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60話 残りの隠しアイテムですわ!

 

「困ったことになったわね」


 学園の七不思議に隠された七つのアイテム。

 どれもこれも主人公であるアリアが手にすることで物語を有利に進めることが出来るの。

 その内の二つが既に何者かの手に渡っている。

 非常事態と言っていいかも。


「シャ〜」

「よしよし。やっぱこのサイズが良いわよね」


 7メートルサイズのエカテリーナの頭を撫でてあげる。

 影に収納できるサイズとしてはこれが限界。地下での巨大さは魔力を大量に与えたことによる一時的なものだった。

 お師匠様曰く、時間をかけて育てればあのサイズにまで成長させられるとか。いや、世話できないよあんなの。

 アニマルセラピーに癒されながら今後の課題と目標を考えなくてはならない。


 残る五つのアイテム。これは入手したい。私がやったアップデート前だと二つは行方不明になったり長い歴史の中で紛失されたと書いてあった記憶がある。

 なのであと三つが私達が手に入れることができるアイテムになるわ。


 一つはエースかジャックの力を借りないといけない。

 一つはお師匠も含めた全員総がかりで力を合わせないといけない。

 一つは学園のどこかにある。


 いや、学園のどこかって何?そんなアバウトな情報しかないの?

 というのも私はゲーム中に手に入らなかった。フラグやイベントが発生しなかったためだ。

 それでもとりあえずはエンディングに進んだからすっかり忘れていたの。

 これらのアイテムはシナリオを有利に進めるのに必要なだけでコンプリートする必要は無いからだ。あくまでもオマケのサブミッション扱い。


「キャラ達の二次創作や現代パロディに熱中せずにシナリオ達成度100%をすべきだった……」


 JK時代の悪い癖だ。ゲームのストーリークリア後のやり込み要素に途中で飽きてしまう。

 好きな漫画や小説の書店別の特典や雑誌に掲載された数ページのSSについては所持金と相談して諦めたりしていた。

 コンプリート癖が無いのが失敗だったわ。


「ホッホッホッ。何かお困りのようかの?」


 一人で思い悩んでいると、誰かが横に立って声をかけてきた。

 声の方に顔を向けると、立派な白髪と髭の生えたお爺ちゃんがいた。


「マグノリア理事長⁉︎」

「そこまで驚かれると姿眩ましをして近づいた甲斐があったわい」


 学園のトップが突如現れてビックリした。

 エカテリーナもいるし、不用意に誰かが近づけば気づくはずなのに分からなかった。


「姿眩ましは光魔法の応用でな?光を屈折させることで見えないようにすることが出来るんじゃよ」


 生徒を驚かせるためだけに光学迷彩するとか何考えてるのこのお爺ちゃん。


「エカテリーナは臭いと熱でも感知出来るはずでしたのに」

「それについてはコレじゃよ」


 魔法に対する質問をすると、理事長は得意げに指先から黒いモヤを放出した。


「闇魔法によって周囲の認識を誤魔化したり、感覚を鈍くさせるんじゃ。光魔法と闇魔法を同時に操る技量とそれを維持する魔力が無ければ使えないのが欠点じゃがな」


 あぁ、なるほど。つまりはこの人にしか使いこなせない魔法ってわけね。

 一般人相手なら気にする必要はないわね。


「流石は理事長ですわ。お師匠様が認めるのも納得です」

「ほほぅ。かの天才に褒められるのは光栄じゃな」


 認めてたのは厄介で私に悪影響があるからって理由なんですけどね。

 しかし、光を屈折させるなら火と水の魔法で代用できるかもしれないわね。闇魔法は使えるからこの光学迷彩を使ってお師匠様にドッキリを……ふふっ。


「おや?もしかして儂はとんでもない事を教えてしまったのでは?」

「いえいえ。とても役立つ情報でしたわ」


 いやまさか、理事長直々に魔法の解説を聞けるとは思わなかった。

 魔法使いを育て、魔法を研究・発展させる場所のトップなんだから凄いのは当たり前よね。


「ところで、理事長はどうしてここに?お忙しい身だと存じていますけど」

「雑務を抜け出して牧場に遊びに来たら、職員からシルヴィアくんが大蛇を使って大暴れしておると報告があっての」


 そういえば、この牧場に来た時にエカテリーナの運動と称して岩を砕いたりしたわね。


「一応、この一帯は人が来ないと聞いていたので」

「それでも激しい音や土煙が巻き起これば心配するからの。次からは何をするかも報告するように」

「はーい」


 理事長の言う通りね。

 私ってば突然、刹那的に破壊衝動に襲われたりするから自由にできる場所の確保は必須。旅の途中は森や山で暴れていたけどここは都市の中。人の迷惑を考え暴れないとね。


「大変な時じゃとは思うが、魔法を極めるのは良い心がけじゃよ」

「理事長は私の周りで起きていることを知っているんですか⁉︎」


 くっ。他の教師や怪しい人物に気づかれないようになるべく話していないのに。

 どこから情報が漏れた?まさか私達の中にスパイがいたとでもいうの⁉︎


「いやだって、普通にマーリンやホーエンハイムから報告書が上がっておるしな。器物損壊や図書館を水浸しにしたり、時計塔の調査ともなれば学園の責任者である儂に連絡があるのじゃ。報連相がなっておらんと組織としてダメじゃろ」


 凄くまともな答えが返ってきた。

 そうよね、流石に全部を理事長に隠し通せるわけないわよね。


「他の者には連絡なく儂だけに報告書を渡しているからの。情報の漏洩はないじゃろう」

「それはホッとしましたわ」


 スパイとかいなかったわね。仲間を疑わずに済んで良かったわ。

 お師匠様からエリちゃん先生へ。そこから理事長に直接話が行くなら他所の人間が入る余地が無いわね。


「しかし、学園の中にそのような魔道具が眠っているとはのぉ。長いことここに勤めておるが、一つしか知らんかったわい」

「そうなんです。私は残りのアイテムを……って今なんと?」


 一つ知ってるの?


「七不思議と魔道具に関連性があるのなら、その内の一つは儂が持っておる。今から見に行くかの?」

「え、あっ、はい」


 話の急展開に思わず頷いてしまった私。

 理事長が持っているなんて聞いていないし、心当たりがない。探したけど見つからなかった二つのどちらかだと心配の種が一つ減るんだけど……。


 エカテリーナを影に戻して私は理事長の後について行った。

 お師匠様がいたら小言を言われそうだけど、エースの調査だとアリバイがあるのよね。だったら信用しても良いんじゃない?

 困ってる生徒を心配して話しかけてくれるならいい人よね。理事長だって分かる前も案内や世話を焼いてくれたんだからきっとそうよ。


「ここじゃよ」


 着いたのは理事長の部屋。

 他の理事達は都市内に屋敷を持っているけど、理事長は校舎内の理事長室に住み込んでいるらしい。

 まぁ、その理事長室の広さがマンションワンフロア分あるから十分だと思うわ。小部屋もいくつかあるし。


「確か……これじゃな」


 案内された部屋の床から積み上げられた本は私の身長くらいまであるし、獣の骨や人体模型まである。魔道具もその辺に転がっていて……汚部屋ね。

 入り口から入ってすぐの一部屋だけが綺麗だったから

 来客への対応はあそこでしているのかも。

 そんな物が散乱している部屋の棚から理事長は鍵の掛かった箱を取り出した。


「この箱は特別製での。代々の理事長しか開けられない。儂はそこに独自のセキュリティを付けて全部の属性の魔力を注がないと開かないようにしておる」


 代々の理事長ってことはこの魔道具は私がゲットできなかった二つとは別物ね。

 そうなると、あの一番情報が少なかったやつかしら?


「これが君の探していた魔道具の一つじゃろう」


 理事長が操作して開けたランドセルくらいの箱の中から出てきたのは黄金のトロフィーカップみたいなのだった。


「これは聖杯と呼ばれていてな。無限の魔力を貯めることができるんじゃ」

「聖杯……」


 よく聞くワードね。漫画やゲームによく出る、教会なんかにレプリカがあるやつ。


「といっても、今は空っぽの器じゃよ。使うのは年に一度だけじゃからな」

「年に一度?」

「うむ。年末に祈願祭があるじゃろ?その時に生徒全員から魔力を吸収して学園都市の地脈に流し込み、土地の活性化を図るんじゃ」


 祈願祭?地脈?活性化?

 なんだか知らないワードが沢山出てきた。


「理事長。祈願祭とは?」

「あー……学生の頃は興味ないの。あれじゃよ舞踏会のある日じゃ」


 あぁ、ダンスパーティーのある日か。

 二年生メインで、招待状のある他学年の生徒、年間の成優秀者達が参加できるの。Aクラスにいるならまず参加は確定ね。

 告白や断罪イベントはこの二年生の時にあるはずなのに私の場合は一年早くなって困ってる。


「元は闇の神が封印された日として祝っていたのじゃが、歴史と共に薄れてしまった。今ではただの年末にあるイベントになってしまったがの」


 あるある。元々は意味があったのに、誰も覚えていなくて形骸化したやつ。

 ひとえにお祭りといっても、季節によって意味が変わることを知らない人の方が多いと思う。

 それと同じで忘れ去られてしまうのよね。


「地脈はこの都市の真下を流れる大地のチカラじゃな。自然の生命力、魔力が流れている。城や砦、都市が作られるのはその地脈が優秀な場所じゃよ。地脈がチカラを失うと水が枯れ、作物が育ち難くなり、生物が住みにくい場所へと変貌する。聖杯で集めた魔力で学園都市の大地は肥沃な土地を維持しておるのじゃ」


 風水や陰陽術で聞く言葉ね。建物を建てる時も利用されていて昔の平安京は風水を応用して作られたって話だったかしら。

 乙女ゲームの世界でかなり本格的なの来たわね。予備知識ないと何なのか理解できないわよ。


「そんな凄い魔道具が七不思議になっているのね」

「七不思議になっておるのは、学園内のどこかに願いを叶えてくれる魔道具がある……じゃったか?」

「はい。そうですわ」

「これは万能の願望器とまでは行かないが、大量の魔力を溜めればいくらでも魔法に応用できるからの。大魔術や災害すら引き起こせる危険物にもなる。だからこそ管理は理事長になった者しか出来ん」


 理事長やお師匠様クラスだったらほぼ無限に等しいレベルで魔法を使えるようになるアイテム。そんなの相手だったら国が滅んじゃうよ。

 もし、これが盗まれたりでもしたら……。


「理事長。それを狙う人物がいるかもしれませんから引き続き厳重な管理をお願いします!」

「勿論じゃ。まぁ、今は盗られても空っぽじゃし。学園都市全員の魔力を全て吸収しない限りは使えないからの。シルヴィア君に紹介したのも危険が少ないからじゃ」


 これがゲームのアイテムだなんて、何に使うつもりだったのかしら?

 でも、心配の種が一つ減ったわ。この聖杯は危険だけど使えないし、箱を盗んでも開けられない。

 私達が探し求めるものが二つに絞られたもの。行方不明や紛失したのを除外した五つの隠しアイテムの場所や効果は知り得た。








 ここからは逆転に向けて行動するわよ!

 そして奪われたアイテムも回収して犯人を捕まえてあげるんだからね!









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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱ理事長すげぇなww
[一言] 王子の方は大丈夫かね?
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