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31話 キャラが濃いですわ!

 

 クラブへの誤解も解け、晴れやかな気分で授業に臨む事ができた。

 まだまだ基礎的な内容や初級の魔法の実践だったりする。それでもAクラスより下の、最下位のクラスだと魔力のコントロールから始めている。

 三馬鹿娘達もエカテリーナを警戒してか近付かなくはなったが、事あるごとにこちらを睨んでくる。

 寮内で部屋の場所は分かっているから深夜にエカテリーナ砲をお見舞いしてあげようかしら。


 それと、アリアをお師匠様に紹介する約束は簡単に、あっさりと叶った。

 上層部の許可も下りたようで、毎日放課後に演習場の一部を借りて特訓をしています。

 私は訓練が終了というか、自由に練習しようとするとお師匠様からの許可が下りないので筋トレ。

 お腹周りや胸部のお肉はどこへ……腹筋が割れるのもそう遠くはないかも?


「やぁ!」


 元気な掛け声と共に()()()の先から光弾が発射される。

 それが数回続き、いずれも的の中央には当たらなかったが擦りはした。


「いやぁ、まだまだお姉様には敵いませんね!」

「そ、そうね……」


 新事実。アリアは魔法の天才だった。

 そりゃそうよ。振り分け試験の時にその片鱗はあったし、指導するのがお師匠様。杖だってアリアに合わせて用意されたオーダーメイド。

 だからといっても教えた事を次から次へとスポンジみたいに吸収するのは反則よ。

 7年の壁がこの一週間でグッと縮まった気がするわ。


「お師匠様、どうしてアリアはこんなに物覚えが良いのでしょうか?」

「彼女は魔法に対して無知だ。私の教えが最初であり、それを疑いもせずに愚直に受け入れれば当然だろう。普通の人間なら自分流のやり方や癖があるが、それがない」


 手のかからない純粋な教え子が気に入ったのかお師匠様の指導にも熱が入る。

 そこは今まで私のポジションだったのに!嫉妬しちゃうわよ。

 だからといって筋トレの回数増やすのは違うんですよねー。ダンベル?一桁台なら片手で余裕よ。


「だが私にも教えられる限界がある。基礎程度なら指導できるが、本格的な光属性ならその担当の教師に習うといい」

「まだお会いしたことありませんけど、そんな方がいらっしゃいますの?生徒の中ではエースとアリアくらいしか見当たらない属性ですわよ?」

「あぁ。それがこの前に話していた私の恩師だ。丁度いいから今から行くとしようか」


 早めに本日分の鍛練を繰り上げる。

 アリアはまだまだ消化不良みたいだったけど、明らかにスタミナからしても怪物よ。田舎出身ってそんなにフィジカル的に強いの?

 このまま彼女が成長を続けていけば私やエースなんて目じゃないくらいになり、学年トップになる可能性だってある。

 そうなればお師匠様からの罰ゲームが待っている。山籠りだけは勘弁を!冬の山は食糧すらないので!


「では行こうか」


 演習場から校舎の研究・職員棟へ。お師匠様の研究室は低層階にあり、建物の高い方へ行くにつれて権力や地位がはっきりしてくる。

 青い鳥さんからの案内も受けつつ進んでいくと、豪華で立派な扉の前に辿り着いた。

 クローバー家の屋敷の扉よりも装飾が凝っていて、学園の理事という立場が並の貴族より高そうだと感じる。

 この国の魔法を支える都市。そこの最高位にいる権力者って……。

 喉を鳴らして緊張する私とアリアを余所にお師匠様は扉をノックした。


「失礼する」

「入んな」


 しゃがれた声が返ってきた。

 ゆっくりと扉が開いていくと、まず金や銀や宝石などの山やいかにもお高そうな美術品の数々が目に入ってきて度肝を抜かれて、お次にそんな部屋のど真ん中に座る人物に驚く。


「よくノコノコとやって来たねバカ弟子が」


 三頭身くらいのミニキャラサイズの小さな小さな皺くちゃのお婆ちゃんが腕と足を組んで座っていた。

 指には大きな宝石が十本全部に嵌められている。


「紹介しよう。魔法学園理事の一人、エリザベス・ホーエンハイム様だ」

「気軽にエリちゃんと呼びな。ホーエンハイムなんて呼んだらぶっ殺すよ」


 なんか、キャラ濃いよ。

 国民的人気アニメ映画で湯屋の女将さんしてそうな老婆だよ。


「ふーん。そっちの田舎者丸出しのピンクっ子が報告にあった光の巫女だね」

「はい。アリア君が私の探し求めていた人物です」

「そんで、もう一人のバカ丸出しのが相談にあった問題児かい」


 ちょっと!お師匠様ってばどんな相談してるんですか!!

 バカ丸出しって私の成績は優秀な方ですわ!勉強出来るんだからね!


「お姉様、なんか凄そうな人ですね」

「えぇ。予想以上よ」


 失礼極まりない見方をされているけど、パッと見でこの老婆が只者ではないと気づく。

 お師匠様との旅で、魔法使いの実力者達のある一定の魔力の圧が感じられるようになった。

 その中でお師匠様の実力がどれだけ高いかを実感したのだが、この老婆はそれに引けを取らない。

 間違いなくこの国のトップクラス、魔法学園で理事を務めるに値する力を持っている。


「ふん。あたしの力を見誤るバカってわけでもないみたいだね」

「そこは私が教育しましたので」

「まぁ、いいさ。座んな」


 顎で案内されたのは装飾過多なギラギラのソファーとテーブルだった。

 わかりやすいぐらいお金持ちですわね!


「ハゲ。お茶でも出してやんな」

「ホーエンハイム様、かしこまりました」

「だからあたしをその名前で呼ぶんじゃないよこのハゲ!!」


 罵声と怒声が部屋の隅にいた男性に向かって飛ぶ。

 なるほど。家名で呼ぶとああなるのね。

 毛髪の薄い男性は教師用のローブを羽織っているけど、使用人みたいにこき使われているみたい。


「お師匠様、あちらの方は?」

「……トムリドル先生。私の学生時代からいる教師だ」

「あのハゲはね。学生だったマーリンに決闘で負けて鼻をへし折られて以来、自尊心も地位も叩き落とされたロクデナシさね」


 酷い紹介。お師匠様は苦虫を噛み潰したような言い方だし、お婆ちゃんに至っては罵倒が入ってる。

 お師匠様が学生時代に教師より強かったって、比喩表現じゃなくてバトル的な意味合いだったのね。


「どうぞ、紅茶です」


 人数分のお茶を並べて部屋から出ていくトムリドル先生。

 スキンヘッドや丸坊主じゃなくて、天辺だけ髪が生えてなくて残りの毛も薄いせいでハゲ頭って呼ばれるのもわかる。

 ニコニコ……ヘラヘラ薄ら笑いしてたけどお婆ちゃんの小間使い、下っ端感に哀愁漂うわね。


「……不味い」

「お師匠様、そんな言い方……ぬるっ」

「お姉様。流石にそれは……うっ」

「何年経ってもロクにお茶汲みも出来ないからロクデナシなのさ」


 茶葉は高そうなのに全部台無しだ。

 これならまだその辺の屋台の方が美味しいもの作れるよ。

 お婆ちゃん以外の全員が一口飲んだだけでティーカップを机に戻した。……飲み干さなきゃいけないのかなこれ?


「それで先生、アリア君の講師の件ですが」

「確かにこの学園で一番の光魔法の使い手といえばあたしさね。他にも教師の中にいないことも無いけどその子クラスとなればあたしに依頼するのもわかるさ」

「了承していただけますか?」

「珍しいアンタからの頼み事だ。引き受けようかね」


 良かったねアリア。新しい師匠が見つかって。


「よろしくお願いします。エリザベス先生!」

「エリちゃんと呼びな!」


 そこは譲れないのか、また怒声が飛んだ。


「しかしこんな娘がアンタが長い間探していた子とはね?」

「あの……さっきから気になっていたんですけど光の巫女ってなんなのですか?」


 アリアが恐る恐る尋ねる。

 そういえば説明していなかったし、直接光の巫女だと呼びもしていなかった。


「光の巫女ってのは御伽話みたいなもんさ。この国の成り立ちは知っているかい?」

「お母さんが読み聞かせてくれたくらいなら」


 この国の誕生秘話。

 ゲームの舞台説明にも載っていたし、シルヴィアとして生活を始めてからも本で読んだ。


 悪い闇の神とその手下の魔法使いの軍勢が暴れていた時代。

 主神である光の神はそれに立ち向かおうとする勇ましい若者に力の一部を分け与えた。それがこの国の初代国王。

 神に祝福された光の魔法使いのおかげで闇の神は封印され、世界に平穏が訪れた……。


 それがこの国の最初の歴史。


「世間に伝わっているのは初代国王が光属性だったことだ。だが、歴史を辿り伝承について調べて行くともう一人の重要人物が出てくる」

「それが光の巫女さね。神から力を授かったのは光の巫女で、初代国王は巫女と力を合わせてなんとか封印するので精一杯だった。それで、万が一にも闇の軍勢が復活しても大丈夫なように光の巫女と結婚して光属性を受け継ぐ子供達を産んだ。今の王家はその子孫さ」


 そうそう。確かそんな感じ。


「知る人間はそんな多くないし、あたしも気にもしていなかったさ。若い頃は光属性持ちの女として色々と得させてもらったがね」


 そう言って残りの紅茶を飲み干すエリちゃん。

 アリアは口をぽかーんと開けている。


「わたし、そんな凄い力があるんですか?ただの伝説とか可能性じゃなくて?」

「あたしもそう思っていたよ。そこのバカ弟子が啓示を受けるまではね」


 呼ばれたお師匠様は顔色一つ変える事なく紅茶を……飲もうとしてやっぱり止めた。


「バカ弟子はちょっと特殊でね。啓示をただのホラ吹きとして扱う事も出来なく、かといって手がかりも情報もない。そのせいでふらふらあちこちを旅していたのさ」


 お師匠様の出自関係を濁したエリちゃん。

 妖精と人間のハーフってことは知っているみたいね。


「わたし、全然実感ないです」

「それはそうよアリア。いきなり君は光の巫女だ!って言われてもね?だからそんなに気にしなくていいと思うわよ」

「そうさね。今は平和だし、闇の軍勢は土の下で寝てるんだ。大人しく普通に過ごせばいいのさ」


 深刻そうに考えるアリアだけど、ゲームでも光の巫女って称号があるだけ。

 成長補正と珍しい魔法属性のせいで逆に厄介ごとに巻き込まれる迷惑なものよ。


「君が光の巫女であることはここにいる者だけの秘密だ。何かあれば私や先生を頼るといい」

「可哀想さね。死にそうな病から魔法が使えるようになって光の巫女なんて同情するよ。まぁ、一人の研究者として気にはなるから相談くらいには乗ってやるさね」

「安心してアリア!私が出来る限りサポートして守ってみせるわ」


 バレても結婚目当てで男達が近づいてくるだけだが、アリア自身じゃなく特性や巫女目当ての連中なんてお断りよ。

 私のお眼鏡にかなう人じゃないと友達は任せられないわ。


「はい。よろしくお願いしますお姉様」



 こうして、学園理事の一人エリザベス・ホーエンハイムがアリア見守り隊に加入したのだった。










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[一言] 湯〇婆より銭〇婆の方かな
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