⑨新しい出会い
⑨新しい出会い
一年が過ぎ、再び銀木犀の季節がめぐって来ました。
ほのかに甘い香りが、通りの方にまでただよっています。
そんなある朝、めずらしく、駄菓子屋のカーテンが開きました。
午後になると、大きな引っ越しトラックが到着し、そのあとを一台の青い乗用車が続きます。
乗用車のドアが開くなり、幼稚園くらいの男の子が飛び出してきました。
「パパ、ママ、早く、早く!」
「ちょっと待ってよ。たっくん」
たっくんと呼ばれたその男の子は、待ちきれないように店の中に走っていくと、大きな声でさけびました。
「おばあちゃーん、おばあちゃーん、どこ?」
「はい、はい」
エプロンをきりりとしめたおばあさんが、一年前とはうってかわった明るい表情で、たっくんを出迎えます。どうやら、今日はたっくんたち一家のお引っ越しのようです。
「荷物が入ってしまうまで、たっくん、しばらく公園に行きましょうか」
おばあさんがたっくんの手をとって、ポーくんの前を横切ろうとしたとき。
「あ、でっかいポスト!」
ポーくんを指さしながら、たっくんの大きな瞳がかがやきました。
「このポストはね、ポーくんってお名前があるの。亡くなった、たっくんのおじいちゃんと、とっても仲よしだったのよ」
「へえ? そうなの? ぼくも仲よくなりたいなあ」
たっくんのことばがうれしくて、ポーくんは思わず返事をしてしまいました。
「たっくん。よろしくね。ぼくはいつだって腹ぺこだから、おなかにお手紙ちょうだいね」
するとおどろいたことに、たっくんは目をまんまるくしてさけんだのでした。
「ポストがおしゃべりした! よろしくだって! すごい! すごい」
そんなたっくんを優しく見守りながら、おばあさんは、しみじみとポーくんに話しかけました。
「ポーくん、いろいろありがとうね。たっくんがこっちに来てくれるって聞いてから、何だか私、もう少し、がんばれそうな気がしてきたの」
それは、ポーくんがずっと待ち続けていたおばあさんからの声の返事でした。
さらにうれしいことには、またひとり、ポーくんと話せる仲間が増えたではありませんか。
いっときも早く、谷沢さんに報告したくて、バイクの音が、今か今かと待ち遠しいポーくんなのでした。
銀木犀の香りただよう秋の日々。
ポーくんと谷沢さんは、毎日たっくんからの手紙を楽しみにしています。