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硝子のいきもの

掲載日:2021/03/23

1


『硝子のライオン』


とある無名の職人に造られた

とても小さな

硝子細工のライオンは

不可思議なる神の計らいによって

切なる愛をひとつ胸に宿した。


とても割れやすく

壊れやすく

(ひび)の入りやすい

身体と心であった。


窓越しに置かれていたライオンの身体は、月の光にくすぐられて、クリンクリンとまたたいては、光輝いていた。ライオンは耳を澄ませると、いろんな音や声が聴こえた。とおく離れた鳥の羽ばたき、モグラのいびき、人や万物の心、月のくしゃみ、生き物の生死、土地や霊界、神。ライオンは窓越しから広がる、森の聖霊達による、青々とした輪舞をいとをかしく眺めていたら、突然、白く輝く彗星が、東の夜空を流れていった。すると、ライオンに神の声がくだった。

「セルク、セルク、セルクよ」

ライオンは心のなかで、神に言った。

「セルクとは誰ですか?」

神はライオンに言った。

「セルクとは、汝のことじゃ。今語りかけているのは、汝の産みの親である」

セルクは神に言った。

「親ですか?おとうさんやおかあさん、あ、おとうさん」

神は、セルクに言った。

「愛する息子、セルクよ。ここから東に777m離れた、湖のほとりに行きなさい」

セルクは神に、言った。

「はい、愛するおとうさん。私は、湖のほとりに向かいます」


それからセルクは、小さな硝子細工の身体を懸命に突き動かして、工房に置いてある、あらゆるものを梯子や階段にし、つたいながら、工房から出た。工房を出てから、雑草をかき分けて、木の枝や木の葉をかわして、天道虫と挨拶をして、風のフェアリーとはハイタッチ。コウロギや鈴虫の子守唄を聴きながら、東へ、東へと向かっていった。


そうしてしばらく、草原を邁進していると、とある音が聴こえてきた。セルクは、優しい顔をした木の枝を梯子として、空き缶の上にのぼって、前方を眺めると湖が見えた。すると、神の声が、再び、セルクに舞い降りた。

「セルクよ、セルク。その空き缶の上で、しばらく湖を眺めていなさい」

セルクは、心を震わせて神に言った。

「はい。おとうさん」


それからセルクは、空き缶の上で、湖の精や産土神とときどき会話をしながら湖を眺めていた。スピカやアルクトゥールスなどの星々も歌い、月のオカリナが聴こえはじめた三日目の夜に、とある少女がやってきた。


少女の首すじや服には泥があり

もう痩せ細っていて

生きる力はなかった。


その少女は、硝子細工のライオン

セルクを見つけた。


少女は、セルクを大事に大事に

自分のちいさな手のひらに乗せて

話しかけた。

「きれいな、きれいなライオンさん。わたしのおともだち」

セルクは、少女に言った。

「おともだち、おともだち」


すると、少女は微笑み

眠るように、息を絶やした。


セルクも少女の手から

こぼれ落ちて

星屑のように、散らばった。


2


『ゾウ』


風が彩り豊かな花の香りを讃えて、あちらこちらには、光のどんぐりが宙に散らばっている、大きな国がありました。その大きな国には、とあるゾウがいました。このゾウは、とても素直なゾウでした。大好きなエレファントグラスを食べるときでも、いつも自然に感謝し、神様に感謝して食べるのでした。エンデは長い鼻を上にあげながら、歌を歌うのが好きでした。


このゾウの親は、神様でした。

ゾウの名前は、エンデ。


エンデがいる国では、領地を拡大する為に、戦争が絶えませんでした。その為、多くの人々の命が、無残にも亡くなっていきました。


この国の王様は言いました。


「となりの国も、わが国である。わが国に不可能などはない。わが国の為に、皆死んで、皆生きろ」


そんな野心家の王様が、領地拡大に旗を振るった、ある時のことです。


エンデは、いつものように、その国の東にある草原にいました。すると、驚いたことに、多くの人々が、この草原にヒドイ顔色で、逃げてきたのでした。


この国内で人々が逃げてくることは、初めてのことでした。なぜならば、野心家の王様は、自国の領地での戦争だけは、行わなかったからです。


では、どうして逃げてきたのでしょうか。


とある国民は言いました。


「もう勘弁しておくれ…。出せる年貢はありやしないんだよ」


この国の王宮側の人々が、国民に、多くの年貢を納めさせようとしていたのです。


野心家の王様からの命令だったのです。


もしも王様からの命令に、背いたときには、命の保証は、ありませんでした。


王宮側の兵隊達は、言いました。


「早くしろ、早くしろ!王様からの命令だぞ!」


それから兵隊達は、国民にムチを振るい続けて、心も身体も追いつめていきました。


そうして、家にも、居場所がなくなり、多くの国民が命からがら、このエンデがいる草原に、逃げてきたのです。


やつれはて、身を震わしている国民達をエンデは、目の当たりにし、心を痛めました。


人々の心のなかにある野心や手段を選ばない狡猾さ、それはまた一人一人の恐れや不安からくるものだと、感じて、深く憐れんだのでした。


そして、エンデは逃げてきた国民達に言いました。


「あなた達に、祝福がありますように」


それからしばらくすると、あとから、追いかけてきた兵隊達が、とうとうこの東の草原にたどり着いたのです。


兵隊達は、言いました。


「隠れても無駄だぞ!王様の命令は絶対だ!地の果てまで追いかけてやる!」


エンデは、これを聞いて、国民の中をかき分けて、進んで兵隊の前に出ていきました。


兵隊達は、エンデに向かって言いました。


「なんだこのゾウは?ゾウ一匹ごときで、何が出来るというのだ!笑わせるなっ!!はっはっは」


それから、兵隊はエンデに向かって、ムチを振るいました。


そして、エンデに向かってムチを振るった兵隊が言いました。


「あれ!?おかしいぞ」


もう一度エンデに向かってムチを振るおうとしましたが、それをすることが出来ませんでした。


何故なら、ムチは、エンデに当たるまえに、きれいなハーブに変わってしまったからです。


他の兵隊達も不思議に思って、エンデにムチを振るいましたが、今度は、ムチが、七色の琴になりました。さらに、ムチはバイオリンになり、ムチは、フルートになり、ギターになり、ムチはピアノになり、ムチは、シンバルになりました。


兵隊達はそれを見てあまりにも不思議に思い、なかには、腰を抜かしてしまう兵隊達もいました。


そして、兵隊長が言いました。


「よし。この珍しい楽器を国王に持っていこう!」


そして、兵隊達は、力を合わせ、エンデの前にある楽器を王宮に運ぶことにしました。


また、兵隊長が言いました。


「ゾウよ。是非、王様のところに来てくれないか?」


するとエンデは、長い鼻を一度天に高く伸ばしてから、地にぶらんと遊ばせてから、言いました。


「良いでしょう。神様の御心のままになりますように」


兵隊達は、楽器とエンデを連れて、王様の元へ、向かいました。


途中、玄関が開けぱっなしで、高そうなものが、ひっぱり出されている家々などを通りすぎていくと、エンデは、心を痛めました。


そして、とうとう大きなお城の門をくぐり、入城して、王様の玉座の前に、たどり着きました。


王様は、エンデが入ってくるのを事前に、兵隊達によって聞かされていましたが、それでも、エンデの神秘的な雰囲気に、驚きを隠せませんでした。


王様がエンデに言いました。


「おもてをあげよ。おぬしの名前は?」


「私は、エンデと申します。」


王様がおもむろに立ち上がり、エンデに向かって、突然、剣を投げました。


すると、その剣は、黄金のマイクに変わりました。


王様は、大変驚きました。


驚きを隠せない王様に、向かって、エンデは耳をパタパタさせたあとに、言いました。


「王様。王様は、武力によって、この国の領土を広げようとしています。そのままでは、やがて、さらに大きな武力によって滅ぼされることになるでしょう」


王様は、言いました。


「では、どうしたら良いんだ?」


「はい。武力ではなく、ここにある楽器を使って、音楽の力によって、この国を広げればいいのです」


それを聞いた王様は、首を横に振り、笑いながら言いました。


「ハッハッハ!エンデよ。それでは、国は大きくならないではないか」


エンデは、王様に真心を込めて、言いました。


「いいえ。王様。必ず、音楽の力によって、この国は、大きくなります。やがて、この国が奏でた音楽は、世界を一周するほどに響き渡ることでしょう。音楽は、風を伝い、人の心に伝い、国境を越えて伝い、神様に伝わります」


エンデの純真な瞳に、感動し、王様は、エンデの言ったことに納得をしました。


それからというもの、国内にあった武器は、エンデの不可思議な力によって、あれよあれよという間に、楽器に変わっていきました。


それから、この国では、エンデ音楽隊が出来上がり、王様は、国をあげて、音楽に、全てを注ぎ込みました。


そして、エンデ音楽隊は、先ずは、となりの国まで足を運び、演奏会を開催しました。


すると、エンデの不可思議な力によって、産声をあげた楽器の音色には、神通力があり、多くの人々を魅了していきました。


それから、王様の国と、となりの国は、仲良くなり、物心共に、交流するようになりました。


この調子で、だんだんと、となりの国のとなりの国にも、エンデ音楽隊は、足を進めていき、拍手喝采を受けて、魅了していきました。


そして、ついには、世界を一周するほどになりました。


エンデが王様に、話した通りになり、王様の国は、世界を一周するほど豊かになり、栄えて、大きくなりました。


それからというもの、その世界には、武器が無くなり、ただ、よろこびの歌と音楽が、鳴り響き続けました。


3


『スズメ』


木の葉がさざ波のように音を立てて、揺れていました。それぞれの葉は陽の光を集めながら、ひとつの呼吸をし、合唱をしているのでした。そんな木々のこずえに、座っている小さなスズメがいました。


このスズメは、たいそう品が良いスズメでした。見た目は、尾びれに7本の白いスジが入っているくらいで、他のスズメ達と、ほとんど見分けがつきませんでした。ですが、物を食べたとしても、物には、依らないスズメでした。また、鳴き声が少しだけ、他のスズメ達よりは、ハスキーでした。


実は、このスズメは、天国からの御使いだったのです。


このスズメが人々の頭上を通り過ぎれば、その人々に、神様の祝福を与えるのでした。そのスズメが、ある店に留まれば、その店は不思議なほど、繁盛するのでした。


ある時、そのスズメが、街の噂になりました。


花屋の娘が街の人々に言いました。


「お客様、お客様、知っておられますか?この街には、幸運を呼ぶスズメがいるらしいですよ」


また、時計屋のおじいさんが言いました。


「なんでもそのスズメが来ると、店が繁盛するようじゃ」


それから、靴職人のお姉さんが言いました。


「声が少し、ハスキーみたいなのよ」


それと、プログラマーのお兄さんが言いました。


「尾びれには7本の白いスジが入っているみたいですよ」


天国の小さな御使いがこの街に、やってきてから幾日か経ち、小さな街でしたが、みるみるうちに栄えてきて、大きくなってきました。まるで、小さな種が大きな木になるように。


すると、なにやら、それを聞き知った異国の強欲な人達や盗人達が、大きくなった街に、紛れ込むようになりました。


ある三日月の晩のことです。


盗人達が言いました。


「噂のスズメを知っているかい?」


別の盗人が言いました。


「ああ、知ってる。知ってる。尾びれには七本のスジが入っているらしいな」


ある強欲な人達は言いました。


「なんでも、そのスズメは鳴き声がハスキーらしいぞ」


別の盗人が言いました。


「へっへっへ。そのスズメを鳥籠(とりかご)に入れれば、我が家の子孫代々は、繁栄するに違いないだろう」


三日月の光が差し込むなか、とうとう盗人達や強欲な人達が、仕事をはじめたのです。


盗人達の親分が言いました。


「あの強欲な奴らには、取らせないぞ!早くしろ、早くしろ!!」


強欲な人達の親分が言いました。


「手柄は、俺達のものだ!誰にも、渡さん!!」


その頃スズメは、とある車屋さんの近くに生えている木の枝に止まっていました。星々は、いつものように輝き、街の眠りを見守っていました。


そんな中、事件は

とうとう起きてしまったのです。


スズメが木の枝で休んでいるところを、強欲な人達の親分に、網で捕まえられてしまったのです。


この街の音や色彩は

くずおれて、暗くなりました。


強欲な人達の親分は言いました。


「はっはっはっ!これで我が家は、子孫代々まで大繁栄さ!」


強欲な人達の子分が言いました。


「親分、親分。手柄を少しでも、私達に分けて下さい」



それから、強欲な親分は、スズメを鳥籠に入れ、高価な骨董品や家具などが並ばれている、強欲な親分の家に、スズメを持ち去りました。


その時、スズメは、親分に言いました。


「あなたが私を持ち帰ったのですね。良いでしょう。あなたが、しあわせになれますように。あなたに天の祝福が訪れますように」


しかし、強欲な親分は、何をスズメがしゃべっているのかは、分かりませんでした。


そして、スズメが来てから、数日経ちましたある朝のことです。その強欲な親分の奥様が、不慮な事故で、亡くなってしまいました。


強欲な親分は、泣き叫びました。


「なんでだよ…。なんで俺がこんな目に合わなければならないんだ…」


悲しみに暮れる強欲な親分に、さらに、不幸が続きました。唯一の跡取り息子までもが、突然、心臓が止まり、亡くなってしまったのです。


強欲な親分は、悲嘆に泣きながら、あることを思いました。


「あのスズメだ…。あのスズメが家に来てから、散々な目に遭った。あのスズメはきっと悪魔だ!ああ、あんなスズメなんかより、愛する妻よ、愛する息子よ、、還ってきてくれ!」


それから強欲な親分は、立ち上がり、別の部屋にいる鳥籠のなかのスズメのところまで、悲しい想いを引きずりながら、歩いていきました。


そして、そのスズメがいる部屋に到着すると、叫びながら言いました。


「こんなスズメ…、どっかに逃がしてしまえ!!」


それから、強欲な親分は、鳥籠に入ったスズメを、外に、逃がしました。


それから幾日も、幾日も、強欲な親分は、泣きながら、神様に祈り、すがり続けました。


………。


そんななか、数日経ったあと、途方に暮れる強欲な親分の家からノックをする音がしました。


「トントントン…トントン」


そして、悲しい顔をした強欲な親分は、その玄関の扉を開けました。


すると、なんていうことでしょう!


死んだはずの、愛する妻と、一人息子が玄関の前に立っていたのです。


そして、親分は涙を流し、妻と一人息子を


心ゆくまで、抱きしめました。


4


『蚊』


a

血の匂いに誘われて

今日も一匹の蚊が

ぼくの部屋にやってきた

きみにとっては

ぼくの血が

たとえば

ハンバーグステーキのような

おいしい匂いがするのだろう

考えてみれば

ハンバーグステーキ屋さんに

行ってハンバーグステーキが

食べられないなんて

とても可哀想なことだ

しかも

嫌がられて

この野郎と

ぺちん、ぺちんと

得意気に

殺されてしまうのだから…

だから今日は

蚊にやさしくあろう

血を吸われたって

かゆくなるだけだい

存分に血を吸わさせて

それから

外に逃がしてやろう


b

まるで

きみは勇敢な哲学者のようだ

みんなの為に

真理の血が

欲しくて欲しくて

仕方がないのだろう

今日も真理の為に

一人捧げられたのさ

一人どころじゃないよ

歴史に名さえ残っていない

あの人達みたいに

星の数ほどの命を落としているんだ…

大丈夫

ぼくはきみを

外に逃がすから

外に逃げたら

脇目もふらず巣に帰るんだよ

寄り道しないこと

そして

新たな命を誕生させるんだよ


c

よし、ぼくの血をたらふく吸ったようだね

こんなにもお腹が膨らんでいる

なんだ、名残惜しのかい?

いつまでも

ぼくのそばにはいられないよ

ぼくだって

きみがいなくなるのは

寂しいけれど

きみには

きみにしか出来ない

お役目があるのだからね

ほら、行った

ほら、行った

きみを

待っている仲間が

大勢いるのだから


5


『ぬいぐるみ』


いつでもきみと一緒にいるよ

きみが何兆光年の孤独を感じているときも

いつでもきみと一緒にいるよ

きみが楽しくて心がどうしようもないときも

いつでもきみと一緒にいるよ

きみがお金がなくて困っているときも

いつでもきみと一緒にいるよ

愛を知らなくて味噌汁を啜っているときも 

いつでもきみと一緒にいるよ

ふわふわでほわほわでもふもふなときも

じゃれあって こすれあって


けれどもきみと

一緒じゃないときがあるよ

けれどもきみと

一緒じゃないときがあるんだよ


それは

きみがたった1人で答えを見つけなきゃ

ならないとき

きみが青藍(せいらん)の涙を流しながら

それでもその気魄(きはく)

ロマンの(ほのお)を見つけるとき


6


『アネハヅル』


ツルの中でも

一番小さなアネハヅルが

一番高いヒマラヤの山を越えていく

ゴツゴツした岩肌に

身をぶつけ削らせ

それでも、なお

神秘の風を待つ



風を逃したアネハヅルは

群れから一羽逸はぐれて

羽根を弱らせ

それでも、なお

目指すは故郷



翔べ!アネハヅルよ

あなたの姿が

とこしえの希望となる

跳べ!アネハヅルよ

小さなツルよ

天の風はあなたと共にある



ヒマラヤの山を越えるのは

あと、もう少し

あと、少し



翔べ!アネハヅルよ

あなたの姿が

とこしえの希望となる

跳べ!アネハヅルよ

小さなツルよ

天の風はあなたと共にある


7


『花よ、花、花』


花はこの宇宙が終わるときも

咲いているような

気がした


爛々(らんらん)とそれから

爛々と


花のなかには

この宇宙よりも多くの

おとぎの世界があるような

気がした


そこには瑠璃や琥珀のお城があり

幼子が自由に遊戯をし

的皪(てきれき)の太陽や聖なる生き物

水晶の泉がお話しをして

愛と夢の歌が歌われていたり

寛雅(かんが)な舞いを舞ったり


花はいつも神様に

愛でられているような気がした


陽や水

風や空や白い雲、天道虫


かわいい花

かわいい花よ

かわいい花

かわいい花よ

清らかで、清らかな

平和に満ちた花よ

時には

「摘まないで下さい」

と、言って

泣いてもいいのだよ


花は人間に

似ているような

気がした


色とりどり

季節があって

何ひとつ

同じ顔の花はなくて

何ひとつ

母なる土に繋がってない花はなくて


花は心のなかで

ときどき

おじぎをしたり、手をふって

光っているような

気がした


煌々とそれから

煌々と


花、花よ



花よ、花、花 


8


『鳳凰』


あたりの大気が

はじめは琴の糸が

弾けているようで

愈々(いよいよ)と欣然(きんぜん)として

まどかになり

清らかな白磁色(はくじいろ)に染まっていく



(きら)びやかな水晶をこぼしながら

その黄金の翼

七色の尾

薔薇色の(くちばし)

神の全能を讃える冠羽で

周囲を艶麗(えんれい)に包み込み

ときどき

燦然の光を放っては

ひるがえし

この一天四海を飛翔する



()くして

聴くものの至高の感覚と

その果てしない憧れを

呼び覚ます鳳聲(ほうせい)

鳴く、鳴く、鳴く

これぞ、玲瓏(れいろう)の響

これぞ、天国の御使い

これぞ、とこしえのうた

地に泉が湧きいずる

地に泉が湧きいずる

生命の泉が!



太陽と星々の光が

最も旺然(おうぜん)なる時に

雲間から虹の橋が現れ

ふたたび

鳳凰は天国に消えていった


9


『ひとりぼっち』


ひとりぼっち ひとりぼっち

香りたつほどいい朝を迎え

日が爛々として

色とりどりの花がたおやかに咲き

こんなにもこんなにも

美しい星空の夜も


ひとりぼっち ひとりぼっち

部屋を片付け

食器を用意し

こんなにもこんなにも

料理を作っても


ひとりぼっち ひとりぼっち

ゲームのコントローラーは

1つだけでよかった

こないだ楽しい気分で買ったオブジェは

別に必要なかった


ひとりぼっち ひとりぼっち

きみと手を繋ぎ

きみと隣に座って

同じベッドで寝ていても


ひとりぼっち ひとりぼっち

恋の詩を書いて

真心の愛を歌っても

こんなにもこんなにも

真心の愛を歌っても


ひとりぼっち ひとりぼっち

きみの素顔は遥か彼方の異国の地

ぼくときみの心は3000億光年離れてしまった


ひとりぼっち ひとりぼっち

さっき神様にも見放されてしまった

グラビトンキャンディープラスチック

重く固く

閉ざされたぼくの口を開くのは

ぼくだけ…

ぼくだけ


ひとりぼっち ひとりぼっち

ひとりぼっち ひとりぼっち


10


『あみゅー』


あのやわらかでやわらかな

ひかりにつつまれた

あのやわらかでやわらかな

がらすのような

てのひらで

ぼくのこころは

にぎられたまま

うすむらさきのかびんに

こちょらんのはなをさした

こうして

うちゅうやれいかいが

ねむりについたころ

こちょうらんのはなは

うたをうたい

まいをまいながら

あらゆるいきものにへんかをして

さまざまにかがやいて

それからかがやいて

とこしえよりもとこしえな

どくそうのそんざいとなっていった

これによって

じぶんじしんのことは

かんぜんにおわってしまった

そうして

どくそうのそんざいはやがて

とあるよちょうをかんじて

はるかなる

ゆうごうのたびをはじめた

このたびのなかで

さまざまな

だんかいやきょうがいにある

そんざいたちの

たすけになっていくことを

しったりしらなかったりしながら

じっせんしていくのであった

こうして

どくそうのそんざいが

ゆうごうのたびをおえたころには

まったくもって

あらたな

せかいがまくをあけた

まったくもって

あらたなせかいもやがて

とあるいっぺんの

しをよみおえたころには

おわりをむかえた

が、しかし

とこしえの

あいのくにのもんと

であった

そのもんを

どくそうのそんざいは

むがむちゅうをころがして

たたいてたたいてたたいた

そうして

なんねんものふしぎな

じかんがながれたあとに

あいのくにのもんが

ひらかれた

ついに

そうしてなぜか

あいのくにで

どくそうのそんざいは

すごすことになった

そこには

さまざまな

どくそうのそんざいたちがいたが

しだいに

とてもなかよくなって

いつまでもいつまでも

どこまでもどこまでも

なかよくくらしていった

どくそうのそんざいは

なかまたちには

こうよばれていた

あみゅー

あみゅー

あみゅーはあいかわらず

うたをうたったり

まいをまったり

しをよんだり

えをえがいたり

それから

あくびをしたりしていた

そうしてあるころに

あいのくにのかみさまとであった

かみさまはあみゅーに

こうおっしゃられた

「かわいいわがこ、かわいいわがこ、あみゅー」

あみゅーはいった。

「はい。わたしをつくられた、かみさま」

「これまでもこれからも、いつも、どんなときもいっしょだよ。これまでもこれからも、いつも、どんなときもいっしょだよ」

あみゅーは

あまりのかんどうによって

しろたえのなみだをこぼした

しろたえのなみだをこぼした

このしろたえのなみだから

こちょうらんのはながさくように

うまれたいのちがあった

このいのちには

はじめから

あいのくにのじゅうにんとして

くらしていられる

せいしつやさいのうが

そなわっていた

おおくの

あいのくにのじゅうにんたちに

たいそうかわいがられて

だいじにされ

このいのちは

すくすくとそだっていった

そうしてこのいのちが

ものごころついたころに

こんなことをつぶやいた

「このせかいはひとつ、このせかいはひとつ。だからこんなにも、ひとつのなかに、たくさんのすべてがつまっているんだ。たくさんは、ひろくて、ちいさくて、それぞれがあって、きれいで、こんなにも、ふかいんだ」


11


『クリスタルマインド』


日常の彩り

非日常のときめき

わたしは

そういった

肯定的なものにさえ

ときどき

臆病になることがあります。

鳥のさえずり、金箔の朝の目覚めが

月や星々のやさしい子守唄が

ひどく恐ろしいときがあるのです…

情熱!でさえ億劫になり

枯葉を踏むことも

躊躇(ためら)ってしまうほどです。

街中やショピングモールを歩いても

怪人のパレードのように

映ってしまうのです…

そんな人間(わたし)でも

不思議なもので

しばしば憧れるのです

神々の世界へ…

そこでわたしは

詩を書くことにしました。

詩を書いている間だけは

何故でしょう、神々の国に招かれ

連れていかれるのです…

その庭や城でわたしは

子供のようになって

聖なる生き物や天国の花々とも会話し

光の花粉や光の雫のような

光のしゃぼん玉、乱舞、歌、旋律

光の(ライトニングアロー)のような

詩を書きはじめます。

まるで

崇高なお遊戯会や合唱をしているかのようです。

また

その時だけは

1滴の濁りもない

愛と平和、光と自由

よろこびなどが、完全にあります。

そうして

書き終えたころには

また

小さな烏合の衆の1人になって

地上に戻ってくるのです。

いつものように

ちょっとお腹もふっくらしております。

不思議なものです。

ですが

もっと不思議なことがあります…

それは

神々の国で子供のようになって

創作した

詩が

地上でも完全に実現するときです!

それを目撃し、体験したとき

その心境を

なんといえばよいのでしょう…

たとえば、わたしは

クリスタルマインドになるのです…!

このクリスタルマインドのまま

出来るだけ

日々生きるようにしております。

気のせいでしょうか…

いや、あの奇跡を気のせいにしてしまうことは

導いて下さった神々に大変失礼なことです!

わたしの固有性のなかで

皓々(こうこう)とした山々のように

動かない真実とは

このクリスタルマインドを心がけ

出来るだけ

地上で実践し、生きること

詩が生きている

すると

神々の国と地上が

結ばれていく

架け橋のような存在になれること…

このようなことを胸に秘めて

現在進行形で

生きていければと

思っております。

誰も見ていない

自身の部屋に1人居るときでさえ

そう

おおげさではありません…

愛の感激日蝕メリーゴーランド…!!!

この…クリスタルマインドは

この世界の終末が訪れる

そのときも


12


『純潔』


日頃の心と行い

その愛の純潔のなかでしか奇跡は起きません…

たった一本の

細くて細くて硝子のような

切れることのない朱い糸を

時には、おのれの息を殺して

大事に大事に手にとって

たどっていきます

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