表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

ー第二章ー村からの旅立ち

「はぁはぁ・・・彼らを救うにはまず私が強くならないと」

私は洞窟を走り抜け、そこに広がるのは暗闇の森に降り注ぐ雨。

ぐにゃりと感じる土の軟らかさ。

土が雨で軟らかくなっている。


滑らないようにしないと。

靴は何故か履かずに今がある。


私は村へ続く道であろう道を辿っていく。

明かりは残念ながら持っていないので、ゆっくりとここは地面だという事を確認しながら進む。


(強くなるにはどうしたら良いんだろう?お父さんに聞けば何か分かるかな?)

色々今後の事を考えながら歩を進めていると、急に視界が傾き

体が重力に従って落ちて行く。


「嘘!!・・・此処崖だったのか!!」

下は、深い闇が大きな口を開けている。

先が見えない恐怖を抱きながら、目を瞑った。

数秒後

ドボーンと冷たい湖に落ちる。

下が水であったお陰で、死ぬことは無かった・・・けど


「ああもう!最悪だ・・・服が濡れて重いよ」

なんとか陸に上がり、自分の服を絞ると

沢山の水がビシャビシャと出てくる。


水をある程度出し切った所で、また歩み出した。



――

途中でハプニングはあったが、村の明かりが見える位置まで無事にたどり着いた。

「やっと帰って来た。でも一人の帰宅はなんか悲しいなー」

いつもだったら隣に五月蠅い幼なじみ三人があーだこーだ言ってるのに、今はいない。

ズサーと坂を下り、自分の村へと足を踏み入れた。


寝静まった静かな村を歩くのは斬新だ。


私は自分の家に向かい、持っている鍵で扉を開けて入ると

その音で気づいたのか。

ガチャッと父の寝室のドアが開き

「こんな夜中まで何をしていたんだ?」

と低い声が聞こえてきた。

「お・・・お父さん!なんで起きてるの!?」

部屋から出てきた父は壁にもたれかけ、私に対して鋭い目を向けた。

「第一声がそれか?」

「う・・・ごめんなさい。いやあのこれにはふかーい訳がありまして」


「そうか。で、夜の森で何をしていたんだ?」


「それがふかーい訳の1つで・・・実は」

私は話した。行方不明になったミヤ、魔射、悠と出会ったこと、その後ろに先生と

言われる化け物染みた奴がいる事を

包み隠さず全てを話すと


父は一瞬難しそうな顔をしたのを私は見逃さなかった。

「一旦入れ。ちゃんとその足拭いてからあがれよ」

そう言って先にリビングに入っていった父。

私は落ちてたタオルで足の裏を拭き、リビングへと向かった


ガチャリとリビングのドアを開けると、父は部屋の明かりをつけて暖炉の用意をしていた。

「別に良いのに」

「子共がそんなずぶ濡れで帰ってくるのが悪い」

反論出来ずにいて、私は苦笑いを浮かべた。


部屋が暖かくなった頃。

私は椅子に座り父と向き合った。


「光は、厄災のクラスと希望のクラスを知っているか?」

そう聞かれた時、先生と言われていた化け物の事を思い出す。

「希望のクラスなら聞いた事はある。先生と言われてた奴が口にしてた」

そう言うと父は青ざめた。

「ソイツそんな事まで知っているのか!?」

コクリと頷くと

追い詰めた表情で彼は語り始めた。

「いいか光。厄災のクラスに唯一対抗できる力を持ち静める力を持つ者が希望のクラス。

それに対になる者として、世界を滅ぼせる力を持つ厄災のクラスがある。

それらのクラスは必ずこの世に一人ずつ生まれる、そして何故かは分からないがこのフォースライトの村で全てが生まれ

てこの地で全て完結する。

だから世間に知られる事も無い。なのに・・・」


父は一度目を閉じた。

「今厄災のクラスに該当する者はこの村にいない。つまり俺たちの管理下から離れている。しかも光が言う先生

が厄災のクラスと希望のクラスを知っていると言う事は、ソイツは知ってて、奴らを従えている可能性がある。」

父は目を開け申し訳なさそうに言った。

「奴の目的は分からないが大事になる。あいつらはお前を真っ先に狙うだろう。

理由は・・・・単純だ。お前はその希望のクラスに属する人間だからだ。

そして今まで遊んできた幼なじみ三人は厄災のクラスに該当する者。

お前は・・・いずれあの三人を静めなければならない」


本当に申し訳なさそうに、今にも土下座をしてしまいそうな弱々しい父。

こんなお父さん初めてみたよ。

「分かった。あいつらを・・・・。静めたら良いんだよね?それでもし静められたらさ元の彼らに戻るかな?」

父は私を抱きしめた。

「分からない。それは分からないんだ」


「・・・そっか」


「そもそもお前達の関係が前例に無いんだ。そんな仲が良く最初厄災のクラスとしての機能が低かった彼らとの眩しい日常が異常だった。

今までは希望のクラスが元々強く厄災のクラスも覚醒してお互い同列の力を持ちながらの生まれであり。お互い十分な時にお互いがぶつかり散っていくのが普通だった。」

父は私を離した。

「光、明日この村を離れて、知り合いの族長がいる黒斬(くろきり)の渓谷に行きなさい。

この村に留まるのは危険だ。馬車は用意する。明日の10時頃に此処へ来て貰う

それを乗って黒斬の渓谷に行きなさい」

「一人でですか?」

「そうだ。俺は村長としてこの村を離れる訳にはいかない。事情も話しておく。あそこならきっと

光を守ってくれる。だから安心してそこにいるが良い」

コクリと頷いた。

「・・・・じゃあそろそろ寝なさい」

「うんそうする。今日は疲れた。おやすみお父さん」

「おやすみ、光」

お父さんをリビングに残して私は自室に戻り


ベッドに横たわり目を閉じた。


―次の日―

朝9時30分頃に起床。

今日はこの村を離れる為の準備をする。

でかいスーツケースに、服とか歯ブラシとかの日用品を詰め込んだ。

準備が意外と早く終わる。

「そういえば今日行く黒斬の渓谷ってどんな所なんだろう?んー何処かの旅行雑誌に載ってなかったかな?」

本棚から、表紙が何処かの綺麗な海が飾っている旅行雑誌を取り出す。

ペラペラとめくり探す。

「あ!あった。これだ!」

―黒斬の渓谷―

説明 戦闘民族が住む渓谷。


特徴 三八乃みやの一族が戦闘形態になると黒霧という現象が起き、昼でも夜みたいな暗さになる。


観光 景色が綺麗。川が上流から流れる。桜、紅葉など季節の木があるので、見所の時に行くと異世界に来たみたいな景色を味わえる。


オススメ度★★★☆☆

修行オススメレベルは星5


補足

ゴミはちゃんと持ち帰りましょう。マナーは守りましょう。

じゃなければ、三八乃一族の長に殺されます。

――

「・・・・・」

パタンと閉じた。

まあ楽しみにしておこうと思う。


「そろそろ行かないと」

50分台になったのでそろそろ家に出て、村のゲートに向かった。


10時頃には父も現れた。

ヒヒーン

馬車を引く二頭の馬がゲートをくぐり、私の前に現れた。

「村長さん!時刻通りにお迎えにあがりましたよ!」

「おお!よく来てくれたな!志徒(しと)!」

「そっちが村長さんが言ってたお嬢さんですね!短い時間ですけどよろしくお願いしますね」

ニコッと笑う馬乗りの人。

緊張しながら

「よ・・・よろしくお願いします」

と挨拶をする。

「ではお乗りください!お嬢さん」

私は言われるまま後ろの馬車に乗り込んだ。

中は小さい木造の家みたいでとても落ち着く所だった。

「娘をよろしくお願いします」

「無事に届けますのでご安心を、安心安全の旅をお約束します」

・・・・・。

俺は彼女に向けて叫んだ。

「光!・・・・無事でな!」

私は窓から手を出して、グッドの形を作った。

「お前なぁ・・・最後くらい言葉にしたらどうなんだ!」


「ふふっ!仲が良いですね。では出発します」

ヒヒーン

馬は鳴き、走り出した。


俺は彼女の姿が消えるまでずっと見送った。

周りの村の人達も遠くから寂しくなるなと思いながら見つめていた。

一気に寂しい空気がこの村を襲う中で一人の若者が村長の下へ駆け寄り

「ここでしょげてる場合じゃあないと思いますよ!。彼女も頑張るんです。俺たちも

頑張りましょうよ!ほら、まずは明るく笑顔を作りましょう♪ねっ?」

「そうですよ!村長さん心配なのは分かりますけど、このままずっと暗い空気はダメですよ~」


「そう・・・だな。彼女はあれでも大人だ。俺は・・・少し過保護すぎたな。反省しなければ。では改めて皆今日もよろしくな!頑張ろう!」

無理矢理笑顔を見せて、皆に俺は大丈夫だと伝えた。

「「「おおー!」」」

と元気に返事する村人は長い付き合いである村長の気持ちを察している。

何も言わずにただただ優しい彼を支えるだけである。


―馬車内―

ガタガタと揺れる馬車の中から見える景色をボーと見ながら考える。

私なんかが、彼らと対等に渡り合えるのか。

どうしたら彼らを救えるのか。

答えが出ず力強く目を瞑る。


「お嬢さんお名前は?」

馬乗りさんが聞いてきたので目を開け、急いで

如月 光(きさらぎ ひかり)です」

と答えた。

「光ですか、良い名前ですね!。闇夜を照らす一筋の光。まるで昔話に登場する主人公のよう!」

「???」

理解できずに頷く。

「あはは!ごめんなさい!最後はちょっとした想像です。気にしないで。

あっ見てください!黒斬の渓谷が見えてきました!」

馬車の窓から前方を見ると、高い山が二つ並んでいるの目に映る。

とても険しい場所だ、正直あまり登りたくない。

馬車が止まる。

「はい到着~。お代金はいりませんからご安心を」

「え、この先馬車で行くんじゃないんですか?」

「まさか、さすがに黒斬の渓谷にある村まで行くのは無理です。

とても足場が狭かったり悪かったりで馬たちが行けませんので。でもご安心を

この先を案内してくれる強力な助っ人がもう少しで来るみたいなので後はその方に。では私は次の仕事がありますので。また会いましょう如月さん」

そう言って二頭の馬たちを走らせていった。


ポツーンと取り残される黒斬の渓谷の登山口前。

スーツケースを持ちながらどうしたら良いのか分からずにそこら辺を右往左往していると

「お前が如月光さん?」

「そうですけど・・・貴方は?」

見たところ腰に刀を差していて、頭には小さい黒い羽3つと赤い宝石があしらわれている

アクセサリーがが付いた帽子を着用している男性

が自己紹介をした。

「俺は三八乃一族の族長、三八乃 鍵(みやの かぎ)だ。」

三八乃・・・・あっ確か雑誌に載っていた。

「あ!その名前聞いたことがある。確か、マナー違反した人を殺す人・・・・ですよね?」

恐れながら聞くと彼は真顔で

「殺しはしない脅すだけだ」

と強く訂正し、深いため息を吐いた。

「はぁーやっぱそれ知ってるんだ。本当なんであんな事書きやがったのかねぇあの雑誌特集は!

言ってはおくが俺は無駄な殺生はしない。

それだけは言える。

やれやれ本当に、問題児な雑誌特集だぜ」

彼は怒りというより呆れている。

そして俺は何もしてないのにー。と口を尖らせている。


彼の隣で私は想像した。この人がその刀を持って脅す姿を容易に浮かべられた。

きっと刃をマナー違反者の首に当てて、何か物騒な事言ってるんだ。

想像が膨らみすぎる!

考えれば考えるほどあり得そうな感じの気持ちになる。

(怖いよ・・・お父さん。この人怖い)


それを見た隣の三八乃さんは、目を細める。

「・・・・お前何か変な想像していないか?」

「し・・・してませんよ!」

目をそらす。

隣で疑いの眼差しが私に突き刺さる。

「ふーん・・・・絶対あの旅行雑誌(紙ペラ)の事、真に受けてんだろ。まあ良いや。

俺はお前の事をフォースライトの村の村長から話は聞いている。それでお前の護衛を頼まれたから、これからよろしくな!如月光さん!」

バッチリウインクを決めてくる。

ちなみに私はウインクなんてできない。

だから

「はい!よろしくお願いします!」

と代わりに笑顔と元気な声で挨拶をした。

「良い返しだ。さあ行くぞ俺たちの三八乃村へ!」

「あっちょっと!」

右手を掴まれ手を引かれた私は、心の準備期間も無しにずんずんと黒斬の渓谷の

登山口のゲートの向こうに入っていく。












評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ