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うしろのともだち

作者: 榛 奈央

「優ちゃん!一組だよー。ミヤも!」

 私が向かおうとしていた人垣の中から、佐奈が叫んだ。私ではなく隣にいた美弥子がガッツポーズをして、やったね。同じクラスだよ!と振り返って抱きついてきた。

 出遅れた。

 高校に入って初めてのクラス替え。私は自分で見たかった。

 普段は検定や定期テストなんかの案内しか出していない掲示板に全クラスの新しいメンバーの名前が書いてある。掲示板に人が集まるのは年に一度。この日だけだと思う。

 私が自分以外の名前を探したいのを二人は知らない。

 きっとすぐに見つけられる。けどもう掲示板に興味を失った友達に引かれて私は歩き出していた。

いつものわたしなら人垣をかき分けようなんて思わない。自分の分までクラス替え表を見てくれた友達に素直に笑い返せる。

「いいな、私二組だよ。二年は修学旅行あるから絶対一緒になりたかったのに」

「隣じゃん。体育一緒だよ」

 佐奈と美弥子の話にそうだね、なんて生返事をして辿り着いた教室に祈りながら入った。

 同じクラスならいいな。同じクラスがいいな。

「優ちゃんまた出席番号一番じゃん。席一番前だよ」

 言われて教室の一番前、廊下側の机に鞄を置くとすぐ近くの入り口ががらりと開いた。

「また相田かよ、今年も背の順、出席番号順、お前が一番前だな。」

 何が入っているのか軽そうな鞄を私の後ろの席に彼が置いた瞬間、掲示板の前で美弥子が私にしてきたようにガッツポーズをしそうになった。

「相田が前だと隠れられねんだよな。一学期は居眠りできねえや。春休みで背伸ばしといて来てくれよ。お前入学式で見たときから変わってないぞ。」

「飯野のために背が伸びるわけないじゃない。」

 軽口で返しながら去年の春を思い出す。初めて会った入学式の日、私の後ろの席に着いた彼の第一声は「ちっちゃ。」だった。

 こんな失礼なやつはただのけんか友達になると思っていた。友達のままでいいと思っていたのに。

 担任が入ってきて席に着くと、後ろを振り返る瞬間を待っている自分がいる。


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