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第45話 黒いバラと亡霊



 あの襲撃しゅうげきからしばらく後。

 私は一人、迷宮めいきゅうの奥へと進んでいた。


 火の手は見えず、この辺りはシンと静まり返っている。


「ハア、ハア……レナセルト殿下、大丈夫かな……」


 私の方に追手おっては来なかった。

 ということは、レナセルト殿下が食い止めてくれたのだろう。


 けれど相手は5人いた上に、魔術を使っていた。

 一人で相手をし続けるのは厳しいものがあるだろう。


 だから迷宮を素早く抜けて、人を呼びに行こうとした。



 したのだけど……。


 右をみても赤いバラ。

 左をみても白いバラ。


 先ほどから同じような場所をぐるぐると回っている。

 つまりは、完全な迷子だった。



「もう! ここ、どこよ! 早く助けを呼びに行きたいのに!!」


 あせれば焦るほど、余計にどこを通ったのか分からなくなってくる。

 さすがは、侵入しんにゅう防止ぼうしの役割のある庭だ。



 ……そもそも、本当に出られるのだろうか。



「……いや、出られるかじゃない。出なきゃ!」


 私は深呼吸をして、頬を叩いた。

 ひりつく痛みで、少しだけ冷静になる。


「……よし! 待っていてね、レナセルト殿下!」


 大きく一歩を踏み出して、走りだす。




 そして


「ぎゃあう!!」


 ――転んだ。



 足がもつれたのだ。

 ここまで走りっぱなしだったし、その前にはダンスも踊っていたのを忘れていた。


 気力に、足が付いてこなかった。



(もうちょっと、筋力もきたえておくべきだったな……)


 私は地面に寝そべりながら、そんなことを思った。

 こんなときに、動けなくなるとか洒落にならない。



「ん、あれ?」



 そのとき、垣根かきね根本の隙間から向こう側が見えた。


 奥では、白っぽい何かが動いている。

 それは奥の角を曲がって消えた。


 一瞬だったけれど、それは狐のような耳のついた白い仮面のように見えた。


 狐の仮面と言えば……。


 思いだすのはゴルンタの街で見た亡霊ぼうれいさん。

 私を目的地までみちびいてくれた、あの人のこと。


「……もしかしたら」


 今回も、出口までつれていってくれないだろうか。


「……」


 可能性はある。

 けれど、亡霊さんがなぜここにいるのかも気になる。


 ゴルンタでは敵意は感じられなかったけれど、もしも亡霊さんも彼らの仲間だとしたら……。


 ゾクリと悪寒おかんが走った。


 けれど、このまま一人で彷徨さまよっている訳にもいかない。

 早くレナセルト殿下のところに救援きゅうえんを連れて行かなければ。



(……気がつかれないようにいけば、大丈夫かな?)


 可能性があるのなら、かけてみようではないか。


 私は慎重しんちょうにその後を追いかけた。



 ◇



「おかしいな……。こっちにいったと思ったんだけど」


 すぐに追いかけたにも関わらず、亡霊さんらしき人影は見当たらなかった。


 追いついたと思ったら、直ぐに角を曲がって見失う。

 それを何度か繰り返し、たどり着いたのは円形の花壇かだんがある広場だった。


 開けた場所に出たのだから見つかると思のに。


 影から様子を見ていたけれど、人影らしいものはどこにもなかった。

 仕方がなく広場に出ていく。


「あれ?」


 ふと、花壇の奥に光るものを見つけた。


 近寄って見ると、花壇の一部分だけ凍っていた。

 氷の表面にあかりが反射したらしい。


「こんなに暖かいのに、氷? ……あれ、これって」


 花壇には彫刻ちょうこくがされていた。


 見る限りではバラのようだ。

 けれど、なぜか真っ黒にぬりつぶされていた。



 この庭に入る前に聞いた話を思い出す。


『黒いバラを探せば出られる』


 確か、そう言っていたはずだ。

 レナセルト殿下も見つけたことはないらしいけれど。



「……まさか、これなわけないよね?」


 私は何となく凍っている部分をなぞる。


 ――ポチッ


「え」


 何かを押したような感覚だった。

 気が付けば、目の前には地下へと続く階段があった。


 まるで入って来いと言わんばかりに主張しゅちょうするその先には、やみが広がっている。


「……」



 迷宮を抜けられるという、黒いバラ。

 謎の亡霊さんらしき人。

 そして、いつの間にか現れた階段。


 罠の可能性もあるけれど……。


「でも、このままここにいる訳にもいかない、よね」


 私はごくりと唾を飲み込んで、ゆっくりと降りていったのだった。


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