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第68話 私の、願い


 まぶしい光の中、目を開く。

 そこは暗い闇の中ではなく、何度か来たことのある、白い空間だった。


 白い空間……つまり()()だ。

 ここにいるということは、あの光の中で私自身、消えてしまったのかもしれない。


 まあ、邪神を相手に、五体満足ごたいまんぞくでいられるわけない。

 だからそれは別にいいと思う。


 私は満足していた。

 だって、私と引き換えでも、あの世界を……あの人たちを、守れたのだから。



 ふいに後ろに気配けはいを感じて振り返る。


 ホロホロと涙を流すベルタード様がいた。


 彼の気持ちは、痛いほどよくわかる。


 妹と弟。

 そのどちらの存在も、消えてしまったのだ。


 何百年経っても助けてやろうとしていたベルタード様にとって、悲しくないわけがない。

 それでも、これだけは確認しなくてはならなかった。



「……二人は、行くべきところにいけました?」



 落ちていく涙は止まることなく流れ続ける。

 けれどその顔は、どこか安心したような気配を感じさせた。


 そして、彼はゆっくりとうなづいた。


「……そう。よかったぁ」


 もう辛い思いにしばられなくてよいのだ。

 ちゃんと眠れたのなら、私の役目やくめもまっとうできたということ。



 厄災やくさいを浄化したのだから、あの世界はもう、大丈夫だろう。




「……ふぁ」



 安心したら、急激きゅうげきに眠くなってきた。


 たくされた力を全て使い切ったのだ。

 私にはもう、神の力など残っていない。


 私の力は全て、邪神を、炎神えんじんを救うために使ったのだ。

 もうまぶたをあけている力すら、残っていない。


 ひどく、身体が重い。

 ウトウトと迫りくる眠気にあらがうことなく、横になろうとした。




「――君は、それでいいの?」


 そのとき、ベルタード様がつぶやいた。

 重くなる瞼を少しだけ開けると、地上が見えた。


 ガレキの中で、仲間が集まっている。

 皆必死に、なにかを叫んでいる。


 けれど、その声は聞こえなかった。


 もう聞く力もないのかもしれない。

 ひたすら眠たかった。


 けれど。



「君は、誰の隣にいたい?」


 ベルタード様は静かに問う。


 答えなくちゃいけない。

 ふしぎと、そう思った。



「……」


 少し考えると、すぐに心に浮かんだ人がいた。


 孤独こどくと戦い続けた、気高けだかい人。

 不愛想ぶあいそうだけれど、優しい人。


 そして……人一倍、責任を感じてしまう人。



『エメシア!! 頼む、目をあけてくれっ!』


 悲痛ひつうな叫び声が、聞こえた気がした。



 ……そうだ。

 最後に伸ばされた腕を、掴むことはできなかった。



 だから私が消えたら、あの人はまた苦しんでしまうのだろうな。

 自分を責めて、救えなかったとやんで。


 そうじゃないよ。これはあなたのせいじゃないよ。


 叶うのなら、そう言ってあげたい。

 これからだって、言い続けてあげたい。


 近くに、隣にいて……。





 ベルタード様はそれを見抜いたのだろう。


 ふっと笑って下を指さした。



 そこには大きな木が見えた。

 ゴルンタにあるはずの聖木だ。


 神話では神が聖木せいぼくを伝って降りてきたと言われていたけれど、本当に天界にまでとどいていたようだ。


「君が行きたい所で生きなさい。もうお行き。振り返らずに」


 その言葉を聴いた瞬間しゅんかん、意識が落ちていくのを感じた。


 今はただ、私を呼ぶ声の元に。

 それだけを願って。



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