序章
森に囲まれた所にあるフォーストライトの村。
そこで村長の娘の光はベッドに苦しそうに横たわっていた。
「げほ・・・げほ」
体が熱いし頭も痛い、これはもう完全に風邪だ。
布団に入りながらうとうとする。
ドンドン
「鍵はかかってない。でも今はダメだ」
ガラ
「なんで?遊ぼうよ光」
窓から語りかける幼なじみの一人暗霊野ミヤ。
何故玄関から来ないのか・・・私には分からない。
「遊びに行きたいけど・・・私今弱っているから。無理」
「ふーん確かに。今なら簡単に襲えそうだね」
「くだらないこと言ってないで帰れ」
「はーい。じゃあ何か体に良いもの探してきてあげるよ」
優しいところあるじゃないか。
「ありがとう」
私を襲う眠気に負けて、目を閉じた。
「風邪だってさ光」
「「知ってる」」
可奈槻 魔射、影攫井 悠は声をそろえる。
「だって今お前の下で聞いてたから」
「右に同じく。それで体に良いもの探すって何処を探すんですか?」
「もちろん決まっている。森に行って探す」
「森って言っても、この村を囲んでいるのは全て森だぜ?範囲が広すぎ問題で迷いそう」
確かに魔射の言うとおり、迷う可能性もある。そもそも村の外に出るには
大人の許可貰わないと。まあ俺たちには親もいないから、関係ないけど。
「・・・・とりあえず歩きましょう。日が暮れてしまいます」
「そだね」「そだな」
俺たちは歩いた。できる限り大人に見つからない様にして、村の外にでた。
「彼女にあげるもの、薬草とか良いんじゃ無いでしょうか?」
「何の薬草だよ」
「悠が言いたいのはきっと、キュウス草じゃない?あれ体に良いみたいだし」
「さっすがミヤ。正解です♪」
「・・・・チッ」
「知らなかったからって舌打ちしないでくださいよー。まあいいですけど」
雑談を交えながら、俺たちは必死に探した。
その薬草を。
愛する彼女の為に。
日が暮れるまで。
たぶん結構深くまできた。
「疲れたー。帰れる自信がねえ」
彼は地面からはみ出している太い木の根っこを椅子にして座った。
「そろそろ帰ろうか」
「結局見つかりませんでしたね・・・うーん非常に残念」
もう帰ろうムードだった時
「少年達、よかったら俺と来ないか?」
「だ・・・誰だ?」
答えを待つ間に俺たちの心は、何かに黒く染められた様な気分になり
まるで今まであったストッパーが外れるような・・・・。
俺たち三人は形容しがたいものを感じながら、膝から崩れ落ち気を失った。
―次の日―
フォーストライトの村
「大変だ!」
「どうしました?」
風邪も治り、いつもの日課の水やりをしている時に
一人の若者が息をきらしながら駆け寄って来た。
「光・・・落ち着いて聞いてくれ。はあ、あいつら三人が森に入ったきり帰ってきてねぇんだ!!」
「!!そんな・・・まさか昨日体に良いモノを持ってくるといってた。まさかその後に何か・・・あったんだ。どうしよう」
「・・・そう不安そうにするな。今村全体で捜索してる。だから光は落ち着いて帰りを待て」
「ありがとう。でも一応私も探してみる」
「おう、だけど無理はするなよ」
「そっちこそね」
二人は話を終えた。
さっきの彼は、森の捜索に行ったみたいで。
私は村長の娘だから、貴重な後継者候補として見られてる筈
だから森に行くなんて言っても許可は貰えないだろう。
「だから夜。その時刻しか行く機会なんてない」
私は明るい内に武器になる物も用意し、夜を待った。
夜
目を覚ます。
私はベッドから出て服を着替えて、昼間用意した槍を手にし
探索に行こうとした時、馴染みのある、窓を叩く音がした。
期待をして、扉を開けるとそこには黒いローブで身を隠した人物が3人いた。
「君たちは・・・・?」
「迎えにきたんだよ。光」
一人の男が上のフードを外すと見覚えのある顔が現れる。
でも一つ違うのは、左の目元に紋章みたいなのがある事。
「ミヤ!てことは・・・その残りの二人は・・・・」
残りの二人もフードを外す。
案の定
魔射と悠だった。彼らにもよくわからない紋章が体の右半分と体の左半分にあった。
「俺たちお前に見せたい物があるんだよ。なあ、悠」
「はい♪綺麗な星空が空に映る姿は一度は見ておくべきです」
幻想的だということは理解したが・・・・。
「なんで帰ってこなかったの?」
「先生が俺たちの居場所をくれたから」
「先生?誰それ?」
「じゃあ会わせてあげる。ついてきて」
三人は窓から離れ、スタスタと森の方向へ歩いて行った。
「・・・・一度先生という人に会ってみようかな」
皆が言う先生が気になり私は幼馴染の後についていく事を決めた。
――
「どこまで行くの?」
「ついてからのお楽しみ♪。でもなんかわくわくしますね。こうやって四人で怒られそうなことするの」
「俺もそう思う!やっぱこの時間が一番好きだ」
「・・・・・そうだね。さあもう少しだよ。あと3歩」
3歩
2歩
1歩
0歩
「・・・到着!」
「綺麗。なにこの景色、こんな所あるんだ!!知らなかった!ああ・・・本当にこの場所は幻想的だね」
その景色は湖に星空を映し出し、空には満天の星々が綺麗に輝いている。
「よろこんで貰えて良かったですよ!」
「あっ!おいあそこ、流れ星だ」
魔射が指さした場所にはもう何もなかったが、隣ではまた一つ流れ星が流れた。
「何か願う?僕は願う」
「じゃあ俺も願う」
「じゃあ私も」
「皆がやるなら私も願う。」
また一つの流れ星が落ちる。
4人はそれぞれ心の中で願った。
「皆は何を願った?」
そう聞くと3人は目をお互いに目を合わせ
「「「お前の事」」」
「えっ何それ。照れるんだけど」
ぐしゃり
「楽しそうにしててなにより」
草を踏みにじる音が後ろからする。
なんでだろう振り向かなくても分かるこの黒い気配は・・・。
「あっ先生!」
先生?恐る恐る後ろを振り向くと
全身包帯まみれの男の人が本を持ちながらゆらりゆらりとこちらに歩み寄ってくる。
(あいつが先生?怖い。全身が震えているのが分かる。けど!)
槍をかまえる。
「させねえよ。」
ガシリと槍を持っている右手を掴まれる。
「離せ!あいつはやばい。なんでお前らはあいつに従うの?!」
「それは、私たちの本当に欲しいものを手に入れたかったから。力があれば守れると思ったから!」
左腕も掴まれる。
これで完全に逃げ道を塞がれた。
なぜここまでするのか?
私には分からない。
「本当は気づいているかもしれないけど、教えてあげる。
皆君が欲しいんだ光。君の全てが愛おしくて仕方がないんだ。だから先生に
光も人間を辞めさせてあげたいと頼んだら、先生潔く頷いてくれたよ」
不気味に笑いながら近づいてくる。
「だから大人しくしてて」
急に真顔になって、彼の本気具合が分かる。
じゃあ私も本気にならないと。
「ははは、それはできないかな。さてまずは、くっつき虫をなんとかしないとね。離すつもりが無いなら
槍を上手く操って串刺すよ!」
幼馴染にいうセリフじゃないけど、仕方がない。
「わかった・・・離してやる。そのかわりこっちも本気でいかせてもらう」
「なるほど・・・じゃあ私も離します。先生から貰った力試すときですね」
二人は離れた。
「こっちにおいでお嬢さん。怖くないよー」
あんなに強気になって言ったけど、今よく考えたら男三人いや4人相手するのは正直無理があるのでは!?。
ガキン
鈍い音がする。
後ろからミヤの横蹴りを槍で防ぎ
はじき返す・・・でも私は今手加減されている?
そんな気がした。
にやり
「捕まえた」
頭を掴まれる。
ひぃぃ
悲鳴しか上がらない。
心の中ではパニック状態。
近くで見るほど気味が悪い。
覗き込む様に私の顔を見られる。
目を合わせない様にして抵抗するが、今度は無理やり顔面掴んで移動してきた。
乙女の顔面掴むとはてめぇ許さんぞ。
目が合う位置まで移動した。
そして目が合う事が出来る様に、掴んでいる位置を口元に移した。
それによって、私は奴と完全に目を合わしてしまう。
目を瞑る
だが、何も来ない。
恐る恐る目を開けると、恐ろしい奴は首を傾げている。
「・・・・何故だ?。何故俺の潜在能力が効かない?」
何を言っているんだ?
潜在能力?何のことだ?
頭の中では、ハテナマークだらけ。
「まさかこいつが・・・。」
手を離される。
「どうされましたか?先生。何故我らみたいにしないのですか?」
「それはこいつが希望のクラスだからだ。こいつはいずれ俺たちの邪魔になる。だから連れて帰るぞ」
「元からそのつもりだっての。じゃあしばらくおやすみ光」
後ろから殴られて、意識を手放した。