えて震えていた
「どういうことだ?」
「ジャヤに脅されて敵になったのか?」
智嬉さんと純さんも首を傾げていた
「嫌だ、お前達を殺したくない!!仲間と争うなんて!! 俺には出来ない!!」
「滝…お願い、話して? なにがあったの?」
瞳さんは椅子から立ち上がって滝さんの肩を触った
「……瞳も分かっていただろう? 俺が敵に攫われたあの日を」
「ええ、私は作業中だったから分からなかったけど、突然いなくなったわね」
「ああ…俺は、戦い終わって平和な日々を過ごしていた けど、1年前、ある日突然ジャヤが俺の家を尋ねてきた」
滝さんの目つきは、敵だからか目つきが悪かったのだが、自然と以前の滝さんに戻っていった
「俺はジャヤと戦いたかった けれど、ジャヤはこんな事を言ってきた」
――回想
アジトにて
「滝、お前は能力者戦争で亡くした父親がいるな? 」
「だからなんだよ」
「憎いよなあ、能力者戦争でなんの罪もない人が殺されるのは」
「……お前…」
ジャヤはニヤリと笑う
「お前は幸せに暮らしているが、心の底では能力者を憎んでいる、親父が倒れたのを、ずっと気にしているんだよなあ?」
「違う!! もう俺には戦う力なんてない!!それに、もうこれ以上罪のない人達が能力者の戦いで死ぬのは嫌なんだよ!!!」
ジャヤは滝さんの額に指先で力を与えた
「なにを…っ」
「力が欲しいなら、いくらでも与えるよ滝 能力者が憎いよなあ? 幸せを壊した能力者が憎いよなあ?」
「……ジャヤサマ…」
――回想終わり
こうして滝さんは、ジャヤに操られてまた戦うようになった
「また戦いが繰り返されるなら、自分が敵になって能力者を倒そうと思ったんです」
「やはり私の考えは正しかったな」
司令官は椅子から立ち上がる
「滝、まだ仲間は倒していないな?」
「はい、まだ誰1人犠牲者は出していません」
「なら罪は軽い お前は、この先どうしたい?」
司令官に聞かれて、身体をビクッと反応した滝さん
「記憶を消して一般人になるか、自分の身体にある能力を消すか 敵に狙われないようにするには、その方法しかない」
「――俺は…」
すると、再び作戦会議室にテレポートでジャヤは現れた!
「愚か者!!!」
ジャヤは滝さんに攻撃を後ろから仕掛けた!
「うわぁぁぁっ!!!」
「滝!!」