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72話 祭りの会場はここね!

 

「祭りよ!」


 祈願祭当日。

 遂にこの日が来た。


「お姉様!一番乗りのアリア、既に出発準備完了です!」

「夕暮れ前からドレスに着替えますので、それまでに戻って来てくださいね」


 今日の予定はお昼から学園都市内を散策。夕方から夜は講堂でダンスパーティーとなっている。

 エースもジャックも来賓の対応や祈願祭の運営にも噛んでいるから昼間は会えない。クラブもその手伝いよ。

 エリスさんは同じクラスの人達との付き合いでこちらもダンスパーティーまで会えない。

 ソフィアは寮の掃除と戸締りがあるから昼間は忙しい。

 よってアリアしか遊ぶ相手がいない。


「いつも通りね」

「ふふん。今日は違いますよ?わたしのお友達が一緒ですから」


 そうだった。アリアと仲が良いDクラスやEクラスの子達が一緒に祭りを見て回りたいと言って来たのだ。


「私がぼっちでいる間にアリアは友達沢山……」

「お姉様の場合はいつも近くに偉い人が多いので近付き難いですからね……」


 王子二人に公爵令嬢。無愛想な教師、理事、理事長。

 ここに話しかける勇気は平民には無いよね。女子高生だった頃の私には無かったよ。


「心配しなくてもみんな良い子ですから安心してくださいね?」

「アリアの紹介だから不安は無いわよ」


 荷物や財布の入った小さなポーチを肩に掛け、寮を出る。

 学園都市内全部がお祭りムードで人通りも多かった。

 普段見ない人もチラホラいる。都市の近くに住んでいる人や将来学園に入学するつもりの子供とその親も参加しているのだ。


「お姉様、あそこに屋台が沢山ですよ!」

「まるでテーマパークに来たみたいだわねぇ」


 テンション上がるわ〜。


「待ち合わせの場所ってどこなの?」

「Aクラスの寮が都市部に近いですからこの辺りに……いました!」


 アリアの指差す方には、お祭りだからと普段より派手めの化粧をしている子達がいた。

 普通の人達はダンスパーティーに参加出来ないから、この都市内を歩き回るのがメインになる。

 ゲームでの本番も二年生になってからだったのになぁ……一年早まったからよね。


「みなさん。本日はよろしくお願いしますね」

「「「よろしくお願いします!」」」


 ご丁寧にみんなが頭を下げて来た。

 この中に貴族の子はいないから私に緊張しているみたいね。

 不安だったのは私だけじゃなかったのね。


「案内は任せるわよアリア」

「今日のためにバッチリ下調べして来ましたから!」


 大層ご立派な胸を張ってアリアが宣言する。

 その姿がおかしくって、私とアリアの友達は笑った。

 そのまま都市内を見て回る。

 屋台の数が多いのが目に入るが、いつも開いている店のセールも行われていた。


「凄い!こんなに安くなっているなんて」

「半額以下もあるよ!」

「ちょっと奮発して買っちゃおうかな……」


 アリアのお友達はそのセールに目を輝かせて商品の陳列されたカゴを必死に漁っていた。


「お姉様。どうしてこんなに安いんでしょうか?」

「もうすぐ長期休みだからね。学生経営店だから少しでも多くの利益を獲得しておきたいのよ。格安とはいえ、テナント料もかかるし」


 加えてこの店、最高学年の人が同級生と経営しているようで、後継者もいないみたい。閉店に向けての売り尽くしセールも兼ねているのね。

 とりあえずお気に召した物を買ってしまう。

 日本だろうと異世界だろうとセールやお買い得には弱い生き物なのよ。


「いや〜、買っちゃったね」

「まさか最初のお店でこんなに荷物が増えるなんて」

「あーん。重たいよ」


 両手に手提げ袋を持つ事になったが、後悔はしてないわ。


「このままだと荷物が邪魔で困りますね」

「なら私に良い考えがあるわ」


 アリア達がこちらに注目する中、私は自分の影をノックする。

 するとその影からエカテリーナがひょっこり顔を出した。


「エカテリーナ。みんなの荷物をAクラスの寮まで運んでくれないかしら?」

「シャ〜♪」


 了解ですと頷く相棒。

 他の人が驚く中、私はそれぞれの買い物品を預かってエカテリーナの口に袋を掛ける。


「街中に召喚獣を放っても大丈夫です?」

「先程から街中を見ているけど、外部向けにアピールする為に召喚してる人が少なくないわ。あとエカテリーナなら寮の人は見慣れてるから大丈夫よ」

「Aクラスってやっぱり凄いねアリア」

「この場合はお姉様限定って言葉が付きます。Aクラス基準にしないでね?」


 増えた荷物を全員分預かって寮へと向かったエカテリーナ。

 任務を達成したらそのまま消えるように指示してある。

 次に用がある時は召喚し直しになるけど、ダンスパーティーでは呼び出さないし問題無しね。

 身軽になった私達は更に祭りを堪能する。


「ここのお菓子は絶品よ。王子達も気に入っているわ」

「王子達のお気に入りまで把握してるなんて、やっぱり凄いですよシルヴィアさんは」

「強くて頼り甲斐があって、アリアが慕うのも分かる……」

「だから言ってたじゃない。お姉様の噂や評判だけで敬遠しないでって」


 彼女達は縦ロール達やピーター・クィレルが私を貶める為の噂を鵜呑みにしていたわ。

 間違いじゃないのもあったけど、私やお師匠様の悪口が多かったのはアイツらのせいだった。

 縦ロールは休学して学園の外へ。ヒョロガリは未だにベッドの上で意識が戻らない。残された太っちょは事件の共犯として奉仕活動をさせられている。


「良ければ今度から気軽に声をかけてちょうだい。力になるわよ」

「「「よろしくお願いします!」」」


 姉御肌というのか、(おだ)てられると悪い気はしない。頼られるのは良い気持ちね。

 なんだかアリアが複数増えたみたい。


「お姉様の一番はわたしですからね!」

「はいはい。分かってるわよ」


 みんなが私に懐いてくれたせいでちょっと妬いて拗ねちゃうアリアの頭を撫でながら、次の店や屋台を巡る。

 学生の店以外にも外部の有名どころが出張出店しているものもあった。それだけ稼げるのね、この祈願祭は。

 大道芸をする一団もあって、魔法で観客を魅了していた。飛び込み参加で見物客を巻き込んでいるみたい。


「ナイフでジャグリングですって」

「サルの召喚獣が芸をやってる。可愛い〜」

「地元の田舎じゃ見られない光景ね」


 確かに凄い芸だけど、私だって負けてないわ。

 その気になれば超巨大サイズエカテリーナを出現させて驚かせようかしら?


「お姉様。変な気を起こさないでくださいませ」

「ナ、ナンノコトカナ?」


 こういう所がソフィアに近づいたわねこの子。

 外部の大道芸一座を観賞し、昼食を済ませてまたお買い物へ。屋台を食べ過ぎてダンスパーティーで出されるご馳走がお腹に入らないかも。

 デザートが出たら別腹だから食べちゃうわ。


「青い鳥も大忙しですね」

「案内係だからね」


 バサバサと忙しなく飛び回る学園名物。

 この一年間、よく私の周りを飛び交ってくれた。窓枠によく居たのよね。


「あれを作ったのはお師匠様なのよ」

「マーリン先生がなんですね。初耳です」

「学園内限定なのが勿体ないよね」

「どこにでもあれば迷子にならないのに」


 ねー、と言いながら歩く。

 その時、青い鳥の一羽と目が合って視線が気になった……ような気がしたけど気のせいね。


「まだまだ見たいのに……」

「シルヴィアさんともっと一緒に遊びたかったのに〜」

「ありがたい話だけれど、私とアリアはダンスパーティーに参加するからそろそろお別れね」


 名残惜しがってくれる彼女たちには申し訳ないけど、私の本番はここからなのよね。


「来年はみんなも参加出来るから、今日のパーティーの情報は後日共有しましょう」

「「「はーい」」」

「お祭りが終わって帰る前に寮で荷物を受け取るの忘れないでね?」


 今度、私が主催のお茶会をすることを約束してアリアの友達と別れた。

 みんな良い子だったわね。こう、前世の同級生や友達と似た雰囲気でワイワイできて楽しかった。

 どうしてもクラスの序列が高い方ほど貴族が多くて、あんな気軽に遊べないからね。

 エリスさんなんて、二年生の校舎では大名行列みたいに他の人が後ろをついてくるみたいだった。

 エースとジャックも取り巻きに囲まれているしね。


「でも、ここ最近は丸くなったわよねみんな」

「諦めが入ってますし、お姉様に悪気が無いって知る人が増えましたからね。特にベヨネッタさん達が大人しくなってからは突っかかる人もいなくなりましたし」

「そうね。このまま何も無く学園生活が進んでくれれば私も楽なのに」

「今年は事件に次ぐ事件でしたね」

「それ、まだ終わってないわよ。休み明けには全員でもう一箇所行く場所あるわよ」


 お師匠と計画している残り一つの隠しアイテム探索ツアー。難易度からして全員参加で戦闘もあり。

 でも、今までみたいに先回りされる事に焦る必要も無いし、気は楽ね。

 冒険ついでに凄い魔道具が手に入れば……という軽いノリだから。


「じゃあ、寮に戻って着替えましょうか」

「はい!わたしもエリちゃん先生からお下がりのドレスを頂きましたし、気合入ってますよ」

「あら。まだ見てないから楽しみにしてるわよ」


 さぁ、祈願祭も半日が過ぎた。

 ここからが私の本番よ!






















「聖杯の準備はしたのかい?」

「勿論じゃよ。講堂に参加しない教師達からは既に魔力を徴収しておる」

「理事長。エリザベス先生。こちらにいらっしゃいましたか……お酒ですか?」

「マーリン先生か。君も一杯どうかな?」

「飲んできなマーリン。今日はあたしら教師陣も祭りさね。尤も、堅物なあんたには「頂きます」……お、おぅ」

「ホッホッホッ。学生の頃とすっかり変わったの君も」

「手のかかる弟子のせいですよ。……このワイン、飲んだ事無い味ですね」

「うちの学生が一から作った新作らしくての。差し入れがあったのじゃ」

「同じ素材で作ったアルコール無しのは講堂で生徒にも振舞われるらしいさね」

「そうですか。しかし、そろそろ生徒も会場入りしますのでお二人共ご準備を」

「分かったさね」

「そうじゃの。今回は余興もあるようじゃし、ちと楽しみじゃ」







「馬子にも衣装か……さて、何と言うべきかな?」





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