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110話

「もうできたんだ。今日のご飯は何?」


 ……葵、散々俺の前で水晶ながめが九重ヤイバより点が高かったことを自慢してきたくせに何を作っていたのか見ていなかったのか。


「和風ステーキとご飯、味噌汁、サラダだよ」


「あ、和風ステーキってヤイバ君が好きって言っていた料理じゃん!!」


 献立を説明すると、葵がそんなことを言ってきた。


 俺、配信中にそんなこと言ったことあったか?


「そうだっけ?」


「うん。いつだったかな、何か嫌な事があったときはこれを作って食べるって言ってたよ」


「そうなんだ。よく覚えているね」


 記憶を思い返してみると、そんなことを言っていたような気がする。


 発言した俺が覚えていないようなことをよく覚えていたな。


 でも和風ステーキを作るのは嫌なことがあった時ってのは事実だから発言には気を付けておかないと。


 ちょっとした出来事で正体がバレるかもしれない。


「だってファンだし。ヤイバ君の発言は大抵覚えているよ」


「ファンだからってそんなの覚えてられる……?」


「当然!」


「自信満々だね……」


 葵が九重ヤイバクイズで全問不正解していたことは忘れていないからな。一言一句覚えているのであれば全問正解してくれ。


 なんてことを話していると、家のチャイムが鳴った。


「あ、来た来た!!!」


 それを聞いた葵はテンション高めに玄関に向かった。どうやら葵の荷物らしい。



「よい、しょっと!!!」


 葵が持ってきた段ボール箱は結構な重量がありそうだった。


「何それ?」


「九重ヤイバグッズだよ!やっと届いたんだ!!」


「そうなんだ……?」


 個人勢ではあるものの、普通の個人勢とは違いイラストレーターである樹が常にバックについているので九重ヤイバグッズはやたら多い。


 だからこれまでに出してきた九重ヤイバグッズを全てかき集めたら中くらいのサイズの段ボール箱が埋まるくらいの重量はあるだろう。


 しかし、葵はこれまで発売している九重ヤイバグッズを確保していたはず。となると購入できるグッズは先月ごろから発売された数点に限られる。


 どうしてこんなに荷物が多いんだ……?


「見る?」


「うん」


 とりあえず見せてくれるらしいので確認してみよう。


「じゃーん!!!!」


「ああ……」


 段ボール箱を開封した瞬間、何故そんなに重かったのかが分かった。


「なんで四つずつあるの?」


 同人誌などの非公式グッズが入っているのも理由の一つではあるが、何よりも同じグッズが4つずつ入っていたからである。


 何故4つ……?


 多くても保存用、観賞用、布教用の3つじゃないか?4つって何?カードゲームでもするのか?


「保存用、観賞用、布教用と宅配が使えない友達の代わりに購入したものの4つだね」


「友達?」


「沙希ちゃんだよ。両親が共働きだから沙希ちゃんが受け取らないといけないんだけど、沙希ちゃんも目指して予備校に通いだしたから誰も荷物受け取れないんだって」


 川崎沙希さんはコミケに同人誌を出しに行くたびに新刊が毎回完売するくらいには絵が上手いクラスメイトだ。そりゃあ美術部も目指すよな。


「そういうことね。というか川崎さんも九重ヤイバのファンなんだ」


「うん。私と由香ちゃんで布教しました!!!」


「え?宮崎さんと?」


「うん、沙希ちゃんに布教していたら私も好きだよって話に入ってきてくれて。一緒に布教しました!」


「そ、そうなんだ……」


 葵はともかくとして宮崎さんは本当に何やっているのさ。身バレの危険があることを考えてくださいよ。

「だから4つあるんだ」


「そうだね、4つある理由はよく分かったよ。でも、それ滅茶苦茶お金かかってない?」



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