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02 彼の診察
私は、とある男性の診療を受け持っている。
彼も私の患者だ。
彼は、どうやら心を病んでしまっているらしい。
知人に連れられて、カウンセリングを受けに来たようだ。
最初は何も話してくれなかったが、付き合いを重ねる事に、ぽつぽつと事情を口にするようになっていった。
妬み、憎み、罵り合う。
彼はそんな家庭環境で生きて来たらしい。
とても辛い事だっただろう。
私の診察が少しでも力になれていたらと思う。
彼は人の心が分かると言う。
だからその人が欲しがっている言葉が分かると言った。
それで、裏表のない純粋な悪意に触れた彼は壊れかけているようだ。
時おり彼は、ありえない言葉を口にするため、心に刻まれたそのダメージは大きいとみられる。
自分のような力を持った子供が生まれたらどうしよう。
きっと人を信じられなくなるはずだ。
なんてかわいそうなのだろう。
子供を作ればそうなると、彼は信じてやまないようだった。
このカウンセリングは長引きそうだ。
腰をすえて、挑まなければならないな。