美女と野獣~Beauty and the Beast~
1740年にガブリエル=シュザンヌ・ド・ヴィルヌーヴ(ヴィルヌーヴ夫人、Gabrielle-Suzanne de Villeneuve)によって最初に書かれた。現在広く知られているのはそれを短縮して1756年に出版された、ジャンヌ=マリー・ルプランス・ド・ボーモン(ボーモン夫人Jeanne-Marie Leprince de Beaumont)版である。
ロココ時代のフランス。森の奥にある城に、若く美しいがとても我儘で傲慢な王子が住んでいた。そんな王子が主催する舞踏会に一人の乞食が現れて、
「嵐で道に迷ったので、一晩泊めて欲しい」
と頼み込み、一輪の薔薇を差し出す。王子は乞食の醜さを嘲笑い申し出を拒否したため、乞食は
「見かけで人を判断すると、心の奥底の真実が見えなくなってしまう」
と忠告するが、王子は聞く耳を持たず再び追い返そうとした。
「か、帰るぞ!」
「待ちなさい!」
「でも!」
乞食は魔女の正体を表し、王子と家来たちに呪いをかける。
「永遠に人間に戻ることはないだろう。さあ、これでも喰らえ!」
「うわー!」
「キャー!」
王子は醜い野獣に姿を変えられ、家来たちは家具に姿を変えられた。魔女は王子に対し、
「血のように赤くて美しい薔薇の花びらが全て落ちるまでに、愛し愛されることを学ばなければ、呪いは永遠に解けない」
と告げ城を後にし、人々から王子たちの記憶を消し去ってしまう。
数年後、城の近くにあるヴィルヌーブ村では、父で発明家のモーリスと共に暮らすリリアという女性がいた。
「お父様」
「リリア、どうかしたか?」
彼女は物語を読みふけり冒険を夢見る教養ある女性だったが、村の人々は彼女の教養を理解せず奇異の目で見ていた。
「彼女は本質を分かっていない」
「なんて頭の悪い美女なんだ」
そんなリリアに一目惚れした村の英雄・ガストンは男らしさを見せつけて求婚するが、彼の下品さや乱暴さを嫌っている彼女は求婚を断る。ガストンは物乞いのアガットを指差して
「未婚のまま父親が死んだら、生活する術がなくなり物乞いになるしかなくなるぞ」
と語りかけるが、リリアはそのまま彼を追い返してしまう。
「いいから出ていって!」
「分かったよ」
翌朝、モーリスはオルゴールを売りにパリに出かけるが、森の中で道に迷ってしまう。
「ここはどこだ?」
狼に追われたモーリスは森の中を逃げ回り、城に辿り着き一休みする。
「ここが、美しいお城か。ちょっと休息を取ろう」
だが、
「ようこそ!」
「ティーカップが、動いている!」
動き回りかつテレパシーで喋るティーカップを見て、リリアは驚き城を飛び出す。
「リリアのために、何かを買わなければならない!」
その際ベルから薔薇を土産に頼まれていたことを思い出したモーリスは、庭にある一輪のピンクの薔薇を取ったところを城の主・野獣に見つかってしまい、彼に捕らえられ監禁されてしまう。
「逃げられないぞ!」
「助けてくれ!」
モーリスの愛馬ウイリアムが彼を乗せずに戻って来たのを見たリリアは、父の身に何かあったと感じ、ウイリアムに乗り村を飛び出す。
「ここから逃げて!」
城に辿り着いたベルは牢獄に捕らえられているモーリスと再会するが、父は、
「危険だから、城から絶対逃げるように」
とリリアに告げる。そこに野獣が現れ、
「モーリスが薔薇を盗んだ罪で終身刑になった」
と告げる。
「もう、決めたわ」
リリアは身代わりに城に残る決意をし、モーリスの代わりに牢獄に入った。
野獣の家来で燭台付きの蝋燭の姿になってしまったルミエールは、
「ベルが呪いを解くための女性だ」
と考え、時計の姿になってしまったコグスワースが引き留めるのを無視して彼女を牢獄から出して一室を与える。
「ここが、あなたの部屋です」
「ありがとうございます」
「さあ、中へどうぞ」
ルミエールたちはベルを晩餐会に誘うように野獣に提案し、野獣はその通りにするが、彼女が断ったため怒り出してしまう。
「みんなで晩餐を楽しみましょう」
「では、いただきます」
「いただきます!」
「召し上がれ」
その夜、ルミエールたちはベルのために豪華な晩餐会を開き彼女と交流するが、晩餐会が終わった後、リリアは立ち入りを禁じられていた西の塔に入ってしまう。
「ここが、禁断の場所ね」
リリアは野獣の居室で薔薇を見付け手を出そうとするが、野獣に見付かり追い出される。
「侵入者発見!」
「見つかったわ!」
野獣の乱暴な振る舞いに耐え切れなくなったリリアはフィリップに乗り城を飛び出すが、途中で狼に見付かり襲われる。
「うわー!」
「きゃー!」
そこにベルを追いかけてきた野獣が現れ狼を追い払うが、野獣は狼に噛まれて負傷する。
「大丈夫!?」
「左腕がやられた…」
「そんな!」
傷ついた野獣を見かねたリリアは家に帰るのをやめ、彼を連れて城に戻り手当てを行う。
「今治療するからね」
「分かった」
その際にティーポット夫人から、
「ご主人様は心優しい人だったが、母親の死後、厳格な父親に育てられて傲慢になってしまった」
と野獣の生い立ちを聞かされ心を痛める。実はリリアもまた幼い頃に母親を亡くしており、モーリスから詳しい事を聞き出そうとしても毎回口を濁されてしまい、もどかしく思っていたのだった。リリアは野獣の怪我が治った後も城に留まり、野獣と交流する。
「この本を君に見せたい」
「いいの?ありがとう」
野獣は魔女から贈られた魔法の本リリアに見せ、魔法の力で彼女と共にパリの街に旅立つ。
「さあ、パリへ」
「急ぎましょう」
二人はパリの街にある小さな家に到着するが、そこはヴィルヌーブ村に移住する前にモーリスが住んでいた場所だった。
「あなたがたのお父様が住んでいた家です」
「懐かしい場所ね」
部屋には医者がペスト治療を行う際に着けるマスクが置かれており、リリアは母親が生まれたばかりの自分を守るためにパリに残り死んだことを知る。
「あなたのお母さんは自らを犠牲にしてまであなたを守ることにした」
互いの生い立ちを知った二人は、次第に慕い合うようになっていく。
一方、ヴィルヌーブ村に戻ったモーリスは、
「リリアを助けるために野獣の城に来て欲しい」
と人々に訴えるが、誰も彼の話を信じようとはしなかった。
「受け入れがたい話だ」
「これはもう忘れましょう」
しかし、リリアとの結婚を認めさせる機会と考えたガストンは相棒のル・フウを連れてモーリスと共に城に向かうが、城への入り口が見付からずに右往左往するモーリスに対して怒りをぶつけてしまう。
「ごめんなさい!」
「許さない!」
慌てて詫びるガストンだったが、モーリスはリリアから聞かされていた以上に彼の野蛮で傍若無人な態度に怒り、
「娘との結婚は絶対に認めない」
と言い放つ。逆上したガストンはモーリスを殴り倒し、森の中に放置して狼に襲わせようとする。
「狼の餌食になってくれ!」
ガストンとル・フウが立ち去った後、モーリスはアガットに助け出され村に戻り、自分を置き去りにしたガストンを責め立てる。
「なんで自分を見捨てるんだ!」
しかし、ガストンは村の人々に対して、
「物乞いの証言など当てにならない」
と反論し、モーリスを異常者扱いして精神病院に隔離しようとする。
リリアは野獣とのダンスを楽しみ、野獣はルミエールたちに後押しされて彼女に愛を告げようとするが、彼女が父親の身を案じていることを知り、魔法の鏡を使い村の様子を見せる。
「この村は、けっこうみすぼらしい場所とは」
「そんな!」
そこには精神病院に送られようとしているモーリスが映っており、野獣は鏡を持たせてベルを送り出す。
「では、気を付けて」
「失礼しました」
野獣はルミエールたちにベルを自由にしたことを伝え、呆然とする彼らに別れを告げる。
「さよなら」
村に戻ったリリアは、鏡を取り出して野獣の姿を見せ、父が異常者ではないことを証明する。
「お父様は何者ではないわ」
リリアが、村の人々に野獣が心優しい存在だと語りかける姿を見たガストンは、彼女が野獣を愛していることを知って嫉妬し、村の人々を扇動して野獣の城を襲おうとする。モーリスと共に馬車に捕らえられたリリアだったが、野獣を助けるために協力して逃げ出し、ウイリアムに乗って城へと向かう。
「いざ、お城へ」
ルミエールたちは家財道具の振りをして油断させ、村の人々を相手に戦い城から追い出すことに成功するが、西の塔に入り込んだガストンは生きる希望を失い意気消沈する野獣に襲いかかる。ガストンに抵抗する気力すら無くしていた野獣は殺されそうになるが、駆け付けたベルを見て気力を取り戻し、ガストンを打ち倒す。
「やったわ!」
「でも…!」
「城が倒れちゃう!」
しかし薔薇の花びらが残り一つだけとなり城が崩壊を始めたため、リリアを助けようと塔から飛び移った際に背後からガストンに銃撃され重傷を負ってしまう。ガストンはとどめを刺そうとするが、足場が崩落して転落死する。
「うわー!」
リリアは野獣を助けようとするものの、彼はもはや手遅れであり、リリアへの愛情の言葉を残して息絶えてしまった。
「愛してる…」
「野獣…!」
そして野獣の死と同時に薔薇の花びらが全て落ちてしまい、ルミエールたちも人格を失いただの家具になってしまう。
「愛してるわ…」
野獣の遺体を前にベルは愛を告げるが、そこにアガットが現れて魔女の正体を表し、愛し愛されることを知った野獣の呪いを解く。
「あなたは、本当の愛を知ることができた。さあ、約束通り例の呪いを解くことにしようではないか」
すると野獣やルミエールたちは生き返って元の姿に戻り、人々も失っていた王子の記憶を取り戻す。
「元に戻れた!」
「ありがとう!」
「お礼に、僕とダンスを!」
「分かったわ!」
元に戻った王子は人々を招待して舞踏会を開催し、リリアと愛を確かめ合いながらダンスを踊り、末永くお城で暮らすのであった。