王都へ行こう! その4
「姉さん……」
「お姉様……」
「シルヴィア……」
国王様とジャックに挟まれた状態で玉座の間に入ると、クローバー陣営の三人が呆れ顔でこっちを見ていた。
ちゃ、ちゃうんや!
「こんにちはシルヴィア」
「ご機嫌ようエース……じゃないわよ!助けて」
暢気にあいさつしてきたエース。
この場で私の味方になってくれそうな王族は貴方しかいないわ!
「ジャック。シルヴィアは腕を拘束されているみたいだけど、何があったんだ?」
「この女が父上相手に魔法を撃っていたから身柄を捕らえた」
いや、事実だけど!
「………お仕置きだな」
聞こえましたよお師匠様!何か恐ろしい未来が見えそうなんですけど!?
アリアとクラブは天を仰いでいるけど、諦めるの早いよ!
「ジャック、離してあげなさい。どうせ父上の悪ふざけなんだろう?」
「その通りだ。ほらシルヴィア、これで自由だ」
私の腕につけられていた手枷が外される。
見事な手際で拘束された時は生きた心地がしなかったわよ。
「改めて挨拶しよう。ボクがこの国の王、レイド・スペードだ」
よっこいしょ、とおじさんらしいかけ声で椅子に座る王様。
椅子は椅子でも玉座だった。本当になんでこんな人が私に喧嘩売ってくるのよ。
「父上。式典の時間ですので着替えを」
「はいはい」
エースに促されると王様は杖を一振りした。
すると、玉座が光って王様の服が変化していく。最後には冠が空から降ってきて頭に乗っかった。
「国王のみが使用可能な早着替えの魔道具だよ。便利だよねコレ」
「父上。それは緊急時に使うのですから普段使いしないでいただきたい」
やれやれとエースが疲れた顔をした。
いつも余裕な表情の彼にこんな一面があるなんて驚きね。
「おい。笑っているところ悪いが、貴様に振り回されるクラブもあんな顔しているからな」
「ジャックは何も思わないの?」
「………指摘する気すら湧かない」
この兄弟の反応だと日頃から王様の行動はあんな感じらしい。
てっきり威厳ある劇画風な雰囲気の人だと予想していたけど、ゆるキャラにいそうな見た目で破天荒な人だったわね。
「とはいえ、国を纏め上げるだけのカリスマはあるぞ。この式典が大々的なものでは無いからあぁなだけで」
玉座の間にいるのは見知った人間と、お付きの騎士さんだけ。
その騎士達も顔に手を当てて「あー、また陛下の悪い癖が〜」と小声で言ってる。
「じゃあ、準備もしたし始めちゃおうか」
王様がそう言うので、なんとなくで式典が始まった。
騎士達が壁の柱に付いている何かを操作すると、音楽が流れ始めた。
演奏隊もいないのに、魔道具かしら?
お師匠様と長年一緒にいたおかげで魔道具とそうで無いものの違いが人より理解できる。
そんな私の目から見て、この玉座の間は魔道具だらけだ。
「気になるか?」
「ジャック、こんなに魔道具だらけでいいの?細工されたりして悪用されない?」
防犯上の安全面からすると、物騒な気もする。
「心配無用だ。父上が被っている王冠があるだろう?アレは認められた所有者の半径1メートル以内の魔法・魔道具を無効化する効果がある。そうでなくても、式典前には必ず玉座の間の点検が行われている」
何その反則級のアイテム。
学園で見つけた聖剣以上の効果じゃないの?私の知らない設定出さないでよ。
そんな事を思いながらも式典は進む。
名前を呼ばれたら前に出て王様からお礼状を貰うだけなので、スイスイ進んだ。
その時ばかりは王様も真面目にお礼状を読み上げて、優しく微笑みながら手渡してくれる。
確かにこの猫被りなら人が良さそうに見えるわね。
「では、以上で式典を終了する。ご苦労だった」
司会進行をしていたエースが言い切ると、音楽が鳴り止んだ。
騎士達も部屋から退室していく。
護衛なのに王様を置いていっていいの!?とジャックに聞いたら、「エースとオレ様がいるから大丈夫だ」と言われた。
「それを差し引いてもこの面子に喧嘩売る馬鹿はいないだろう」
「それもそうね」
正々堂々と戦うなら騎士団一つ分は用意してもらわないと圧勝しちゃう。
「いや〜、それにしてもシルヴィアちゃんは強いね。学年主席なだけあるよ。うちの子達は次席止まりだったからね」
「「うっ」」
王様の発言に胸を抑える息子達。
「全く、どちらが主席になるかで王位継承の判断基準にしてほしいなんて大口叩いてコレだからね。クラブくんに負けちゃうし」
「「うっ……」」
もう止めて!双子のライフはゼロよ!
しかしまぁ、そんな事を言っていたのね。私の弟が優秀でごめんなさいね?私によく似て出来た子だから。
「シルヴィアちゃんさえ了承してくれるなら息子達のどっちかと結婚しないか?好きな方選んでいいからね」
「「父上、ストップ!!」」
双子がシンクロして王様の口止めをする。
焦っていたけど、もしかして私にフラれたのを話していない?
「どうしたの二人共?ボクはシルヴィアちゃんなら良い王妃になれると思って話しているのに」
「申し訳ありませんが陛下。シルヴィアは私と婚約しています」
あの子にフラれたからその話はしないでと言い辛そうな二人に代わってお師匠様が前に出て話す。
「マーリン殿と?聞いた話では弟子と師であったと」
「はい。そして、この冬から婚約者になりました。なので花嫁については残念ながら諦めていただけませんか?」
「……逃した魚は大きいな。だが、愛し合う二人を引き離す程の暴君じゃ無いよ。おめでとうと言わせてくれ」
「勿体無いお言葉、ありがとうございます」
お師匠様と一緒に私も頭を下げる。
これで、王様公認のカップルって事で良いのよね?
「ジャックもエースも、早く告白しないから先を越されるんだよ」
ちゃうんです王様。
二人は告白してくれたし、何なら嬉しかったんですけど私がフったんです。
「あぁ、それとマーリン殿。理事の就任おめでとう。あの時の青年がここまで出世するとは。…いや、君の実力ならば妥当な扱いか」
あの時、というのはお師匠様が双子の王子の家庭教師を受けなかった時だろう。
その後に伯爵家の娘なんかを弟子にしたからお師匠様の良くない噂が流れる事になったんだけどね。
「その節は大変失礼致しました。まだ青二才だったので」
「気にしてはいないよ。光の巫女探しという大役を果たす君を無理に引き止めようとしたボクが間違っていた。結果、君は巫女を見つけて国を守ったのだからね」
アリアに目をやって、次にお師匠様を見る王様。
もしアリアが光の巫女に目覚めていなかったらエースもジャックも死んで、魔法学園は乗っ取られていたかもしれない。
そうなった場合に一番被害を受けるのはこの国に暮らす人々だ。
「これからも理事として、魔法学園と王国を繋ぐ橋渡しをしてくれないか?」
「勿論です。シルヴィアの、クローバー家のあるこの国は私にとっても大事な場所でので精一杯お力になりましょう」
差し出された手を握り返すお師匠様。
お師匠様にとっての大事な場所か……ちょっと、いや、かなり嬉しいわね。自分の家が褒められるのって。
「アリアちゃんもクラブくんも、この子達と仲良くしてあげで欲しい」
「勿論です陛下」
「はい!頑張ります……です!」
クラブはよくお城に来ていたから王様と面識があるけど、アリアに関しては緊張しっぱなしで、口が震えているわ。
「うんうん。この国の将来が楽しみだね。……ところでマーリン殿。一つ腕試しをだね、」
「「さぁ、父上には公務がありますよ!!」
「む、待て。もう書類は嫌だぁああ……」
なんか最後に変な事を言いかけた王様が、金髪と銀髪の双子に腕を掴まれて連行されていく。
力強い息子達には敵わないようで、悲しい叫びが聞こえた。
こうして、お城でのイベントが終了したわけなんだけど、玉座の間に残ったのが部外者だけってどうなの?




