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1話 宣誓。最低最悪の悪役令嬢になる!(ドンっ)

 

 普通の女子高生だった私。ある日、ふと目が覚めると見たことないような天蓋付きベッドにいた。


 ここ、どこ?


 寝たままの状態で、部屋の中を見渡す。私の知ってる場所じゃない。だけど、妙な既視感がある。

 自分の手足を見ると、小さい。そういえばベッドや机が大きく見える。まるで身体が縮んだみたいに。

 その瞬間、校内でも有数のオタク女子である私の非凡な頭脳はこれが流行りの異世界転生だと気づいた。


 だって夢にしてはリアル過ぎるし。


 なにがきっかけなのか思い出そうとすると、日本での名前やら家族構成なんかが妙にあやふやになっている。

 転生した原因が思い出せない。オタクとしての知識や現代日本の知識は残っているのに。


 まぁ、気にしてもどうにもならないし、ここは2回目の人生始まってラッキー!としておこう。

 それに今世への期待の方が高そう。だってもう一度子どもからやり直せるのよ?しかも部屋の作り的にかなり裕福な家庭とみた。


「お目覚めですかお嬢様?」


 そばかすのあどけない顔をした少女が部屋に入ってきた。服装はメイド服。レースのリボンがふわふわしていて可愛らしい。

 って、そうじゃなくて。


「えぇ。大丈夫……ではないかもしれないわ。あまりのことで事情が理解できないのだけれど私は誰?ここはどこなのかしら?」


 都合よく前世と今の記憶が混ざり合って……みたいなことはなく、今の私は何が何だかわからない。情報が足りなさ過ぎ。

 そこのサービスしっかりしてくれませんかね?

 ここはあえて記憶喪失パターンで行こう。8歳くらいの姿だからそこまで疑われないはず。きっと。


「す、すぐに旦那様と奥様をお呼びしてまいります!!」


 メイドちゃんが慌てて飛び出して行った。

 その間に部屋の片隅にあった姿鏡を使って自分の容姿を確認する。

 おぼろげな前世はちょっと、ちょっとだけポッチャリでまぶたは一重。自分磨きよりもオタク活動にお金を使っていた。

 それが今やどうだ。鏡の中にいる少女は間違いなく将来美女と呼ばれる素質がある。今は可愛らしい印象もあるが、成長すれば凛々しくバリバリのキャリアウーマンみたいなタイプへ進化する。間違いないね。

 前世はキャラクターガチャで失敗したと諦めていたけど、これは課金するしかないっすわ〜。最高レアに限りなく近いわ〜。


「おぉ、シルヴィア。やっと目覚めたか」

「可愛いわたくしの娘。病で一週間も目を開けずにわたくしは心配で心配で……」


 騒々しくやってきたのは皺の深い老け顔の男性とちょっと化粧がキツいけど美人の女性だった。私の顔立ちから考えるにこの人達が私の両親か。

 彼らの後ろからゾロゾロと医者やら使用人達がやってきて、広々とした部屋が一気に手狭になってしまった。


「私の名前はシルヴィアと言うのですね」

「どうしたんだい?そんな他人行儀な物言いは」

「えぇ。普段の貴方ならもっと騒ぎ立てるくらい元気なのに」


 ふむ。私になる前の私はもっと子どもらしかったのか。それは急に畏まった口調だと驚くよね。


「実は私、今までの記憶が………」


 そこから私は記憶喪失になってしまったこと。自分の名前はおろか家族の名前、今までの思い出すら何もかもを忘れたことを伝えた。

 泣き崩れた両親の姿には心が痛んだが、私が寝込んでいた病気は死ぬ確率が高かったため、生きていてくれてありがとうと言われた。

 医者から診察を受けたが体には特に異常がないため、消化にいい食べ物を食べて数日安静にすれば元気になるそうだ。


 その後は今世の私の説明をベッドの上で聞いた。

 私の名前はシルヴィア・クローバー。クローバー伯爵家の長女。

 家族構成は四人。父と母とあと養子の弟がいるらしい。弟は亡くなった叔父の息子で実際は従兄弟にあたる。今は離れで暮らしている。

 私がかかった病気は後天的魔力発生病。魔力だってさ、ファンタジーだね。

 この病気は数百万人に一人の割合で、生まれつき魔力を持っていない子供が魔力に目覚めるものだ。最も、その途中で負荷に耐えきれずに亡くなる方が多いとか。


「お嬢様がご無事でよかったです」


 ニコニコのメイドちゃんはソフィア。貴族じゃないから家名はないらしい。なんでも私が拾ってきた孤児だとか。

 そのソフィアが看病を担当してくれる。安心した両親は仕事に戻っていった。貴族って中間管理職みたいな仕事してるんだろうか。

 話を戻す。シルヴィアの年齢は6歳だった。背が高いのとスラッとした顔のせいで実年齢より上に見えた。ソフィアも同い年で弟は一つ下の5歳だ。


「はい、お嬢様。りんごです」


 私からのリクエストでウサギの形にりんごを切ってもらった。

 同い年なのにもうスラスラとナイフを使えるなんてソフィアはスゲーよ。女子高生にもなって作れる料理はラーメンくらいだったよ私は。


「ありがとうソフィア」


 切ってもらったりんごを食べながら今後の活動目標を考えよう。

 異世界転生したら美少女で貴族の娘で魔法まで使えるようになったのは非常に喜ばしい。

 だがしかし、シルヴィアだのクローバー伯爵だの養子の弟、魔力とくればあるゲームの名前が浮かんでくるのだ。


【どきどきメモリアル!選ばれしアナタとイケメンハーレム】略して【どきメモ】だ。

 ゲーム内容は至ってシンプル。普通の町娘だった主人公が病気から目が覚めると魔法が使えるようになっていた。魔力持ちは全員が魔法学園に入学しないといけない。進学した主人公は学園で様々なイケメン達と出会って恋をしていく……と。


 ありきたりちゃありきたりな内容だけど、それだけにプレイしやすくお値段もお手軽。メーカーは老舗だから面白さも保証付き。

 ノベライズやコミカライズもされてアニメ化の企画があるとかないとかって言われてた。私も友達から借りてプレイしてハマった作品だった。

 その乙女ゲームの登場人物の中に、主人公の恋路を邪魔する悪役令嬢がいて、そのキャラの名前がシルヴィアだった。大抵のルートに登場してきては突っかかってきてウザい。意地悪だしワガママで嫌な奴。人間のクズみたいなわかりやすい敵役だった。

 それだけにその最後は追放、投獄、処刑と悲惨なものだった。


 ーーー駄目じゃん。私が今はシルヴィアよ。


 このままでは私の未来はどん底だ。

 今のうちからお金を貯めて追放エンドに賭ける?

 それとも悪役令嬢ムーブをせずに穏便に済ませようか?

 処刑ルートは勘弁。前世と同じ高校生で死にたくないんじゃ。美少女貴族令嬢としての生活を一生続けたい。

 だけど、私が悪役令嬢じゃなくなるとゲームの内容が当てにならない。それだと今後の人生で楽できなくなるのでは?未来予知できるってチヤホヤされたい。


 ーーー逆に悪役令嬢やりきるのはどうだ?


 天啓が浮かんだ。私って天才じゃないだろうか。

 普通の悪役令嬢であるシルヴィアだから主人公補正に負けてしまったのだ。なら、どんなに主人公が頑張っても敵わない強さを手に入れればいい。

 何するものぞ破滅フラグ。その全てを回避し、私は悪役令嬢として君臨する。


 前世はオタクというだけで見下され、ブスだからと自重して日陰で過ごしてきた。

 ならせめて、この奇跡のような転生を楽しもうじゃないですか。我慢も遠慮もいらない。最低最悪の悪役令嬢に私はなる!(ドンっ)


「ふふふふっ」

「お嬢様がいつも通りに……」


 何か言ったかねソフィアちゃん。

 私は知っているのだよ。メイドである貴方が会ったことない弟と協力して主人公側に付くことを。そのせいでシルヴィアが不利な状況になって追放されることも。

 まだ見ぬ主人公や学園で出会う攻略キャラ達は後回しだ。まずは手身近な人間から支配してあげる。私に逆らえずに服従するがいいわ。


 宣言しましょう。私ことシルヴィア・クローバーがこの世界で一番の悪役令嬢であることを。

 そしてあわよくば玉の輿に乗って毎日贅沢三昧をして人をこき使ってやる。


 転生したイキりオタク女子を舐めるなよ!






よければ感想・評価をよろしくお願いします。作者のモチベーションアップに繋がります。


誤字脱字報告をお待ちしてます。すぐに修正しますので。

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