信じる勇気
陽仁さんの部屋に着いた俺たちは、変わらず作戦を考えていた
「それで?純はなんで俺を呼んだわけ?」
口調はツンデレ気味だが、初めて会う俺たちにも陽仁さんは優しくしてくれた
陽仁さんは後から話を聞くとコーヒーに凝っており、自分が気に入ってるコーヒーを差し出した
「滝が…敵に操られて、敵になっちまって 俺もみづきも、瞳も、みんな力が出ないんだよ!!だから助けて欲しいんだ!!」
「…俺は能力者界隈から手を引いた 俺のやりたいことを叶えたくて」
陽仁さんは俺たちの目を背けて話す
「陽仁…」
「もう、戦いたくないんだよ!!大学生活を楽しんでるんだよ!!友達も出来てるし、忙しい学校生活してきたんだよ!!」
陽仁さんは強く言い放った
「それにしても、どうしてまた勉強なんか」
「学校生活、中途半端で能力者になったからさ」
陽仁さんがそう言った時、俺は一瞬目が覚めた
「俺も…雅人も、高校始まってすぐに能力者になったんです 俺はまだ、能力者って実感がなくて」
陽仁さんはクスッと笑って
「君は新人だよな? なにもなくて能力者になれたわけじゃない 絶対に君たちにも理由があって能力者になってるんだ」
「……俺は高校生活、ずっと1人でした」
「大胡…」
俺は、陽仁さんの前でひたすら自分の過去を淡々と話した
「俺はずっと1人でした、小さい時両親をなくしまして なにか、争って死んだと聞いているんですが、詳しくは分からなくて」
「親も能力者か?」
純さんは優しく俺に訊ねる
「言われてみれば、いつも父の身体からオーラが出ていたような」
「…いくらなんといおうと、俺はダメだ 戦えない 司令官にも話している」
「そうか…残念だな」
陽仁さんは純さんの顔を見て
「滝は大丈夫だよ、 絶対帰ってくるさ 俺の力なんかなくたって」
明るく答えたが、純さんの気持ちは晴れなかった
「今の滝は、敵に支配されている、逆らえない状態なんだ! 滝の技を俺たちが食らったら…」
「純、滝を信じないの?」
「――!!」
陽仁さんの言葉に、純さんはハッとした
「滝はこれまでも幾度も強敵を倒してきただろ その度に成長してきたじゃないか、それに、純は滝の事が好きなんだろう?」
「陽仁…お前…」
「今は敵に操られて大変だろうけど、俺もできることがあれば協力するから 諦めるな」
陽仁さんは純さんに向かって手を差し出し、純さんはソファから立ち上がって握手を交わした
「ありがとう!」
「滝がいない今、智嬉がいないんじゃ、リーダーがいなくて大変だよな、新人しかいないから、不便だろうに」
その時、俺の胸ポケットにある通信機から司令官の声がした
『その心配はない』
「誰だ!?」
テレポートで司令官が俺たちの目の前に現れた!
「し、司令官!?」
陽仁さんは腰を抜かした
「久しぶりだな、陽仁 変わりはないか」
「は、はい! 」
「君たちのリーダーは今滝と会っているトヴァースが君たちをまとめてくれるようにした 既に手配はしているよ」
純さんは身を乗り出し
「本当ですか!トヴァースなら安心だ!」
「トヴァースって?」
初めて聞く名前に、俺は首を傾げる
「トヴァースは、私が住んでいる国の王を守る能力者の1人でね 貴明の生まれ変わりだ」
「生まれ変わり…」
「まあ、会ってみれば分かるよ 今一旦私の施設へ帰ってくるそうだから 滝と一緒に」
司令官に言われて、純さんは驚く
「えっ!?滝が!?」
「純 お前も来て欲しい 力を借りたい 滝の奪還の為に そして陽仁」
話しかけられて動揺する陽仁さん
「なんでしょうか?」
「君は、君の道を行けばいい 無理して戦う必要はない これ以上…犠牲をだしたくないから」
「俺は…滝の事、いつも思っていますよ 」
司令官は優しい笑顔で答えた
「ありがとう 滝を必ず、取り返してみせる」
俺たちは司令官の力を借りて、テレポートで司令官室に戻った
「力がないのは…辛いな…」
陽仁さんは自分の手のひらを見て、ボソリと呟いた