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44話

「っ!」


 思わず吹き出しそうになった。755点って俺の点数じゃねえか!


 まあでも流石に偶然か。


 しかし一応念のためにスタッフの方をチラ見する。


 なるほど。


「おいながめ。その問題は本当にスタッフが作った問題か?」


「そ、そうだよ?」


「じゃあどうしてあんなにスタッフが慌てているんだ?」


 ながめが問題を読み終わった瞬間、慌てたようにスタッフが動き出し、画面に表示されるであろう問題を慌てて入力している光景が見えた。


「はい、私がたった今問題を作りました……でも答えの記号は同じだからシステム上は問題ないはずです……」


「確かにそうかもしれんが……後で謝っとけよ」


「うん。そうします……」


 そこまでして全問正解を阻止したかったのかこいつ。


「さて、わざわざこの問題にしたってことは配信上で一度も言った事が無いってことだろうな」


 つまり水晶ながめがどっちの点数を取りそうか推測しろという問題である。


 ということは一般的にはただの運ゲーである。


 ただし俺以外の場合、テストが返ってきた時に今回はたまたま俺より点数が良かったからって散々煽られたから流石に覚えている。


 そもそも765点は俺の点数だしな。ぱっと思いつく点数がそれしか無かったのだろう。


 だから答えはBなのだが、ここで正解するのは流石に大人げない気がしてきた。


 それに、水晶ながめというVtuberが定期テストとはいえ9割近い点数を取れるイメージが世間にあるかという問題がある。


 確かに色んな事をそつなくこなせるし、地頭が良いことは何となく視聴者も分かっているだろうが、流石にそこまで点数が取れると思われていると思い難い。


 なにせ水晶の代わりにスイカを持ってきた上、机から落として割ったレベルの女だからな。


 イベントとしても点数が若干低い方を言って実は高い方でした!ってオチの方が盛り上がるだろうしな。


「では解答をどうぞ!」


 と迷っていた俺を急かすように問いかけてきたながめ。


「答えは……Bだ」


 結論として、俺はBと答えた。


 理由はただ一つ。俺より点数が高かったことを煽ってきた葵の顔がちらついてイラっと来たからである。


 あんな事をしてくる奴に容赦なんてしてやる必要も無い。


「その心は?」


 まさか正解されるとは思っていなかったらしく、ながめは焦った顔で聞いてきた。


「どうせ755点だろと俺に答えさせておいて実は803点でした!私凄いでしょ!がやりたいんだろうと思ってな」


「……」


 完全に図星らしく、ながめは完全に固まった。本当にこいつは……


「というわけで分かるな?正解はBだ。ながめの事を凄い凄いと褒めてやるんだ。そう望んでいるらしいからな」


 俺がそう焚きつけると、観客は楽しそうにながめの事を褒めたたえ始めた。


 最初はバラバラにすごいとか偉いとかの言葉が飛び交っていたのだが、最後らへんは観客全員で息の合ったながめコールになっていた。


 そして当の本人は……


「やめて……分かったからさ……」


 自分がやろうとしたことの罪深さに恥ずか死していた。自業自得である。


「で、俺が全問正解してしまったな。完全に勝ち目が無くなったがどうする?」


 恥ずかしがること自体は別に構わないが、これは時間制限のあるイベントだからちゃんと働いてくれ。


「うう……やる……」


「そうか。その勇気だけは認めてやろう」


 いくら全問正解されたといっても、ながめは俺の大ファンらしいからな。普通に全問正解もありえるんだよな。


「はスタッフ。俺の分の問題をくれ」


 俺はスタッフに呼びかけ、俺用の問題を受け取った。


 なるほど。割と難しいが、ファンなら正解できてもおかしくないレベルだな。


「それでは第五問——」


 それから俺に関する問題を4問出した結果、


「そうか。そこまで俺に興味が無かったか」


「そんなバカな……」


 見事に全問不正解を成し遂げた水晶ながめ。


 ファンならせめて一問くらいは正解しろよ。これ二択だぞ。


「というわけで次回のコラボでやるゲームは俺が決めて良いんだな?」


「はい……」


「分かった。というわけで周りの奴らにどんなゲームが苦手なのかを聞いておくことにする」


「えっ……」


「当然だろ。ただ適当にゲームを選ぶだけだったら意味が無いからな」


「酷い」


 俺を抗議の目で訴えてくるが、知ったことでは無い。


「提案したながめが悪い。覚悟しておくんだな」


「そんなあ」


 と言ったものの、ながめはホラーゲームが好きな方だし、大体のゲームは出来る方だから苦手なゲームって無さそうなんだよな。


 まあ後で考えれば良いか。


「とりあえず最後の問題を出すぞ。俺とながめ両方に関係する問題だな——」


 それから俺が二問出して、そのまま結果発表となった。


「さて、どんな奴が一番正解出来たんだろうな」


「やっぱり私のファンじゃないかな。ヤイバ君の方やたら難しかったし」


 ながめは俺が二問出している間に完全に立ち直っていた。


 いや、この言い草的に開き直ったというのが正しいか。


「誰も分からない問題を捏造しておいて何を言う」


 今回出された問題は確実に水晶ながめの方が難しかった。


 4問目は論外としても全体的にニッチだったからな。


 それに俺側の問題は『九重ヤイバの最初の一言は?』、『九重ヤイバがVALPEXで絶対に使わない武器は?』、『ぐるぐるターバンと九重ヤイバの関係は?』、『九重ヤイバが描いた絵はどっち?』という切り抜きでも見ていれば視聴者でも正解できそうな問題ばかりだったからな。


 問題の作成者は途中で諦めてしまったのだろうか。明らかに差がありすぎるだろ。


「じゃあ読み上げていくぞ。今回景品が貰えるのは、」


 俺はスタッフから貰った紙を開く。


「78番だ。俺たちが映っているモニターがあるステージに上がってきてくれ」


 俺が番号を宣言し、立ち上がった男は、


「「……」」


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