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71話 打ち上げですわ!

 

「それではグラスを持ってね。おほん!期末試験お疲れ様でした。乾杯!」

「「「「乾杯!!」」」」


 グラス同士を打ち鳴らして中のジュースを一気に飲む。

 ぷわぁー、これが堪らんとですたい!未成年だからお酒飲めないんですけどね。


「マーリン先生、会場の提供ありがとうございます」

「私は許可してないんだが?」

「「「「えっ?」」」」


 その一言で会場にいた全員が固まる。

 そしてぎこちなくこっちを見てきた。


「会場を確保したとは言ったけど、許可を貰ったとは言ってないわよ?」

「姉さん!」

「お姉様!」

「シルヴィア!」

「お嬢様!」


 悪びれることなく返事すると怒られた。


「まぁ、ここまで飾り付けや準備をされれば今更どうこうしようとは思わない。好きにしなさい」

「よ!お師匠様!太っ腹〜」

「後片付けは全てシルヴィアに任せるといい」

「お師匠様ぁ⁉︎」


 そこは全員で分担でしょ!


「ソフィア〜」

「お嬢様が悪いかと」


 メイドにまで見捨てられてしまった。なんて可哀想な子なのシルヴィア・クローバー!

 この涙はテーブルの上のお菓子で回復しましょう。

 今日はみんなで持ち寄ったお菓子とソフィアが寮から作って持って来た軽食がある。


「学年が違うのに(わたくし)もこの場に居ていいのかしら?」

「何言ってるんだ。この場はエリス姉の快気祝いも兼ねているんだぞ」

「そうだよ。エリス、学年主席おめでとう!」

「「「「おめでとうございまーす!」」」」

「ありがとうみんな」


 パチパチと拍手してエリスさんを称える。

 目が完治して最初の試験でエリスさんは学年トップの成績を出して、模擬戦でも圧勝した。闇魔法無しでこの成績なのが凄い。


「元々、入学した頃からトップクラスだったからな」

「だとしてもよ。劇的に華麗に復活!これは暫く注目の的確定ね」


 当たり前だと言うジャック。だけどとても誇らしげだった。


「俺から見ても技のキレや魔力の質が向上している。何か秘密の特訓でもしたのかい?」

「えぇ。マーリン先生とシルヴィアさんと一緒に鍛練を」

「あー……あれをね」

「あれをか……」


 双子が遠い目をして黄昏た。

 この二人はマーリン式ブートキャンプを断念したからね。しょうがないね。


「アリア、そこのケーキ取って」

「チョコレートとチーズありますけどどっちです?」

「悩むわね……両方はダメかしら?」

「じゃあ、わたしと半分こしましょう!」

「乗ったわ」


 私ってばなるべく多くの種類を食べたいのよね。どれか一つを大量に食べるんじゃなくて。


「おいシルヴィア。そんなに食べすぎたら」

「ふーとーりーまーせーん!私は試験で魔力使い切ったから補充の為に糖分を摂取するんです!」


 いつぞやにお城で言った事と同じセリフを言おうとするジャック。

 なんてデリカシーが無いのかしら。


「余談だが、魔力の回復には糖分ではなく薬草を煎じたポーションが最も効果的だ」

「お師匠様。このタイミングでそれ言います?」


 お菓子食べずに不味い薬を飲めって?それともポーションをケーキにかけるの?なんて拷問ですか?


「ソフィアも遠慮せずに食べてね」

「ソフィアさんが無事だったお祝いも兼ねているからね」

「ありがとうございます。クラブ様。エース様」


 日頃のクセで取り分けやお茶汲みをするソフィアだけど、今日この場は無礼講よ。なんならジャックのお皿から苺の部分だけを取っても……。


「おい。そのフォークはなんだ。これはオレ様が大事に育てた苺だぞ⁉︎」

「はっ。好きな物を最後まで残すのが悪いのよ。でりゃあ!」


 ジャックの腕によるガードを蛇のような動きで掻い潜り、視覚の影から手を伸ばす。

 そのままお口へゴールイン!


「あぁあああああっ⁉︎」

「……やっぱ苺は美味しいわね」


 怒りより先に深い悲しみに包まれるジャック。

 世の中は諸行無常。勝者がいれば敗者もいるのよ。


「ジャック。(わたくし)の苺をあげるわ。二つも乗っていたから一つ譲るわ」

「エリス姉……今のオレには女神のように見える…」


 微笑みながら苺を渡すエリスさんと神からの恵みをありがたく頂戴するジャック。

 いいなぁ、もう一個食べたいからまた奪おうかしら?


「姉さん。学年一位の実力を無駄には発揮しないでよ」

「それを言うならクラブだって」


 二度目の進撃は風のベールに防がれた。

 ここまで繊細な魔力コントロールをフォークを受け止めるためだけに使うなんて、成長したわね。


(わたくし)も聞きましたよ。シルヴィアさんとアリアさんが学年トップを競って戦ったって」

「魔法の実技だけですよ。筆記問題はお姉様に勝てないし」


 そりゃね。全てが初めて学ぶ内容のアリアと、お師匠様から常に一つ上の学年の勉強を叩き込まれている私との差はあるわよ。

 むしろ、実技で差が殆ど無かったのは焦った。


「大健闘だった。シルヴィアが召喚獣と杖、闇魔法の使用を禁止していたとはいえたった一年でここまで迫ったのだから」

「マーリン先生のおかげです」


 謙遜するアリア。

 アレは焦った。制限ありとはいえ、私は真剣に戦ったのよ。

 縦ロールの時のような慢心や精神的ダメージも無く、使える力で最大限戦った。

 それでいて辛勝ってどんだけよ⁉︎

 アリア恐ろしい子……伸び代の塊よ。


「実技についてはワンツーフィニッシュよ。男子の方は大逆転があったらしいけどね」

「「くっ……」」


 嫌味っぽく話を振ると、王子二人が渋い顔を浮かべた。

 こちらは予想通りの展開とはならなかったのだ。


「姉さん。アレはジャック様とエース様が対決したからの結果であって、」

「最後に立っていた者が勝者よ」


 元からクラブの成績はエースに迫る勢いだった。

 だって一年飛び級するくらいだからね。

 今回の試験では直前までエースがピーター・クィレルの件で大忙しだった事もあり、僅差ではあるがクラブに負けた。

 そして実技ではエースとジャックの一騎討ちがあって、なんとダブルノックアウト。引き分けになった。

 クラブは対戦相手に圧勝して最高評価を頂いた。

 これによって最終的な順位はクラブ、エース、ジャックの順になったのだ。


「おほほほ!今年はクローバー家が男女共にトップ!来年も努力して励む事ね皆の衆」


 口に手を当ててお上品に高笑いする。

 悔しそうな表情が堪らないわね。


「シルヴィア。在学中に学年主席を落とすような事があれば鍛練を一からやり直すのでそのつもりでいなさい」

「それはあんまりでは⁉︎来年にはアリアに抜かされそうなんですけど⁉︎」

「アリアくん以上に励めばいいだけだ」


 簡単に言ってくれるわねこの人。

 お師匠様の学生時代って、ずっと主席でそのまま卒業したんだっけ?

 でもそれって、僅差の実力で切磋琢磨する相手がいなかっただけですよね多分。私の場合はゲーム主人公で光の巫女っていう補正が付いてる人なんですけど!主人公に勝った事が快挙なのに、一度の負けも許されないってどういうこと⁉︎


「頑張るといえば、Fクラスは凄かったらしいですわね」

「えぇ。姉さんの指導を受けた人達は全員来年からDクラスに昇格みたいですよ」

「一般の方々がそこまで伸びるなんて、素晴らしい事ですわね」


 素直に喜んでくれるエリスさん。

 まぁ、あれだけのマッチョ達が最底辺な訳ないからね。成長というより別人にすり替わった印象があるわよ。

 あと、地味に私に敬礼する生徒が増えているけどFクラスのせいでしょ。



「そのせいで来年度は私のやり方を全クラス共通で実施する事になってしまったがな。研究の時間が大幅に削られてしまう」

「嬉しい悲鳴ですね。頑張ってください」

「何を言っている?人手が足りないのだから君も手伝うんだ。元はシルヴィアが撒いた種だろう」


 うぅっ……。そうですか。

 あの時はやり過ぎちゃった感があるけど、次回は同じ失敗をしないようにせねば。

 気付いたら学年の全生徒から敬礼されて「上官殿!」なんて呼ばれかねない。

 ただでさえ悪目立ちしてるのに。

 別に、悪役令嬢やってて恐れ敬われるのは嫌じゃないのよ?それだけ圧倒的だったら逆らう人間もいないし、クローバー家への印象や対応も変化するから。

 ただ、偶に聞こえちゃうのよ。「ゴリ……蛇姫だ」「脳筋……悪役令嬢だ」「破壊神……シルヴィア様だ」


 悪名が全部酷い。そのうちアマゾネスなんて呼ばれそうな気がする。私は戦闘民族じゃないつーの。


「だが、振り返ってみればあっという間の一年だったな」

「そうだな。俺も長期休みで勉学に励まないとな」

「その時は(わたくし)も手伝いますわ。でも、その前に……」

「明後日はダンスパーティーですよお姉様!」

「お嬢様用のドレスの準備は済んでおります」

「僕も実家から送られて来たよ。養父さんのお下がりだけどね」

「でもそれって、我が家でも特に高い生地で作ってあるやつでしょ?」


 話の話題はいよいよ迫ってきたダンスパーティー。祈願祭のプログラムの一種で、ゲームの最大の見せ場。

 この場にいる全員が参加する事となった。ソフィアは私の招待枠で特別にね?


「お師匠様も出られるんですわよね?」

「監督役だがな。私は大勢で騒ぐのが好きでは無かったから良い思い出はないが……君達は大いに楽しむと良い」


 そうさせて貰いたいのは山々だが、私はダンスパーティーである事をしようと思っている。

 事前にアリアとエリスさんには相談済みで、実家からの手紙には私の好きな様にしていいと許可が下りた。





 シルヴィア・クローバー。パーティー会場で告白の返事をしようと思います。





「でもその前に、コレとコレは私の食べるケーキね。ソフィア!ジュースのおかわりが欲しいわ!」





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― 新着の感想 ―
[一言] あと10話かぁー。 淋しいなぁー。 番外編も書いてくれてええんやで?(笑)
[一言] 戦闘民族ワンダーウーマンと考えるとちょっとシャレオツ
[一言] お、ついにか。 どうするんかねぇ
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