第一章ー目覚めー
ああ、地面がふかふかしてる。質の良いベッドの上で寝てるみたいだ。
「うぅ・・・ここは?」
徐々に視界が晴れていき、見覚えの無い景色が目に映るとすぐに意識がハッキリする。
「何処ここ!?」
勢いよく起き上がり周りを見渡す。
ロイヤルに属する家具がロイヤルに統一されて置かれていて良い感じに仕上がっている。
こういう部屋初めてで少し緊張するな。落ち着かない。
「いやそんな事はどうでもよくて・・・・本当に此処どこ?知らない所」
ベッドから降りる。
裸足でぺたぺたと歩き回る。
繋がっているもう一つの部屋に足を踏み入れると、壁で見えなかった扉が姿を現す。
「・・・・逃げないと」
レバーハンドルを下ろし、扉を開けると
今にも扉を開けようとしてた人物達とばったり遇い
お互いに小さく悲鳴をあげた。
「びっくりした・・・良かった君たちか」
「こっちこそびっくりした」
「光・・・目覚めて良かった。魔射が再起不能にしてないか心配だったんですよ」
「俺はそんな下手なことしねぇよ」
ミヤ、悠、魔射、の三人と出会う。
「何の用?」
三人は表情を曇らせて、ミヤは重々しく口を開いた。
「光をここから逃がす。でも条件としてもう二度と僕たちに関わらないでくれ。いやずっと僕達から逃げてくれ!」
「・・・・なんで?」
「とりあえず歩きましょう。先生に見つかってしまいます」
私たちは歩いた。彼らに連れられて。
「俺たちは、何かに蝕まれている。俺たちはお前に純粋な愛を向ける事も出来ないだろうし・・・だから逃げて欲しいんだ」
逃げないといけない理由を残念な事に聞き逃してしまい。
頷く事しかできなかった。
しばらく歩くと、一つの部屋に出る。
「ここ先生の部屋」
「にある、じゅうたんですがめくるとあら不思議、隠し扉があります」
何気ないじゅうたんを悠がめくると、そこには開けられそうなフローリングの色の扉があった。
彼はレバーハンドルを下ろし扉を開けハシゴが現れる。
「ここから下まで降りて」
言われるがままにハシゴを下りた。
「っと」
地面との距離が近くなりハシゴから手を離す。
スタッ
水がポタポタと落ちる土で出来た洞窟に出る。
「そこから真っ直ぐに行くと外に出られる。僕たちはここまで。じゃあね光。さようなら」
上の扉を閉められそうになり、
「待って!ありがとう、ミヤ!魔射!悠!私は絶対に君たちを救いに行くから!」
そう叫んだ。扉の隙間から見えたのは、ミヤの悲しそうな顔だったのを覚えている。
私は出口まで走った。涙をポロポロと零しながら心の中で絶対に戻してあげるからと強く誓って。振り返らずに走った。
「なあなんで俺たち泣いてるんだろうな?」
ポタポタと暖かい涙が地面に落ちる。
「さあ・・・・何も後悔なんてない筈なのに、本当に可笑しいですね」
笑いながらだがしっかり泣いている。
「・・・・・・期待してるよ」
涙を零しながら彼女が行った扉の前でそう呟いた。
「おい!、お前達。希望のクラスは何処にやった?」
全身包帯まみれの男が殺意を彼らに向ける。
「知らねぇな」
「チッとぼけるつもりか。まあ良い。どのみちお前達はどんな手段を使ってでも彼女を手に入れたいんだろ?」
ミヤ、魔射、悠はさっきまでの人格が隠れたみたいに本心でこう言った。
「ええ、そうですね。どんな手段を使ってでも無理矢理手に入れます」
さっきの傷つけたくない思いは、袋でかぶせられたかの様に見えなくなった。何かが私たちの心を蝕んでいる。
「良い返事だ。お前達はただ愛するために、世界を巻き込み、混沌な世界を作り出せ。厄災のクラス達よ。一人の女の為に働け」
「言われなくても分かってますし。初めからそのつもりです」
(どうしてさっき、逃がしてしまったのでしょう?理解に苦しみますね)
先ほどの感情が思い出せない。
「当たり前だよなぁ。ああ、また彼女に会えるのが楽しみだ♪」
(なんで逃がしたんだっけな?一瞬の気の緩みか?)
欲しいはずなのに。得られる機会をみすみす逃した事に、自分自身に怒りを感じる。
「・・・・僕達の愛はどんな道具でも切ることも出来ないという事を証明してみせる。待っててね、光」
本当に・・・・手に入れたい者は無理矢理手に入れるそう思ってもまだ抵抗を感じる。
ああ可笑しいな。何故だろう?まだ何か残っているのか?力に溺れていない何かが・・・
疑問に感じる事はあるがそんな事今は関係ない。
「魔射、悠、僕さ今、凄くわくわくしてる。まるで次の日に楽しみにしている旅行がある前日の日みたいにさ♪」
「確かに、彼女に分からせてやらないとな。俺たち以外の奴は合わねぇてさ」
「それは独占欲が強すぎませんか?魔射」
そんなことねぇよと反論する魔射。
「まあ後は好きにしてくれ、ただ俺の目的が先だ。ついでにそっちで好きにするが良い」
「「「はーい」」」
と渋々返事をした。